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「私が蓮の力を吸った。それは私が死ねば蓮の治癒は戻らない」
「どういう意味だ!?」

丹京は阿散井を見る事なく、瞳を閉じた。

「貴様がウミノを取り込んだまま死ねば、ウミノに蓮華丸の治癒力は働かないという意味か」

ルキアは、兄の言葉に息をのんだ。
「そんなっ…!」


何で
私、死ぬの
私のせいで、皆が斬られてるの

私のせいなの

違う違う蓮華丸のせい
違う違う、違う

丹京の中、暗闇は広がる。


「金柑、済まなかった。だが、私は金柑と共に戦うことが出来た。幸せだった…」

いつもの蓮華丸の声が響いた。

金柑は、膝に埋めた顔を上げた。
土臭い匂いが鼻をついた。

「時折、丹京を忘れることが出来たのだ」

目の前には蓮華丸が佇んでいた。

眉間に皺を寄せ、うっすらと瞳に浮かぶものがあった。

「済まない、済まない」

ひたすらに謝り続け、蓮華丸は膝を着いた。

重い身体を上げ、金柑は蓮華丸の自分より大きく綺麗な手を握った。

「私ね、蓮華丸と会えた時、嬉しかった。本当に…強くなれるんだって」

本当のことだよ、金柑はきゅっと握り締めた。

「ありがとう、本当にあ…あ、りがとぅ」

蓮華丸の涙が流れる前に、金柑の涙がぼろぼろと零れ落ち、血を泥を染み込んだ死魄装が吸い込む。

「金柑、大丈夫だ。必ず機会は来る。例え私が消されても、ある程度の効力は残る」

蓮華丸は金柑を抱き締めた。

「蓮華丸、蓮華丸…大好きだよ、嫌いになれなかった」

淡い香は金柑が好きなもの。胸一杯に吸い込んだ。

「金柑、ありがとう」

押しつけられた頭に蓮華丸は、触れた。

「斬魄刀には必ず出会える」
「うん」

絡んだ髪を解き、蓮華丸は金柑の肩に触れた。

済まないことをしたな
「痣、消えぬかもしれぬ」

手に力の入った蓮華丸に、金柑はかぶりを振った。

「その方が嬉しいよ」

笑った金柑は、蓮華丸の知る今まで過ごしてきた金柑だった。

「金柑、ありがとう」

「蓮華丸ありがとう」

これ以上、言葉を交わせば零してはならぬものが…
蓮華丸が口を噤むと、金柑は握り締めた手を解いた。

「蓮、さようなら」
「金柑っ!!」

暗闇に取り残された蓮華丸は、ほんの少し前のことを思い出した。


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