神の子のルール



最近、クラスの女性が楽しそうです。

理由は、バレンタインが近いからでしょうね。

そのせいか、丸井くんは誰に貰えるかを考えているようです。

構いませんが、リストアップしたそれを落とさないで下さい。

見つけたのが、私で良かったか、と。

おや、幸村くん

「やっほ、お昼食べに来たよ」

「栗田くんは良いのですか?」

幸村くんはテニス部の栗田くんと同じクラスです。

クラスでも部活でも栗田くんは、遊ばれていますね。

「栗田が先生に呼ばれてさ。待ってるとお腹が空くからさ」

「ごもっともですね」

幸村くんは藍色の包みを開き、箸を取りました。

私は今日は、サンドイッチです。

出来れば、ハムやレタスが挟まったものが良いのですが、母は添加物を気にするので滅多にありません。

遺憾です。

「BLTじゃないの?」

「あぁ、はい。母がうるさいもので」

「分かる。俺なんかさ、退院してから目の色を変えちゃってさ」

げんなり、と言うのがぴったりなくらいに溜息を吐いた幸村くん。

ただ女性から見ると、アンニュイとでも言いましょうか。

現に、隣の女性は顔が真っ赤ですから。

「昔はさ、床に落ちても10秒ルールとか言ってたのにさ」

10秒、と言いましたか?

「3秒の間違いでは?」

幸村くんは、苦い思い出なのか箸をガジガジと噛みます。

やめましょうね、何処ぞの食いしん坊ではないのですから。

「小学生4年の時にさ、放課後にテニスを真田とやっての帰り道の話」

割と最近な気がするのは私だけでしょうか。

「あいつは第一で、俺は南湘南だから俺の迎えがくるまで近くの駄菓子屋でお菓子を買ってさ、食べてたんだ」

「真田くんが駄菓子屋ですか。やはり、小学生なんですね」

私の言った意味が分かったのか、幸村くんはクスリと笑いました。

老けたのは去年からだろう、と言う幸村くんはニヤニヤしています。

「でさ、カツみたいなのがあんじゃん?ソース味の」

「分かります」

「てか、柳生が分かる方が意外だよ」

「小学生の時は、よく行きました」

「男?女子?」

友人とですと言えば、ちぇっと頬杖。

絵になります。しかし、御飯粒を取って欲しいものですが。

「でさ、うっかり落としちゃったんだよ。でさ、ギリギリセーフだと思って、拾って口にしたんだよね」

こういうところが男らしいと、私は思います。

出来ることなら、仁王くんも見習って欲しいものです。

あの、ヘ…
止めておきます。

「しかし、余り良くないのでは?」

「そうなんだけど、我が家は10秒ルールなんだよ。7秒多いんだ!」

くそぅ、と漏らした幸村くんを見たのは久し振りです。

しかし、あの真田くんが何も言わない訳はないでしょう。

気になった私は、尋ねました。

「あの真田くんが何も言わなかったんですか?」

「言ったよ。ていうか、初めて真田にド突かれたのが、それ。そんなことをするなってさ」

「裏拳では」

「ないない。で、俺は我が家のルールを話したら、もう一度ド突かれた。それから、3秒ルールが一般的だってことをあの真田から教えられたよ」

今では、流行りなどは幸村くんが真田くんにからかいながらも、指南しています。

けれど、そんな過去があったとは…。

「ま、そんなルールは今でも健在だよ」

私は、何と言いましょうか。幸村くんのお母様のタフさに、感動いたしました。

無添加に気をつけながらの、サバイバル精神というかハングリー精神を鍛える素晴らしさ。

仁王くんにも試してみましょうか。


そんな幸村くんは、何一つ落とすことなく綺麗に食べ終えました。

あ、栗田くんの声がしました。

今日は、私も栗田くんで遊ぶことにいたしましょう。






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