▼Hero's Come Back

あいつが帰ってきてるよ。そう綱手様に聞き、いてもたってもいられず火影邸から飛び出した。
チャクラを辿って行き着いた繁華街。往来の人影の先に二人組の後ろ姿がある。サクラと、その隣に立っているのは目立つオレンジ色の忍服。日の光で金髪が照らされていっそう眩しく見える。

帰ってきたんだ。

「ナルト!」

背後から名前を呼べば、二人が振り返る。視線が重なり、やっと顔を目にすることができた。
二年半ぶりに会うナルトは、以前より背がぐんと伸びて、サクラよりも高くなっていた。やんちゃ盛りがひっそり影を残しながらも、なんか大人びた感じがする。

「久しぶり ナルト!元気だった?」

声をかけたのに、ナルトはぽかんとした表情を浮かべていた。私の顔を見て 辺りを見回して一言。

「誰だってばよ?」

「え」

「何寝惚けてんのよ。シズクに決まってんじゃない」

「へ?……ハァーっ!?シズク!?」

ナルトはええーっと叫び、私の頭のてっぺんから爪先まで視線を何回か往復させてへらっと笑った。前言撤回。あんまり変わってないや。

「まっさかぁサクラちゃん冗談きついってばよ!髪だって胸だって…」

「胸?」

「この殺気ってば……まさか」

「いくら私でも傷つくんだけどなぁ」

「ほ、ホントにシズクだってばよ!」

ナルトは私だと分かったとたんに急に嬉しそうな顔をして、ばんばんと肩を叩いてきた。全然気づかなかったくせに。ナルトはちっとも変わってない。

「あのさあのさ、なんつーかさ!すげェ大人っぽくなったっつーか……めちゃくちゃ変わったってばよ!」

「今頃機嫌とられたってね」

「ウソじゃねーって!ホント!」

「そう?ありがと」

パッと見分かんなかったってばよ。ちょっと照れて鼻の下をかくナルトに、ふてくされた気持ちもすっと消えていく。ナルトのこういうところ、変わらないな。

「ちょっとナルト アンタ私には全然変わってないっていったくせに何よ、その態度の違い!」

「イテッ!サクラちゃん何で怒ってんだってばよ?」

「鈍感なのも変わらずかぁ…」

ナルトが修行に出て以来、里の中はまるで嵐が去ったあとみたいに静かで、それがすこし寂しくもあった。いなくなって実感する存在の大きさ。サクラがいて、ナルトがいて。今はまだひとり足りないけれど、第7班が戻ってきたような気がした。

「改めて おかえり、ナルト」

おう!ただいまだってばよ!
ニカッとナルトは笑い返した。


「よっしゃ、ひさしぶりに三人で一楽行くってばよ!たくさん食って明日からの任務に備えなきゃだよな!」

「シズクは第7班に戻んないわよ?」

「なんで?」

サクラの言葉に、軽い足取りで一歩踏み出したナルトがピタリと歩みを止めた。

「もう上忍だし、医療班班長だもの。任務だって特例で動いてるし」

「えええええええっ!?」

ナルトはさっきと同じくらい、むしろそれ以上にあんぐりとした。

「そ、そういやさっきシカマルも言ってたっけ…」

「シカマルにもう会ったの?」

「さっきな!しかもアイツってば砂のねーちゃんとデートしてて!」

「ちょ、ナルト!」

サクラがバカと叫んですぐさまナルトの口を塞いだ。

「砂のねーちゃんと……ふうん」

「シズク、おっ落ち着いて!今のはナルトの誤解で、」

「デートかあ、いいなぁ。わたしも覗いてこよっかな?」

「ど、どうしたってばよシズク、またすげー殺気」

「先に一楽行ってて!ちょーっと用事済ませてくる」

時すでに遅し。サクラが引き留めようと私の腕を掴もうとした瞬間には、もう瞬身の術で移動していた。

「早速問題起こしてくれちゃって!アンタのせいよバカナルト!!」

「いってェーっ!なんでオレってば、今日こんなに殴られてんだ?」

「シカマル、死んだわね…」

木ノ葉隠れに帰ってきた意外性ナンバーワンドタバタ忍者は、こうして今日もひとつ、やっかいな嵐の種を振り撒いてくれましたとさ。

*

「おいイズモ見ろよあそこ!火柱立ってる!行ってみようぜ」

「近づくな近づくな 巻き添え食らうぞ、コテツ」

「いくらテマリさんが素敵だからって、デートなんて〜っ」

「待て 誤解だ!」

「おばさまにいいつけてやるんだから!」

「ちょ、だから話聞けっつってんだろ!クソ、ナルトのヤロー余計なことしてくれやがって!」

そのころ砂隠れで、一体何が起きているかも知らずに。

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