02




戻ってから阿散井は、朽木に三番隊からの申し出について進言した。

「自分の仕事配分を終えているのなら行ってやれ、仕事は三番隊に合わせて終わって構わぬ」

「分かりました」

隊首室から出て来た阿散井は、金柑に伝えた。

そこで金柑は自分のあげるべき書類をさっさとあげて三番隊に向かった。


トントン、と軽く扉を叩く金柑。

「六番隊、ウミノ金柑です」

吉良が、応対をしかけた女性隊員に事情を話したらしく、まるで名案だとでも言うように喜んでいた。

書類の内容やこなし方は隊ごとに違う。

市丸隊長はやる気がある時と無い時が激しいって言ってたな…

それでもこの前とは量が違うんだろうな

金柑は、「現在の過去」に埋もれた吉良の言葉を思い返した。

さっきの女性隊員が、書類を片手に金柑に声を掛けた。

「面倒な書類があったら言って下さいね」

「ありがとうございます」


金柑は出来る書類から片付けていった。

量が多いなぁ
でも、割に中身は楽だ

八割方書類をあげたところで金柑が筆を置くと、吉良は微笑みながら封筒を差し出した。

「もし良かったらこの書類を六番隊に届けてくれるかな」

はてさてと金柑は首を傾げた。吉良は、クスクス笑いながら言った。

「もうちょっとで終わりだよね。だからお願いしようかなってね」

なるほどと思わず手を打った金柑。

残りの書類を仕上げた金柑は、吉良に確認してもらう。

不安な表情をする金柑。

「間違っていたら夜中でも呼び出すから安心してね」

勿論だ、と金柑は心の中で頷いた。
吉良の笑みに、負けた。

「今日はありがとう。今度お礼をさせてもらうからね」

ぶんぶん首を振る金柑。吉良は、するからと念押しした。

「相変わらずだね。その書類お願いするよ。あと朽木隊長によろしく」

「はい、ありがとうございました。失礼します」

吉良は、微笑みながら金柑を見送った。


結局、逆戻りだ
金柑は、小走りで六番隊に向かった。

時間も時間なため、隊員たちは帰宅の仕度をし始めていた。

金柑も机の上をまとめて隊舎を後にした。

予期せぬことなど、いくらでもある。むしろ、そうでなければ世界は成り立たないだろう。


偶然ととるか、必然ととるか。
金柑に、新たな転機が舞い込んだ。


「ウミノ、私のところへ来い」

ある昼下がりの午後、金柑は朽木に呼び出された。

何かしたかな…?

入れと言われ、金柑はそっと戸に手をかけた。

椅子に腰掛けていた朽木。金柑が入ると顔を上げた。


「異隊命令だ」

「はい、はい?」

静かな中、金柑はすっ頓狂な声を上げた。

顔色一つ変えない朽木に金柑は、当然かと口を押さえた。

「七番隊で休隊が出た。狛村から人手が足らぬとな」

しかし、と金柑は食い下がる。

「長くではない、入院だとか言っておった。本来ならば異隊させる程でもないのだが…出張だとでも思えば良かろう」

淡々と朽木は、旨を伝えた。金柑は、了承するしかなかった。

「明日からになる。急で済まぬ」

金柑は、あまり馴染みのない七番隊に行くことが不安になった。

金柑は、朽木の目を見られずに俯いた。

朽木は、そんな金柑に難しく考えるなと言った。

「書類は恋次に渡してある。ウミノは六番隊だ」

朽木は、金柑の表情が明るくなったことで内心、ホッとした。

「はい、明日から七番隊にて精進致します。」


期間が分からぬ故、致し方ないのかもしれぬな

朽木は金柑が出ていった戸を少しの間、ぼんやりと見ていた。


金柑が出ると、阿散井が書類を片手に待っていた。

おらよ、と何枚かを抜き出した。

金柑は、ぺらぺらと捲り確認をした。

ありがとうございます、と小脇に抱える。

「まぁ、射場さんとこだから困るこたねぇだろ」

「ですかね」

阿散井は、おぅと笑った。

「実質二、三週間だってよ。印を捺して明日射場さんにな」

「分かりました」

届け出の書類を受け取り、阿散井の優しさにちょっぴり安心した金柑だった。



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