▼禁煙の理由
「火の国から暁を逃がすな。必ず見付け出せ……散!!」
五代目の合図で、新編成二十小隊は一斉に四方八方に散っていった。
オレたちアスマ班は今回の小隊の中でも要となる主戦力だ。故に 暁と最も接触する可能性の高い火ノ寺周辺へと配置された。
「誰かがやらなきゃな……」
遠く木ノ葉の町並みを見つめ、呟いたアスマ。
イズモさんやコテツさんには届いてないその言葉をきっかけに、オレはアスマに対し ある違和感を抱いた。
「シカマル。木ノ葉の忍を駒にたとえるなら、“玉”は誰だか分かるか?」
「そりゃ……火影だろ?」
「オレも昔はそう思ってた。けどそうじゃなかった。……お前も時が来りゃ分かるさ」
火ノ寺で入手した情報を基に式を飛ばし、最も近い換金所へ向かう道すがら。無駄口を叩きたくはなかったが、やはり気になってアスマに声をかけた。
「アスマ先生よ……地陸って人は先生とどんなカンケーだったんすか?」
「何だ急に」
「ヘビースモーカーのアンタが二日もタバコを吸ってねェ。アンタがタバコをやめてる時は決まって何かあった時だからさ」
「よく見てるな。お前に心を見透かされてるようじゃ、オレもまだまだ甘いな」
いや、将棋指してる時はいつもバレバレなんすけどね。そう皮肉れば、アスマだけでなくイズモさんたちも笑った。
「こんなの三代目が亡くなった時以来だ」
「……」
木ノ葉崩し。陽動に残って死を覚悟したオレのもとにアスマが駆けつけたのとちょうど同じ頃に三代目は大蛇丸と戦い、そして戦死した。
あん時助けてもらっておきながら、なんでアスマは三代目火影じゃなくオレを助けに来たのか納得いかなくて、当時問いただしたことがある。
火影を、実の親父を優先しなくてよかったのかよ、と。
そんときは「シカマルが鼻水垂らしてビビってんじゃねえかと心配になってな」とかなんとか茶化されちまって、本音は聞けなかった。
親の葬儀 それからしばらくアスマはタバコを吸ってなかったのだ。
「地陸とオレは“守護忍十二士”の仲間だった。そうだな お前とチョウジみたいなもんだ」
オレにとってのチョウジ。それを聞いて、アスマが出発前に五代目へ地陸の安否を尋ねていた訳を理解する。親友を失うなんて想像したかねえが、いざそうなったらオレだって詰問するだろう。
こういう時、かける言葉がすぐ見つからねェ。
「……禁煙なんてそう続かないもんすよ」
「ハハハ。確かに今までがそうだったしなァ。シカマル、お前が心配してくれるのは嬉しいが 別に地陸の事で禁煙をしたわけじゃないよ」
「……?」
「そんな事より、“暁”は地陸をやったほどの奴らだ。相当の能力を持ってるはずだ。気を抜くなよ」
目的の換金所まであと少しというところまで来ていた。アスマの禁煙の理由は、任務が終わるまではお預けになるんだろう。
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