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「へぇ、あれが雨辺ねぇ。金柑って変わってるな」

金柑は向坂の発言に、少々イラッとした。

苛つきはしたが、まぁ確かにと思う気持ちが大半を占めている。

現在の状況は、九番隊の執務室で向坂と金柑が肩身狭く待っている状態。

金柑が寒椿に書類を届けにきたのだ。向坂は八番隊に行き、すぐさま金柑のもとに来た。

「で、向坂くんの付き合ってた子は?」

「あの子。ほら、何ちゃら椿と喋ってる」

黒い髪を団子にくくった背の高い女性隊員。聞けば、向坂より年下。ということは、同期の金柑や寒椿より年下である。


女っぽいというか
私より色気あるなぁ
金柑は、向坂の趣味に納得した。

偏屈じゃなかったのか

「今、失礼なこと考えたろ」

向坂は足を組み替え、返ってこない金柑の書類に悪態をついた。


「遅くなった。二人とも仲良いな」

恐らく一番窶れている隊は、九番隊だ。

年末に向けた書類、瀞霊廷通信や通信販売の仲介としてフル稼動しているからだ。

限に、寒椿は隈をつくり、泣きそうな顔をしている。

「大丈夫?」

「あぁ、確かにヤバイけど倒れたら、四番隊にキレられるから」

向坂はあそこが最強だ、と遠い目をした。

「余裕出来たらさ、来てよ。檜佐木副隊長に言ったら、喜んでって言ってたから。多分、もう連絡回してるから」

早いね、と金柑は煎餅の袋を開けた。

「向坂は何しにきたのさ?」

「雨辺を」

ツイッと顎を向ける。


「おーい!寒椿、朽木隊長がそのまま二人使って構わないとさ」

向坂とかじる煎餅を奪い合う金柑に寒椿の拳が落ちた時、檜佐木が現れた。

檜佐木の肩に止まっているのは、地獄蝶。事情を察した朽木が、直ぐに寄越した。


「宜しくです」
「宜しくなぁ、寒ちゃん」

「そうやって呼ぶ気か」
「おー」
「寒ちゃん、いいね」

「金柑さんまで」

無駄口を叩きながらも、仕事をしようと立ち上がる二人。

寒椿は二人に仕事を振り分けた。


そんな三人の様子を見ていた男がいた。雨辺だ。

けらけら笑う金柑に、もどかしさを抱いた。自分の目の前では見られなかった金柑が、いた。

「雨辺さん?」
「今、行くよ」

今まで流れてきた金柑の噂に、どうしようもなく胸が苦しくなった。

雨辺は、自分の知る金柑の笑顔を思い出していた。



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