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秋も半ば、日の入りが早く薄暗くなった空の下、薄闇に溶け込むように立つ屋敷に二人は入る。

「ルキアちゃ、ル、ルキア勝手に行ったらまずいんじゃない」

物怖じしないんだからルキアの後ろに金柑は張り付く。二人がキョロキョロと中を覗いていると、チリンと鈴の音を纏い童京は現われた。

「あら、いらっしゃい。今日は鈴が居ないものだから」

申し訳ないと頭を下げる童京。金柑は、下げ緒から外した石を、手に乗せる。

「実はこの前買った石なんですけど」

やはり、濃い甘い香りは変わらず、時折土の香りが童京から漂う。通された部屋は、以前と同じ部屋である。

「それはそういう物ですよ。例えば、朽木ルキア様の斬魄刀に合せた雪石(ユキイシ)も金柑様が持たれれば、熱くなりませう」

漆黒の短髪が風に揺れる。

「あるのか?」

「在りますよ」

童京は持っていた小袋に蓮華石を入れ、どうぞと差し出す。

「見たいものだ」

ルキアは身を乗り出しながら、挑戦的に笑う。

「お待ち下さいまし」

童京が動けば、甘い香りが動く。

「うわぁ…綺麗だぁ」

「あぁ…」

それは、真っ白な石で、ぼんやりと中に浮くのは金色の結晶。

「宜しかったらどうぞ」

早速とばかりに小袋を取り出す。

「商売上手だな」

口でそうは言っても、やはり引きつけられるもの。

「何で分かるんですか」

金柑は童京に尋ねた。

「先見と申しませうか」

この先は話さないという様に、ニッコリ笑えば鈴が鳴る。

「ほう、決めた。買おう」

支払いをする横で、金柑は更に童京に尋ねる。

「石の力ってあるんですか」

受け取った小袋から石を取り出し、翳すルキアを童京は優しく微笑む。

「そうですね、お持ちにならないと効果は出ませんね」

「肌身離さず?」

下げ緒なら良いのかな

「無論です。出来なければ清潔な場所に置いておくのも良いですよ」

男にしては、細く白い指を立てる。

「嬉しそうだねぇ」

二人は童京の屋敷から出て、石を見せ合う。

「滅多にせぬ買い物だからな」

確かに、あんまり買うのを見たことないか

「それもそうだね」

屋敷から出れば、屋敷内では止まっていたかのような時が動き出したように、既に星がちらちらとしていた。

「付き合ってくれてありがとね」

「構わぬ、また甘味に行こう」

知ってか知らずか、のんびりとルキアは包みを仕舞い込む。

「勿論っ」

金柑と別れたルキアは、阿散井が楽しそうに話しかけてきたことをふと思い出す。

そう言えば、斑目殿との話を聞くのを忘れていたな
恋次に聞こうか…
いや、金柑に聞いた方が良いか

相変わらずどっしりと構える朽木家の門を、あの時より足取り軽く、くぐり抜ける。



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