93



「結局、意味無かったよね」

「まぁな。それなら、明日は組むか?」

「ウチ、金柑とがいいっ!」

現世に滞在して五日。金柑たちは宿場として提供されたアパートの一室で、ちゃぶ台を取り囲んでいた。

合同任務故の入れ替えが行われずして、五日目。

金柑に限らず、相性が特別に悪い訳でもないと分かり、組み替えても良いじゃないかとルキアが言い出した。

金柑も便乗し、ウメも挙手。

今回の班長である向坂は、鬱陶しそうに二人を跳ね退け、朽木はこっちと柴岬をつついた。

「構わん」

「ルキアさん、よろしくお願いします」

「阿散井にもそういう姿勢を見せてやれ」

無理ですと即答した唯一の後輩に、ルキアは幼なじみの威厳が皆無の様子に苦笑。

さしたることでもないか

騒がしい金柑とウメに、また大家に怒鳴られるだろうと立ち上がった。



翌朝、伝霊神機片手に辺りを見回す金柑の隣でウメは、体の筋を伸ばしていた。

「そういえば、金柑さあの先輩と別れたの?」

「何で知ってるの?」

ていうか、遠征してたから付き合い始めたことも言ってなかったような

金柑は脳内の引き出しをさらけ出すが、分からない。

「噂の電子文が伝えてきた」

ウチの上司んとこにねと苦々しく吐き捨てた理由を、金柑は知っている。

「ウメ、雨辺先輩キライだもんね」

「妙に素直なの、やめて」

「うへへへ」

バカと笑われた金柑は、来るよと腰を伸ばした。

鼻につくのは、虚の匂い。

久しぶりに立つ友人との任務に、ウズウズと高鳴る鼓動を足踏みへと昇華した。


「追楽、蛇音虎(おちらく、へびねこ)」

キィンと音が辺りに広がり、現れた虚の動きが止まった。

「燈せ、灯宵」

「え、いきさつ聞いてないよ、ウチ」

「帰ったらね」

動きを制限したウメに軽口を叩いた金柑は、粒灯と刀を振り下ろした。

ウメの斬魄刀な効力が切れはじめた虚を小さな火の粒が覆う。

―オォォェェオン!

叫ぶ虚に静かに刀を振り下ろした。

仮面が崩れ、体が消えていくのを見送り、金柑は刀を納めた。

「まだ来るでしょっ!」

「ウメ、出し惜しみしないでね」

能力の半分も出していない友人に指を突き付け、背後に現れた虚を右足を軸として左足を振り抜き蹴飛ばした。

「足癖、ワルッ」

「縛道の四、這縄」

蹴飛ばした虚が分裂し、飛び掛かるのを抑え、金柑は下がった。

「蛇音虎、貫け」

ウメは犇めく虚の全てを撫斬りするように、刀を振った。

―キシャァァア

一筋の光が全ての虚を繋ぎ止め、キィィーンと耳障りな音を立てた瞬間、虚は昇華された。

「ウメ、そっちじゃないよ」

「ウチの刀捌き見たいなら、お金払え」

「昇華任務終了。六の無官、ウミノ金柑」

聞きなさいっと飛び掛かるウメを躱して、金柑は早く戻ろうよと脇腹を擽る。

「よ、わいっ!ウヒャ」

「ぷっ」



暫くして二人は、合流したルキアに説教、向坂からは冷たい視線をもらうことになる。



>>


prev//next
熾きる目次
コンテンツトップ
サイトトップ
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -