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「貴様っ!」
ルキアは手を伸ばした。触れたのは水滴のみ。
「蓮のいない今、君にしか話すことが出来ないからな」
そう笑った丹京は寂しそうだった。
「な、ぁ…に」
金柑は聞かなくては、と感じた。
「おいで」
水球は宙に浮き、外界からの攻撃を拒絶した。
阿散井は斬魄刀を構え、金柑と吉良の前に立った。
涅はそんな阿散井を呆れたように見遣り、朽木にどうにかしたまえと言った。
「恋次、下がれ」
何を言ってんだよ!
「隊長!何を言ってんスか」
朽木は下がれとだけ言った。
自隊の上司が考えもなくそんなことを言う理由が無いと気付いた阿散井。
斬魄刀を下ろすも、二人の前からは退かなかった。
朽木はスルリと金柑の耳元に口を寄せた。
「く、ちき隊ち、ょう」
身体に広がる温かい霊圧に身を委ねた金柑は、首だけを傾けた。
分かっているのだろう
仕方あるまい
朽木は口を開いた。
「−−−はするな」
朽木隊長、ありがとうございます…
自分の後始末は自分でしないと
金柑は青白い顔のまま、フッと息を吐いた。
丹京はゆるりと髪をかき上げた。
水球の上に立ち、金柑の身体を取り囲むように、袂から取り出した藍色の札を掲げた。
ほんのりと淡く金色の光を放つそれ。
金柑は朧げながら、今の状況を把握するも見とれた。
そして取り囲んだ札は、金柑にその光を浴びせた。
まずいっ!
慌てた阿散井より早く行動に出た男がいた。
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