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既に勝ち上がった人の名前が張り出されていたらしく、眺めて口々に下馬評を立てていた。

本当に、奇跡だよなぁ

おいこら、ウミノと肩を叩いてきたのは阿散井だった。

「一角さんが仕切り始めてっぞ」

阿散井に引っ張られた金柑は、精一杯やるようにしなきゃと自分自身を奮い立たせた。



中に入れば、上座には既に各隊の隊長が座っており、副隊長はそれぞれ動いていた。試合を始める前に山本総隊長の言葉があり、開会。

金柑の名前が呼ばれた。相手は十番隊男性隊員、金柑より背は高く、強面であった。

落ち着け
やるだけやる

始めの号令と同時に、気付けば、桐立の時と同じように背後を取られる金柑。

感じた瞬間、金柑は振り向くことなく前に跳ぶ。大振りであるのに、速さのある振りをする相手。

速いっ…

横一に抜く相手に金柑は木刀で受け止め、ぐわりといなす。

しかし、いなされたままの金柑の右脇腹から袈裟に斬り上げる。

金柑、少し下がり躱す。金柑の息遣いだけが荒い。ふう、と大きく息を吐く。

金柑は、木刀を握り締めると真正面に飛び込んだ。今まで無表情だった相手は、少しばかり口の端を上げた。

金柑は少し左に体をずらして首に抜きつけたが、それを躱す相手に体を屈め、脇下を狙うところを相手は更に体をずらしながら打ち込んできたのだ。

ギチッ、ギシッと鍔競り合いをしたところで、金柑に分がある訳ではない。

相手が思いっきり鍔元を上げながら下がるのを、金柑は追い打ち込む。

間合いを取りながらお互いが探り合う。金柑はそのまま上に跳び、首元に斜めに抜きつけた。

ふっ、ふぅ

金柑下がるのを確認すると、そのまま床に降り立ち屈んだまま、横一に相手の腰腹部に抜いた。

相手は、下から見上げるウミノの首を狙う。が、そのまま金柑の木刀が払う形になり、お互いに引く。

次で決まると金柑は思った。

しかし、どうやら相手は調子が出て来たらしく足を踏み鳴らす。

まだまだ?
本気じゃないなんて

ニヤリと笑みを浮かべた金柑を見た誰もが不思議に思った。知っている者はあんなに前向きだったのかと、知らない者は体躯に似合わずやるなぁと。

ウミノ
一角さんの戦い方に馴染んでるな

ふと朽木から離れていた阿散井は、隣りにいるルキアを見る。ルキアは楽しそうに見ていた。

金柑もやるではないか

戦い方が変わり始めた金柑を頼もしく思った。おいおいと突っ込みたくなったのは、阿散井だけだろう。

瞬歩が使えたら

後悔する間も僅かに、打ち込まれ、打ち込み返す攻防を繰り広げた。どちらともなく間合いをとる。

ギシリと軋む床をタンッと蹴り、金柑は襷に木刀を振りかぶり跳んだ。次の瞬間、審判の声が聞こえた。

勝ったのは十番隊隊員。

金柑が跳んだ時、間合いを先に詰め、上から振り下ろされるそれを受け止めた。

いなしながら下りて来る金柑の木刀を掴む腕を掴み、首筋に突き付けたのだ。

握手を求められた金柑は、慌てて手を差し出す。さっきまでの雰囲気は無く、へらりと笑顔を浮かべる彼に金柑も思わず笑顔を零した。

「またやりましょう」

そう言ったのは金柑で、相手同様に自身も驚いた。

「ははっ!もちろんっ」

こういう気持ちも悪くないな



「どうだ?」

後ろから声を掛けられた。そこには、仕事はもう無いのか弓親と連立つ一角がいた。

「負けちゃいました。でもスッキリしました!」

ニッと笑う金柑に弓親は良かったじゃないかと言った。

「またやりたくなったら来いよ!次は勝ちてぇだろ」

そう言った一角に金柑は苦笑いを浮かべるしかなかった。

勝てると思ってやってないからなぁ
力がついたら貪欲になろう


その後の試合結果は、金柑の試合相手だった桐立が優勝した。

複雑だ…

そんな金柑の結果は上位八名の中にいる訳だ。




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