▼仲間の意味
この演習の真の目的は、上忍から鈴を奪うことじゃない。メンバーの団結力を試すことにあるんだ。
そう気づいてから何度かナルトたちを説得しようとしたけど うまくいかなかった。その上、カカシ……否、“カカシ先生”に、わたしは全く歯が立たなかった。
「お前ら全員忍を辞めろ」
そう言い渡され、わたしたちは途方にくれながら、黙々とお弁当を食べていた。
空気が重い。無理もないか カカシ先生に出し抜かれて相当悔しい。サスケですら、ベテラン忍者とは天と地ほどの差があると痛感して 焦ってるにちがいない。
ぎゅるるる。
ナルトのお腹の音がしんとした演習場に鳴り響く。
これじゃ昼からの演習はキツいよなあ。半分分けてあげたいのは山々なんだけど お弁当を受け取ったときに、カカシ先生にこっそりと耳打ちされたのだ。
「あいつらがどうするか見たいから、お前は口出し無用ね」と。
これが任務であれば、仲間で食料を分けあるのは必至。カカシ先生は、サスケとサクラの動向をどこからか監視してるはずだ。ふたりが言いなりになってナルトに食べさせないのであれば、昼を待たずに、今度こそ間違いなく全員不合格だろう。
はやく気づいてよ、2人とも。
内心心配になりながらサスケとサクラをちらりと見ると、こっちを見ていたらしいサスケと、目が合った。
ややあって、サスケのお弁当を持っている手は、ナルトの方へ動いた。
「ホラよ」
「!?」
「ちょ…ちょっとサスケ君、さっき先生が!」
「大丈夫だ。今はアイツの気配はない。昼からは三人で鈴を取りに行く。足でまといになられちゃこっちが困るからな」
サスケの思わぬ行動に、サクラは息をのんで、同じようにナルトにお弁当を差し出した。
「じゃあわたしも!はい、ナルト!」
よほど嬉しかったのか ナルトは照れながらお礼を言い、調子に乗ってサクラにあーんを要求しはじめた……とそこへ、木の葉を勢いよく巻き上げて、カカシ先生が瞬身した。
「お前らあぁあ!!」
憤怒の形相で土煙を突っ切ってくる上忍に、サスケは構えて、ナルトとサクラは叫び声をあげた。
「ごーかっく」
おどけた調子で笑う彼を、はじめて見た。
*
“ルールや掟を守れない忍はクズ呼ばわりされる。でもな、仲間を大切にしない奴は、それ以上のクズだ”
そう言って、カカシ先生はまた笑った。
そういえば昔会ってたときのカカシは難しい顔してばかりで、こんな風に穏やかに笑ったとこなんて、見たことなかったな。
あの頃と変わったのか、ほんとはもともとこうなのか。
知りたかったけど、帰り道、先生はいつの間にか瞬身でいなくなってしまった。
「サスケ!」
わたしは前を歩くサスケに声をかけた。
「サスケさ、ご飯のとき、わたしになにか用でもあったの?目が合ったけど」
聞くと、不服だったのか、サスケは不機嫌な声色で言った。
「お前、さっきの弁当の意図に気付いてただろ」
「あ バレた?」
「なんで言わねえ」
「カカシ先生に口止めされちゃって。でもサスケが気づいたんだから結果オーライだよ」
「……」
「サスケってさ、結構やさしいとこあるよね」
すると、普段仏頂面を崩さない彼が柄にもなく照れて、そっぽ向いた。
「……オレはただ、お前ならどうするか考えただけだ」
「?」
「待て待て待てェ!置いてけぼりなんてひでーってばよ!!」
「縄抜け習得できたじゃんナルト」
「ヘヘン!将来火影になるオレにはこんくらいラクショーだってば」
「フン 昨日まで縄抜けさえ知らなかったウスラトンカチが」
「んだとコラー!」
「ねえサスケくぅーん、シズクと何話してるのー?わたしも聞きたいなぁー!」
素直じゃないサスケに食いかかるお調子者のナルト、そして忍術より恋路に夢中のサクラ。
アンバランスな三人がこれからのわたしの仲間。その日、4人でぎゃあぎゃあ騒ぎながら歩いていたら、家までの道がすごく早く感じた。
ここにカカシ先生が加わって五人 まだバラバラだけど、案外うまくやっていけるかもしれない。
これから任務をやってくんだもんね。仲良くしていけるといいな。
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