13



現世もまた尸魂界と同じく晴天で、尸魂界とは違い雑然とした町並み。

「空座町でしたよね」

「おぉ。虚のレベルは大したことねぇハズだがなぁ」

「はい、数が増えだけとか」

「手応えのあるやつが出てこりゃいいがなっ」

刀を担ぎながら、不敵に笑う斑目。

金柑は久々の現世に浮足立つ自分を戒めていたが、物騒なことをと苦笑。

「だったらよ、今から一護んとこ行くか?」

黒崎一護とは現世における死神代行で、朽木ルキアを謀叛謀略から救った旅禍。

「私も良いんですか?」

何を言っているんだという顔つきで、金柑の方を向く斑目。

「イヤか?」

会ってみたい
私がどうしようも出来なかったルキアを助けた人間

こくりと頷いた金柑に、一角はニカリと口角を上げて、よしとばかりに空を蹴る。

この時間なら…と呟く斑目は、高校に向かって屋根を跳ぶ。

遅れまいと後に続く金柑は、尸魂界と違う町並み、景色に気を奪われつつも、黒崎一護に会うという楽しみが、胸をいっぱいにした。

しばらく待つかと呟き、学校の屋上に向かう斑目。

学校生活なんてこっちも大して変わんないんだ…

一人考える金柑を尻目に斑目は寝転んだ。

「黒崎さんは来るんですか?」

ふと思ったことを聞いた。いきなり話し掛けられた斑目は、少し間を空けて答えた。

「あいつなら霊圧探るっつうか、これくらいなら分かるはずだぜ」

なるほど

金柑もまた、斑目を見習い足を崩した。


顔を黒板から窓に向ければ、何故だか目が放せない黒崎一護。

こいつらのせいか

名前を呼ばれて顔を戻せば、担任で現国担当の越智。

「黒崎、私の授業を聞けないってかっ」

しばし怒られて解放され、少しずつ気配と霊圧を探る。

一角か?もう一つは弓親か?
いや小さいな。屋上か?

放課後となると同時に、教室を飛び出して屋上へと向かった。

バタンと思うより騒々しい扉の音にびくつく金柑。

入って来たのは、黒崎一護だった。

「一角か!?」

おぉ、と体を起こす斑目の向かいに腰を下ろす黒崎。。

「何しに来たんだよ?」

「最近増えてんだろ虚?」

チラッとしか見たこと無いんだけど…ふーん

ジッと見つめる金柑の視線に気付いた黒崎は、悪いと謝りながら自己紹介をした。黒崎に促されるように金柑も自己紹介をする。

「何でいるんだよ?」

「あー、なんだ」

助けを求めるように金柑の方を向いたため、慌てて懐を探り一枚の紙を取り出す。

「私も今朝渡されてしっかり読んでないんですが」

大丈夫かよと呟く黒崎に苦笑いを返す。しばらくして、読み終えた金柑が姿勢を正す。

「えっと…要約するとですね虚の出現率が異常だそうです。とは言っても一定の波がありますから、不自然って程では無いので」

「一定の波?」

訳が分からないと顔を顰める黒崎に斑目が説明した。

「要は虚が増える時期もありゃ、少ない時もあるってことだ」

「で」

「今は増える時期なので一応人手を、ということだそうです。」

「まぁ世話になるぜ」

少しばかり置いてきぼりを感じる黒崎だった。ピピピッとけたたましく伝令神機が鳴った。

「お前は戻れ」

そう言う斑目の目は楽しそうで、金柑も口元が綻んだ。

「なんだよっ!!」

「黒崎さん大丈夫ですよ、斑目三席ですから」

そう言ってのける金柑に返す言葉もなく、黒崎はしぶしぶと教室へ戻った。



「どっちだぁっ!?」

伝令神機の画面を確認して、その方角を指さす。

「数は!?」

「四体です」

斑目の駆ける足に追い付くことで精一杯の金柑は、邪魔にならないようにしよう、巻き込まれないようにしようと一人誓った。

虚と対峙した斑目は、凄まじかった。力の差は圧倒的で楽しんでいた。

その後ろで金柑は、一体を相手にしていた。大きく揺らす体、緩慢な動きに金柑はさして完璧とは言えない瞬歩を使いながら翻弄する。

−ンギャァァァッス

虚の振り上げた腕が金柑を狙う。

−ガガッ!!

抜刀し受け止めた金柑は歯を食いしばる。

こんな馬鹿力?
腕が取れる

金柑は体を横にずらしながら、思い切って刀を外す。勢いで体を傾ける虚の面前に構える。

「血肉の仮面、万象、羽ばたき
ヒトの名を冠す者よ、蒼火の壁に、双蓮を刻む
破道の六十三、双蓮蒼火墜」

大きな爆音を出しながら、白煙が昇った。影が動いた、まだいる

後退しながら体勢を整える虚に対して金柑は、柄を握り直して虚の背後に回り込み、頭から刀を振り下ろした。

最後の足掻きか、後ろを振り向きざまに爪を立てる。金柑の左腕に爪痕を遺して消えていった。


「やっと終わったか?」

呆れたような声に振り向けば斑目一角。屋根の上で退屈そうに待っていた。

「すみません…」

謝る金柑の下に降り立ち、頭をはたく。

「いっ!?」

「謝るこたぁねぇだろうがっ!ウミノは始解しねぇのか?」

呼ばれた

「斑目三席みたいに闘えたら良いんですけどね」

へらっと笑うウミノの予想外の言葉にびっくりした斑目。

そういうもんか
こいつの戦いもう一度ぐらい見てぇな

金柑が納刀し終えると、目の前にほらよと出されたものは、斑目一角の鬼灯丸の柄頭に仕込まれた傷薬だ。

「大丈夫ですよ、かすり傷ですから」

事実大した傷ではなかった。しかし、引く気配のない斑目に降参した。

「ありがとうございます。斑目三席」

「おぅ、三席は要らねぇぞ」

斑目さん
その優しさが女の子を虜にするんじゃ?
彼女が出来る訳だ

金柑は、関係のないことを考えていた。

「宿どうするか。黒崎んとこに泊めさせてもらうか?」

でも許可が、と口にだそうとすると霊圧を感じた。

「俺はいいぜ?けどよ、ウミノさんは…」

来た来たと刀を肩に引っ掛けて斑目は返す。

「朽木ルキア匿ってただろうが」

言葉に詰まる黒崎。

「押し入れに寝てたんだよアイツは!」

押し入れ…

「ひとまずお前ん家に行くか」

ぶつぶつ文句を言いながらも、面倒を見る辺りは妹がいるからかと金柑はルキアからの聞き齧り情報を思い出した。

いろいろと面倒だからと斑目は義骸で玄関から、金柑は窓を開けてもらうまで待つことにした。

黒崎一護の部屋があるだろう窓から、オレンジ色の頭がのぞく。合わせて斑目も顔を出す。

手を翳しながら見上げた金柑に他意はなかった。

しかし、黒崎一護は外にまで聞こえる声で大爆笑をし出した。隣りで青筋を浮かべながら睨むのは、斑目一角。

事態がさっぱり分からない金柑は、ひとまず上がろうと窓から部屋に入る。

「お邪魔します」

律義に草履を脱ぐと目の前には、ひいひいとお腹を抱える黒崎が。

「ウミノが…手を翳しただろ?ぶふっ!!だから眩しかったんだろ」

そういえば、と斑目を見るて、そこでやっと斑目の特徴的な頭を見る。

「あっ」

思わず手を口にやる金柑を見た斑目は、ギロリと二人を睨む。

「そんなつもりじゃなかったんです!」

そうだろうよと呟き、一護にてめェっ!とつかみ掛かる。

ルキアちゃん黒崎さんと何を喋ってたんだろう…

少しばかり子どもだなぁなんて思ったのは内緒だった。



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