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ある日の副隊長会議のこと、指定時刻に駆け込んだのは阿散井で、何故乱菊でないのかという問いは野暮である。

大方、早めの時刻を告げ抜け出して来たのだろう。

「それでは始めます」

雀部が仕切る。

「以前、書類提出環境においての不満点等のアンケートを取りましたが、結果を報告します」

伊勢に目配せをし、立つ伊勢の代わりに雀部が座り、逃走しかけたやちるを乱菊が捕まえる。

「では、報告致します。一番隊からは特にありませんでしたが、期限を守れない隊、まぁ特に十一番隊ですね。期限厳守と後は阿散井さん、誤字脱字に気をつけて下さい」

うっとヘコむ阿散井。雀部はまさか名前を出すとは思っていなかったようでか、少しばかり驚いていた。

「二番隊は特にありませんね。個人的には油煎餅の染みはいただけませんが」

ぷっと吹き出す乱菊に大前田がギロリと睨めば、ごめんごめんと謝る。

「三番隊は、全新入隊員の書類作成と普段の書類に手が回りきらないと」

三番隊副隊長吉良に問い掛ける。吉良が控え目に返事をするのは、余計なことを言って、阿散井のような仕打ちを受けないため。

「四番隊は問題無いそうですね、ただ十一番隊の乱暴をどうにかと…」

十一番隊副隊長草鹿やちるを見るが諦める。何せ、何処から出したのか紙に落書きをしていたのだから。そんな状況に四番隊副隊長虎徹勇音は遠慮して、進めて下さいと言う。

「五番隊は人手不足ですね」

雛森は、丁度遠征に出たところでしたのでと申し訳なさそうに答える。

「六番隊は問題無しですね」

「はい、朽木隊長にもそう言われたんで」

確かに六番隊で問題などあるのかと誰もが思った。あの、雀部でさえも。

「はい、七番隊もよろしいですね」

ただ、と続けた伊勢。

「このアンケートで男性死神協会の場所申請はなさらないでください」

きっぱりと言われうなだれる射場に、当然よねと乱菊が追い討ちをかけた。目頭を押さえる射場に目もくれず、伊勢は続ける。

「八番隊は忙しいこの時期に、隊長が逃亡を謀るため仕事が進みません」

眉間に皺を寄せて言う伊勢に、朽木隊長で良かったと阿散井は心底思った。十一番隊経験があるからこそだ。

「九番隊は人手不足ですね、編集関係でしょうか」

檜佐木に問い掛ける。

「あ、はいそうですね。あとコラムでも何でも良い提案があればお願いしまっす」

しっかり編集長業もこなす檜佐木。

「十番隊は能力不足とありますが、日番谷隊長の字ですね」

今度は射場にちょっかいを出そうとするやちるを止めながら、書こうとしたら取り上げられちゃったのよと言う。

「全く…」

乱菊さんのサボリだと皆が思った。

「十一番隊は提出が見られませんでしたが、期日厳守を私から個人的にお願いします」

遂には、乱菊の膝の上で胸を枕にという、男性陣鼻血ものの行為を羨ましくも子どもの特権とばかりにしている。

「檜佐木さん涎」

慌てて口に手をやる檜佐木に吉良は溜め息。

「十二番隊も人手不足とありますが?」

「はい」

「実験のし過ぎでは?」

「マユリ様から」

分かりましたと即答する伊勢に、確かに涅親子に逆らえば、ろくなことにはならないだろうと誰もが思った。

「十三番隊は問題無しですね、というより、何故二人なんですか」

本当は私が、とガタンと音を鳴らし立ち上がる虎徹清音に小椿仙太郎が食いかかる。。

「何言ってんだこのハナクソ女!」
「ワキクサアゴヒゲ猿!!」

盛大に口喧嘩を始めた二人を、虎徹勇音と阿散井でひっぺがす。

「それでは、四、六、七、十三で誰か出してもらいたいと思います」

三人の副隊長と二人の三席を促す。では一人と言う伊勢を遮るやちるの声。

「一人選ぶの?じゃぁこれやろっ」

取り出したのは五つの鯛焼き。

「これねぇネムネムと作ったんだよ、ねぇ」

皆がネムを見れば、照れくさそうに顔を赤らめる。

「一つはすっごく辛いの!本当はレンレンにあげようと思ってたんだけど」

阿散井はどっちにしろ餌食なんじゃ、とあんぐりと口を開けた。

「それは良いですねっ」

面白そうじゃないっと囃す乱菊に、勇音が慌てていた。それはそうだろう、五分の一の確率で激辛鯛焼きを口にするのだから。

「食わんのか」

そう言いながら既に手を伸ばす射場に釣られて、四人も鯛焼きを口にする。結果、阿散井が悶えることになった。

「これ恋次にはきついわね」

きゃらきゃら笑いながら言う乱菊に、満面の笑みでやちるは言った。

「本当はね、びゃっくんにあげたかったんだよ」

なんれ今、と涙目の阿散井。

「ネムネムが面白いって!」

よくやったとばかりにネムを褒める乱菊。

「そうですね、では誰を出してもらうかですが阿散井さん」

落ち着いてきた阿散井は顔を上げる。

くそぅ…唇が痛ェ

「あー…誰でも良いっスか?」

「ウミノがいいじゃろ、しっかりやるけぇ」

「アイツ、ミスしますよ」

阿散井が立ち直っていた。

「じゃけえ、要請した隊はウミノと知り合いじゃろが」

確かにと誰もが頷く。

「十二番隊は…」

「お?冒険も大切じゃけぇ」

朽木に相談してからだ、と阿散井は承諾。一番隊の名が上がらない特権を持つ雀部は心底ホッとした。

そしてそんな雀部からの連絡事項伝達で副隊長会議は終わった。



隊舎に戻った阿散井は、その旨を朽木に伝えた。期間は?と端的に発する言葉に少し及び腰になる。

「う、まだ決まってないっス」

沈黙が阿散井を包む。

「そうか、三日間だそれ以上はない。しかし、十一番隊に関しては四日間だこれは滞っているからな」

スッと視線を上げる朽木。

「はい、しかし…」

押し切られたら無理だぜ
隊長が言ってくれたらな

「ウミノは六番隊の人間だ」

当然であろうと。

「分かりました!」

こうして、妙な使命感を帯びた阿散井は、三・五・八・九・十・十一・十二の副隊長を召集した。

そして、朽木からの言葉を伝えた。

「阿散井くん、三日間はちょっと」

「朽木隊長の意見だぜ」

その一言に吉良と同じく意見をしようとした檜佐木も口を閉じた。

「ではその方向でお願いします、もうウミノさんにお話は?」

「まだ、けど問題はないっスよ」

明日から三番隊から順繰りにということで話は着いた。



一方隊長に呼ばれた金柑は困っていた。

「問題があるのか?」

机の前に立ち、恐縮する金柑。

「そんなに仕事をこなすのは早くないですし、迷惑をかけるのではと」

阿散井から事の成り行きを聞いていた朽木は話した。

「七番隊副隊長射場の推薦らしい」

射場副隊長なんで

「他隊に行けば、責任感も養われるだろう」

無茶苦茶な!!

「建て前ではあるがな、三日間だけだ」

「はい、何処の隊でしょうか」

困ったように眉間に皺を寄せて、朽木は答えた。

「三・五・八・九・十・十一・十二だ」

はい?

「あの、ほぼ一ヶ月近く…」

「十一番隊は最後にしてもらった。書類の滞りを考えて四日だ」

拒否権なんてある訳ないか

「分かりました」
いつからだろう?

「明日からだ」

「はい」

こうして金柑の派遣が始まった。



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