03



翌日、七番隊に直行した金柑。空は晴れていたが、金柑には空の青ささえも緊張の要因だ。

「みんな、今日からしばらくの新入りじゃけぇ、自己紹介じゃ」

「おはようございます、六番隊から来ましたウミノ金柑です。よろしくお願いします」

射場がぐるりと隊員を見回し、ぐわしと頭を下げる金柑。射場は、楽にと肩を叩いた。顔を上げ、余裕が少し出てきた為、辺りを見渡した。

さすが七番隊…
十一番隊並の男臭さだ

どちらかと言うと、男性の方が比率が高い。これも隊長、副隊長によるものかなと金柑は、一人納得した。

解散した後、金柑は七番隊において、数少ない女三席に呼ばれた。

「ウミノさん?こっちに来て」

そこには、射場を始めに三席と隊員が二人いた。

「今日は虚退治があります。昼食後に穿界門前に集合、時間厳守ね。副隊長、何かありますか?」

的確に指示を出し、三席は射場の意見を仰いだ。

「全部じゃけぇ、久しくやっとらんで楽しみじゃのう」

指を鳴らし、不敵に笑みを浮かべた射場。金柑も何故か、高揚感があった。

「席官なんだから大丈夫よね。力も見たいしね」

はい、と答えるしかなかった。

三席は書類で金柑の頭をポンと叩いて、終わらないと無しだからねと金柑に手渡した。

書類は思ったより少なく、厄介なものは無かった。終えて、提出し指示を仰ぐ。

一枚一枚丁寧にめくる。三席は、記入漏れの二枚を抜き出した。

綺麗な指で差し出された二枚を受け取った。

金柑は、あぁと呻いた。溜め息をつきながら戻り、先程の自分を忌々しく思いながら書き足しをした。

「これを十番隊にお願いね。時間だし、終わったらそのまま休憩に入っていいわよ?その後に出なきゃいけないから、お願いね」

配達すべき書類を封筒に入れ、弁当を持った金柑は十番隊に向かった。

「七番隊ウミノ金柑です。書類を届けに参りました」

カラッ、と戸が開き男性隊員が受け取り、日番谷隊長に渡すのが見えた。

二言三言話すのも見え、隊員が金柑の元に来た。

書類を受け取ったということと、松本副隊長を見掛けたら引っ張ってきて欲しいということを口にした。

思わず吹き出す金柑に、隊員は苦笑いをし頭を掻いた。分かりましたと返事をして十番隊を後にした。


身軽になった金柑が食堂に向かうと笑い声が聞こえてきた。やはり松本乱菊で一緒にいるのは、檜佐木修兵だ。

多分捕まったんだろうな、書類を持ってるし
筆も走らせてる…

金柑は半ば呆れ気味に声をかけた。

「松本副隊長、失礼します。あの、日番谷隊長が引っ張ってこいと」

「あらやだ、金柑じゃないっ!座りなさいよ」

金柑が檜佐木を伺うと、指で席を指しながら筆をこれまた走らせていた。

「修兵ったら筆をわざわざ食堂のおじさんに借りてるのよ、つまんないわぁ」

「乱菊さんとこに出す書類なんですよ。オレが日番谷隊長に怒られるんスけど」

字が綺麗だなぁ

金柑は、檜佐木の字を眺めていた。

「金柑はどうしたの?」

七番隊にいることと、ここに来るまでの件と虚退治のことを話
すと、パリパリと漬け物を食べていた松本が慌てた。

「あぁぁっ!しまった、明後日うちらだわ!だからっ、ありがとう!助かったわ。気をつけるのよ」
騒がしく食堂を飛び出した松本に金柑は小さく呟いた、お疲れさまですと。

「オレは何をしてるんだ一体」

頭を手に乗せながら檜佐木は呻いた。

「そういや、何でウミノはここにいるんだ?」

檜佐木は、はてと首を傾げた。副隊長、と金柑はつい見つめた。檜佐木はその視線が、悲観的に感じられ空笑いをした。

金柑がもう一度頭から話をすると、檜佐木はなるほどなと頭を掻いた。

「そうか、射場さんとこか。あー虚か最近行ってないな…」

絶対射場さんは立候補だな

檜佐木は、射場の性格に一人頷いた。

「そげな口を聞くようになったか?」

「射場さんっ」
「副隊長」

二人は頭上の声にビクリと体を揺らし、視線をさ迷わせた。射場は一緒させてもらおうかのぉ、と檜佐木の隣にお盆を置いた。

ぎしりと軋んだ長椅子に檜佐木は、少し余裕をもって場所を空けた。

「射場さん今日行くらしいですね」

檜佐木は、筆を回しながら尋ねた。

あっ、墨が飛んだ

金柑は檜佐木が仕上げた書類をあぁあ、と眺めた。

「おおっ、久々じゃけぇの。一角らは、よう行っとるみたいじゃがの」

「十一番隊っすもんね」

「いいなぁ…」

金柑は自分の言葉にびっくりした。すると、定食を食べていた射場がお箸を置き、言った。

「別に隠すことはないと思うがの」

「まぁ俺だってなぁ」

終えたであろう書類を傍らに積み上げ、檜佐木が肘を突いて言った。

金柑は、自分が作り出した妙な空気から逃げ出したかった。叶わないのだけれど。

「ほいじゃけ、ウミノの実力は今日しっかり見られるっちゅうことじゃな。楽しみにしとるけぇの!」

「射場さんは相変わらずっすね」

ニヤリ、と口元を上げた射場。黒眼鏡の奥は分からないが、金柑は何となく笑ってると感じた。

ニヤニヤと笑う射場と意外だと笑う檜佐木。二人をあとに、金柑は立ち上がった。



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