▼プラチナ

瓦礫と忍具、敵と仲間が転がっている地面をひたすら走ってた。
もう戦いは終わったのに、再び起き上がる残党を誰かが術で吹き飛ばした。
行け!そう叫ぶ声に止まりかけた足を前に踏み出す。耳鳴りは止まない。戦半ばで聴覚がやられてから片耳が聞こえにくくなっていた。

「シカマル 早く行ってやれ!間に合わなくなる!!」

そんな叫び声が遠くから聞こえる。
んなことァわかってる。

「はっ、ハア……」

駆け抜けていく中で見た。
眠りから覚めるように息を吹き返し、むくりと起き上がっていく忍たちを。

「あれ……オレ、死んだはずだったのに」

「お前っ、まさかそんな…脈は止まってたのになんで」

「はじまったか…!」

こういうとき、自分が感知タイプだったらとどんなに考えたことが。ちくしょう。間に合え、間に合え。
奇跡とかいらねぇから、頼む。やめてくれ。


敵も仲間も誰一人いない、何もないまっさらにされた土地にそいつは倒れていた。
螢のようにゆらゆらと宙を舞う命たち。
それをかきわけ、覚悟を決めて名前を呼んだ。

「シズクか」

開かれた右波紋の目 かろうじてシカマルが見えているのだろうけれど、返事はなかった。

「わかるか」

もうまえのシズクじゃない。変わり果てたその姿に、叫び狂いてェ気持ちを必死で覆って隠した。自分だけは笑ってわろうと。だが、こんなときに限って涙ばかり溢れてきやがる。

「……お前また、ムチャしやがって」

ひゅう、と微かにまだシズクの息遣いが聞こえる。ああまだ、生きてる。懸命に生きようとしてる。答えようとしている。

「バーカ、いいって。無理にしゃべろーとすんな。…んとに…めんどくせーやつ」

みまちがいだろうか。彼女の頭を撫でながら言うと、かすかに笑ったように見えた。

「おう、…おつかれさん」

シカマル、ありがとう、あいしてる


最後に、確かにそう聞こえたような気がした。
彼女が呟いた直後、周囲に浮いていた光が散らばっていった。

「待てよ、オイ……」

再び目を開けたときにはもう、さっきまでシズクに宿っていた小さな光ですら 消えていた。

「シズク、」

それは眠りに落ちたみたいにやすらかで。ころん、握りしめられた彼女の左の指先から小さな白金の輪が転がり落ちた。

「オレを置いていくなよ、アホ」



「!!」

眼を開けると、そこは見慣れた天井が広がってた。

しばらく放心状態で宙を見つめてたが、そのうち上半身を起こしてみる。疾走したあとみてぇに鼓動が速い。

「ひでェ夢だな……」

呟いて、不快な寝汗を手の甲で拭う。
鮮明に思い出される夢は、夢にしちゃひどくリアルで笑えねェ内容だった。
心地よさとは程遠い目覚めだ。
オレは頭を切り替えて 任務の準備のためにベッドから起き上がった。

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