04



現世に着いてからは伝霊神機、勘と虚の匂いが頼りだ。

空は青く、少しばかり風が冷たい。五人皆の気が張り詰めていると、数を合わせたかのように五体の虚が現れた。

射場は、袷から自身の斬魄刀を抜き出し、駆けた。

金柑の前に現われた虚は、背丈の三倍はあった。

妙に生臭く、金柑は顔をしかめた。金柑の心を支配していたのは、恐怖心と高揚感だった。

今この場にいることを喜び、不安に感じる自分がいたのだ。

ギャーッ!ギュフ!と唸る虚。金柑は、斬魄刀に手をかけ、虚の後ろに回った。

−バシッ
虚は分かっていたかのように、触手を伸ばして攻撃を仕掛けてきた。

間合いが近かったせいか、触手に左足を絡めとられてしまう。

「君臨者よ 血肉の仮面 万象 羽ばたき ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き 南へと歩を進めよ 破道の三十一 赤火砲」

金柑は、気持ちが高ぶっているのが手にとるように分かった。

何度か斬りかかっていくうちに虚も飽きたのだろうか、動きを止めて金柑を視界に捉えて、向かってきた。

しかし、躱し損ねたせいで肩口から血を流すはめになった。刀を八相に構え、解号を唱える。

「熾きろ 蓮華丸」

そして、滝落としと囁いた。蓮華の花弁が剣先の振りにそって、虚に降り懸かる。

同時に一人の隊員の悲鳴が聞こえた。

昇華したことを確認し、金柑は向かった。

弾き飛ばされた隊員の距離を目測し刀を構える。虚を見据えて、タンッと軽く飛び、斬りかかった。しかし躱され、足を斬られた。

金柑は、ジクジクとした痛みに、予想より傷が深く入っていることを感じた。

腹立つなァ

金柑は、出来るだけ足を使い移動をした。

そして、虚の背後に立ち、振り向いた瞬間を狙い、仕留めた。

「もう少しスマートな戦い方が良いわ。でも戦い方、キライじゃないわ」

後ろを振り返れば、三席。

「全然駄目ですね、鍛えなおさなきゃです…」

手ぬぐいで足の傷を縛りながら言った。

「悪かった!オレがもっとしっかりしてりゃ」

「そんなことないですよ!勝手に飛び込んだだけですから。すみませんでした」

二人は、頭を下げあった。

そこに射場が、着いたらすぐに四番隊に行くように言い含めた。

「はい、すみませんでした」

「謝る理由は無いと思うがの」

即座に射場は応えた。

金柑は、まだまだですねと言うしかなかった。

沈むことはないじゃろ、と笑みを浮かべ射場は言った。

戻ると金柑は、四番隊に向かい、手当てを受けた。

隊舎に戻って報告書を書かないと…

塞がった傷口を気にすることなく、金柑は走り出した。

戻ると提出用の空箱が射場の机にあり、もう皆は出したようであった。金柑は、引き出しから書類を出して筆を走らせた。

書き終えた報告書を空箱に滑り込ませて、自室に戻ろうと身体を伸ばした。

あぁ
鈍ってるかなぁ

と、そこに射場が現れた。

「今からのう、飲み会があるんじゃ。ウミノも来い」

「へ?はい… はい?」

金柑は、射場の言葉を聞き返したかったが、そうもいかず。

「遅れるとうるさい奴等ばっかりじゃけえの」

射場は、行くぞと金柑を促した。

金柑が、腕を引っ張られながら連れて行かれたのは赤提灯のぶら下がる飲み屋。

まさかとは思ったけど…やっぱり、副隊長の飲み会だよね

金柑は、早くも帰りたいと思った。



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