▼サバイバル演習

下忍合否のサバイバル演習 鈴とり合戦。
表向きのルールは、担当上忍のオレが所持する2つの鈴を奪うこと。奪えたら下忍として正式に認めよう。できないならアカデミーに出戻ってください。脱落。
かつてオレやオビト、リンもミナト先生に同じ課題をつきつけられたっけ。下忍なりたてのガキは 大抵コロッと騙されるんだよね、コレが。

上忍師になって以来 先生の鈴を譲り受けて踏襲している。これまでの子たちは演習の意図に気づくことはなく、いくつもの下忍班をアカデミー送りにしてきた。そのオレが、今回三代目の指令で受け持つことになった生徒は、四人。
アカデミーくのいちクラスの優等生 春野サクラ。写輪眼を扱う一族の末裔 うちはサスケ。ミナト先生の息子で九尾の器 うずまきナルト。そして 旧友・由楽の忘れ形見 月浦シズク。
この班の面倒を見ろだなんて、三代目は、なかなかに厳しいお人だよ。

曲者揃いのメンツがせいぜい化学反応でも起こすかとほんのちょっと期待していたが、そうでもないようだった。ナルトは勢いだけで基礎知識もすっ飛ばし。サクラはサスケしか見てない。そのサスケも、個人戦に走った。幼少期のオレと、同じで。能力が高くとも、この演習の本来の目的に気づかないんじゃ、アウトだ。
ひとしきり相手をして あとは、ひとり。


「今のままじゃ残念ながらこの班は不合格だな。どうする?シズク」

オレは演習場の中央に立ち、残るひとりに呼びかけてみる。すると、ザワザワと木立がざわめく中 風に舞う木の葉に紛れて シズクが音も無く現れた。

「……わたしのこと、覚えてたんだ」

相変わらず男の子のような短い髪に、細い手足。けど あの頃より背丈の伸びたシズクが、瞳を無理に弓なりにして オレに向けていた。

「何も言われないからてっきり忘れられたと思ってた」

「忘れるわけないでしょーよ」

本音を言えば、忘れられるものなら忘れたかった。

「ひとつ聞いてもいい?」

「ああ」

「今日の演習、どうしてここなの?」

殉職者の慰霊碑があるこの演習場をオレが選ぶのは、新米下忍の知らない忍の現実を見せるためだった。だが、由楽をこの場で失ったシズクにとってさぞ酷だろう。
そう、オレもお前も、この場所で時間が止まってる。

「アカデミーを卒業したばかりで浮かれてる下忍には、慰霊碑はいい薬になるからね」

「……そっか」

オレたちが上忍師と部下になって今更顔を合わせようなんて、そう簡単にはいかないでしょ。

「ま これからはお前もオレの部下だ。今までのことはお互い割り切っていこうじゃない」

「……そうだね よろしくお願いします、カカシ先生。…あ、でもこのままじゃあ全員不合格なんじゃないの?」

やはり気付いていたか。
サバイバル演習を開始してからシズクだけは、三人の仲間にコンタクトを取ろうとしていた。

“ねぇナルト聞いてよ!”
“サクラ待ってってば!作戦があるんだけど”
“サスケ、協力しようよ。みんな一緒にかかれば先生にも隙が……”

協力の必要性を班員に伝えようと粘っても、直球型のナルト、サクラ、サスケには、ロクに取り合って貰えてなかったみたいだけど。

「仲間を説得できないようじゃお前もまだまだだ。実践なら全員仲良く死んでるよ」

「はーあ」

「まあ、その洞察力までは認めるけどね。折角だから、腕試しでもしようか」

と、そう言い終えないうちにシズクは真っ正面から仕掛けてきた。

オレがクナイを交わすと同時に、背後の地面を突き破って分身体が攻撃してくる。どうやら予め仕込んであったこちらが本物らしい。空中へ逃れるとすぐさま組み手を使って対峙してくる。体術の身のこなしも上々だ。

「ハッ!」

木々へと移動しながら組み手を続ける。さっきのサスケは 名門一族の血を引くエリートだが、シズクの場合は―――

「なるほど。医療班のご隠居様によく仕込まれてるね」

「ご隠居なんて呼ぶとチカゲばあ様に殺されちゃうけどね!」

小隊の後方支援に徹してきた医療忍者。その従来の役割を離れ、戦闘にも特化した医療忍者を育成する教育プログラム――――伝説の三忍である綱手様が考案し、実現が叶わなかった制度だ。ご意見番と同期にあたる医療忍者の重鎮・チカゲ様はその教育をシズクに適用したのか。

「任務に出るまで5年もかかったよ」

煙幕の中で鈴をねらってくるシズクは勝ち気な表情をしていた。大技は持ってなくても、オレが着地するポイントに起爆札をセットしてる。予測地点に誘導する流れも悪くない。
オレの世代ならよくある話だけど、むしろ今の世代の子が、今のアカデミーに通いながら5年でここまで動けるなら十分だ。

「だが、あんまり上忍をなめちゃだめよ」

ボン!

「なっ、影分身……!」

「遅い。後ろ」

「わッ」

先程の生徒と同様心中斬首で埋めようとおもったが、途中まで術をかけて気がついた。
気配を感じない。一旦引いたか。逃げ足もはやいな。

「オレとしたことが、ガラにもなく夢中になっちゃったな」

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