▼軽んじれたつながり
逆光に遮られながら見上げる 今のサスケは、うちはイタチに風貌が似てきたようだった。
「サスケ…君……」
「サクラか。それにナルト…お前までいたのか。ならカカシもいるのか」
「カカシさんじゃなくて残念だけど、ボクが代理だ。これからカカシ班は君を木ノ葉へ連れ帰る」
小隊が再び揃った。
階下にいる私たちの姿は、サスケの目にはどう映っているんだろう。
「そいつがオレの穴埋めか?ナルトとオレのつながりを守りたいだの言ってたが またぬるい奴が入ったもんだな」
「サイが……?」
「ボクの本来の極秘任務の命は、サスケ君の暗殺だった。けど命令はもういい……今は自分の考えで動きたい。ナルト君が思い出させてくれそうなんだ。ボクの昔の気持ちを」
今度こそサイの言葉は嘘じゃないとわかる。サイも本気でサスケのことを連れ帰るつもりなんだ。
感情がないなんて話していたサイの心にも、ナルトやサクラの思いの強さが伝わったんだ。
それなのに、こんなにも届いてほしい人にまだ届かない。
「オレには別のつながりがある。兄との憎しみっていうつながりがな」
いくつものつながりは己を惑わせる ともサスケは言った。私たちとの絆は邪魔なものだと。
復讐のためなら自分の命も惜しくないサスケと、私たちはまた笑顔で木の葉に戻ることは叶わないの?
第7班のつながりは、サスケにとってはもう、結び直す価値のないものなの?
「ナルト、今度は……オレの気まぐれでお前は命を落とすんだぜ」
「仲間一人救えねェ奴が火影になんてなれるかよ。そうだろ サスケ」
サスケ君は瞬く間に私たちのところまで降り、刀を鞘から引き抜く。
ナルトの元へ駆けつけようとすると、騒ぎを聞きつけたカブトが、再び私の前に現れた。
「キミはまだサンプル採取の途中だろう。抜け出されちゃ困るね」
「悪趣味な実験は懲り懲り。邪魔しないで!」
カブトと応戦している最中、サスケはナルト、ヤマト隊長、サイ、サクラの四人を相手取っていた。その動きは隙も無駄もなく、余裕すら感じさせる。
食らえば身動きも取れなくなるような雷遁を帯びた太刀を、かつての仲間にも平気で振るっている。
ヤマト隊長でさえ、サスケ君を前に膝をつく程だ。
力の差は歴然。ほとんど決着がついていると誰もが思った最中、ナルトが叫んだ。
「何で分からねーんだ!!もうじきお前の体は大蛇丸にとられちまうんだぞ!!」
 ̄
それが何を意味するか。ナルトの必死の訴えですら、軽んじれた。
「そうなったら……そうなっただ」
「!?」
「子供のままだな ナルト。オレにとっては復讐かが全てだ。復讐さえ叶えばオレがどうなろうが この世がどうなろうが知った事じゃない」
今の自分ではイタチを倒せない。そう改めた上で、サスケは決定的な一言を告げた。
「大蛇丸にオレの体を差し出す事でそれを成し得る力を手に出来るなら、こんな命いくらでもくれてやる」
その意思がナルトやサクラにとってどれほどのショックを与えたか、計り知れない。
あれほど直向きに、己の強さを磨いていた少年だったのに。いつからその命すら、駒や道具のひとつのように投げ出すようになったの。
*
サスケを説得することは不可能 それどころかここでさらなる戦闘になる恐れもあったが、“木ノ葉には暁を一人でも多く始末してもらわないと”という大蛇丸一派の思惑により、サスケは去っていった。
完全なる敗北に、手が届かなかった悔しさに、ナルトは膝をついて、肩を震わせ、大粒の涙を流している。
「泣いたって サスケくんは帰って来ないでしょ!私もいる!私だって一緒に強くなる!!」
いつものように叱咤するサクラも、ナルトに背を向けたまま 堪えきれない涙を溢れさせていた。
「時間…あと半年近くはあるんだよね」
「!」
「力は多いほうがいいに決まってる。それにボクは結構強いからね」
頼もしい仲間が増えた。
「…ありがと…だってばよ……」
天地橋の任務が失敗に終わり、私たちは木ノ葉の里に帰還した。
6人ではなくて、5人で。
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