戴冠式




『冠を譲る』

今日は、代替わりの為にテニスコートに皆で集まった。

せやけど、200人超えの部員のせいか、妙に暑苦しい。

宍戸のせいやろか。

三年生は跡部の指示で下級生と向かい合うように、前に呼び出された。

照れるやん、って岳人に言うたら蹴られた。

おかしない?

「俺達は青学に負けた。だが、俺様はこのままでいるつもりはない」

黙らせる必要のない跡部は、急に喋り出した。

俺かて、桃城に勝てたけど、まだテニスはやってたいと思てるし

「だから、高等部でもテニスは当たり前にやる。だから、高等部でも俺達とテニスをやりたい奴は、這い上がって来い!」

跡部らしいわ

「その時、俺達がレギュラーでも蹴落とせるようにな」

ククッと笑った跡部は、新部長を呼んだ。

新部長に相応しい雰囲気作るなんて、なんやかんや言うても跡部は面倒見がえぇ。

「うぅっ…し、宍戸さぁん」

えぐえぐ泣くんは鳳。

でかい図体で泣かれても、て樺地もかい。

こうやって見てみると、変な気持ちになるわ。

卒業とはまた違う。
引退、なんやって。

「跡部ぶ、跡部さん。来年、あなた方より俺達は上に行きます」

「…ウス」

樺地の使っとるタオルは跡部のやん

「長太郎、しっかりしろよ!激ダサだぜっ」

鼻水垂らしながら言うとる宍戸が、激ダサや

「侑士、鼻水出てるぜ」

岳人に言われて気付いたんは、俺もいっちょ前に感傷に浸っとったっちゅうことや。

心、閉ざせる筈やのに

「ほら、忍足」

ハンカチ渡してくれたんは、滝や。

サポートに回っとったけど、影の立役者や。実力やて、勿論あるし。

宍戸とは、相性が悪かっただけやねん。

「ありがとさん」

「鼻、かまないでね」

そう、滝はこういう奴や

だから、一緒におれる

「あ、跡部ぇ…寂しいC」

今まで静かに話、聞いとったんやないんかい

ジローが顔をぐっちゃぐっちゃにして、跡部に抱き着いとる。

あ、日吉が不満そうや

当たり前か、折角の晴れ舞台やのにな

「ハッ!みっともねぇなぁ!良いか、お前らはお前らの氷帝コールを日吉から学べ、アーン」

大したやっちゃなぁ…
せやから、跡部は跡部なんや

努力しとるから、実力もある
実力があるから、自信を持てる
自信があるのは、努力しとるっちゅう裏付けがあるからや

せやから、跡部に着いていこって思えるんやろな

明日からは、部外者やな

滝、ハンカチありがとさん








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