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三が日を過ぎ、隊の全員が揃った日、朽木から任務の詳細が明らかになった。

「魂葬が増える時期に加え、虚の予想増加率が高いらしい。よって、他隊との連携任務となる」

朽木隊長!と口を挟んだのは、阿散井。

「てことは、人数はそんなに要らないスよね」

隊員たちとしては、連携任務を手放しで喜べない。

というのは、組むことになる隊や隊員によっては、性格以前に斬魄刀や戦闘術で合わないこともある。

その組み合わせは考慮されているが、稀にそうなったことのある者は、帰還して早々に有給を取ったり、四番隊に数日篭ることになるのだ。

「そうだ」

「それなら、誰が?」

朽木の答えを待つ間、皆が皆、固唾を飲んで待つ。

金柑もその一人だ。

「この件は最後に知らせる。先に、異隊の辞令を下す」

朽木の予想外の言葉に、どよめいた。

金柑は、隣の向坂を見上げた。

「俺と金柑は無い」

「どうして」

「勘。ただし、竹井と柴岬のどちらかはあるな」

寒い寒いと中に着込んでいる蒼い襦袢を掻き寄せ、背中を丸める向坂。

金柑は、まさかと笑った。


「四名だ。草甲子亘嘉(くさかしのぶひろ)、満野木サヨ(みつやぎサヨ)、(紀久能広司(きくのこうじ)、竹井純太郎だ」

一息入れ、朽木は正式な辞令書を手に四人に前に来るように指示を出した。

「草甲子と満野木は五番隊。紀久能は一番隊。竹井は九番隊だ」

草甲子と満野木は二人で顔を見合わせ、ほっと一息。

紀久能は、目を丸くして辞令書を取り落とした。

純ちゃんかぁ

金柑は、寂しくなるなぁと向坂に呟いた。

成長、成長と手を擦り合わせる向坂は、後ろの柴岬に寂しいかと聞いた。

「全然。気が楽ですよ」

ニヤリと笑う柴岬に悪だなぁと金柑も笑った。



「寒ちゃんによろしく!」

「迷惑かけるなよ」

「寒ちゃんによろしくなぁ。げ、薄荷か」

涙をボロボロ流す竹井の背中をぽんぽんと叩く金柑。

柴岬は、呆れたようにため息。

向坂は向坂で、隠し持っていた飴玉を口に放り込む。

竹井は、金柑さんだけじゃないかと鼻水をかみ、後者二人を睨んだ。

薄い膜越しの彼らは、嬉しそうに笑っている。

「なんでそんだにうれひそぅなんですかぁ…」

えぐえぐ泣く同期で仮にも友人である竹井に、柴岬は拳骨を一つ。

「馬鹿か。今生の別れでもなしに。つか、金柑さんに九番隊でのみっともない姿を見せるのか」

「んな訳ないっ!」

「だろ」

「頑張ろうね」

金柑は、弟がいたらこんな感じなのかなと頬を緩めた。


「先程の話だが、向坂と柴岬は決定している」

泣き止まない竹井を諦めた朽木は、そのまま現世任務の人員を告げた。

金柑が、柴岬の斬魄刀の能力を知ったのは去年の暮れ。

竹井や柴岬の同期入隊の中でも始解が出来ているものは、数えられるくらい。

竹井と柴岬の二人は、その中にいる。

可もなく不可もなくかな

柴岬の能力を知らない向坂は、誰でも良いのかふぅんと相槌。

「もう一人は、二人で決めるように。今月からの予定表の貼り出しは五席に任せる」

あ、非番申請書出さないと

解散と同時に、金柑はいつを休みにするかの予定を描いた。



「阿散井副隊長、私ですか?」

一年の始まりということで浮足立っていた金柑に、阿散井が任務を下した。

連携任務の現世行きで、向坂と柴岬の三人だ。

「向坂が金柑を希望。馴れ合いはマジィが、柴岬の実戦には良いだろ」

確かに、そうかも

今は帯びていない斬魄刀のあるべき腰帯に手が伸びた。

「組み合わせは十三番隊で、ルキアと梅師呂華子だ」

ウメと!

梅師呂華子は、金柑と同期の院生時代からの友人だ。

金柑と梅師呂華子を引き合わせたのは、阿散井によって知り合ってすぐのルキアだった。

姐御肌の梅師呂華子は、金柑に限らず誰にでも歯に衣着せぬ物言いをする。

そんな彼女に金柑は、自分に無いものを持っているとすぐに懐いた。


「梅師呂も向坂と同じで八番隊の遠征部隊にいただろ。今回の異隊で、十三番隊だ」

「そうですか。分かりました」

金柑は阿散井から受け取った要項を脇に挟み、現世任務受諾書に署名。

「義骸は自由だ。駐屯地は空座町。場所も提供される」

なるほど…
うん、良い機会かもしれない!

斬魄刀の名を知り、雨辺と手合わせをして以来、昇華任務どころか巡回任務にすら回ってくる前に、年を越した。

「頼むぜ」

現世任務受諾書を朽木に提出するべく背を向けた阿散井に、金柑はありがとですと笑った。


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