08



翌朝、目覚めると顔がぱりぱりしており、金柑は徐にに目を擦った。

泣きながら寝ちゃったんだな、と鏡で少し赤い目を見る。

まぁ、持ちは切り替えないとね


隊舎に向かうと、金柑が戸に触れる前に中から戸が開いた。

うおっとのけ反ったのは、阿散井だった。

びっくりしながらも笑い、金柑の頭をペシペシと叩く阿散井。

「おはようございます。泣きながら寝たら少しすっきりしました。早いですね?」

昨日の今日でか
金柑は、恥ずかしかった。

「あぁ、朝一で書類があったからな。無理すんなよ」

「お疲れ様です。ありがとうございます」

またなと片手を上げ、赤い尻尾を揺らして背を向けた。

そしていつものように、隊舎の戸を閉めた。

金柑は、仕事割り振りが記してある表を見てから席に向かった。

同じようなことばかりを書き込み、書類を仕上げていく。

上官に確認を取り、提出する。

資料整理が組み込まれていたため、隣りに机を並べる佐矛井に声をかけて資料庫に籠った。

この作業好きなんだよねェ
単純ながらに要領よく作業をしなくてはならない。この仕事が、金柑は好きなのだ。

金柑は、一人気合いをいれた。
うしっ やるか…

「ウミノさん?お昼だよ?」

「あ…もうですか?ありがとうございます」

閉め切られていた資料室に佐矛井が、入ってきた。

お疲れさまと辺りを見回し手で示した。

気付かなかった…
近くに置かれた時計を見れば、既に昼時。

キリをつけ、資料室を出た。

埃っぽいなぁ
薄黒くなった手の平を擦り合わせ、給湯室で手を洗おうと決めた。

ついでにお湯を沸かし、急須を拝借した。

今日はおにぎりかと見れば、潰れている。

それを一人寂しく握り直して、海苔も忘れたかと朝の自分を思い出し、げんなりとした。

握り直したソレをもきゅもきゅと口に運んでは、お茶を飲む。

昼時になるとどこの隊舎もわりと静かになる。

あ、と声をもらし、何かを思いついた金柑は机の上を片付け、隊舎を出た。

向かった先は十二番隊。

足早に向かい、叩いた扉は技術開発局だ。

気味の悪い声がするとともに、内から戸が開かれた。

「どうなさいましたか?」

研究員であろう女性に尋ねられた。

「七番隊ウミノ金柑です。実は先日の虚退治の映像を見たくて。許可書は必要でしたか?」

「こちらで見て頂ければ。誰か付けますが、よろしいですか?」

ジッと自分を見る研究員に怯むも、コクコクと頷いた。

「どうぞ…」

ギィィィッ…ガション

扉が閉められると、辺りは外よりも暗かった。

案内をされたモニターの前で待つように言われ、何も触るなと釘をさされた。

触って壊したら
殺される、若しくは…

一人キョロキョロしていると先程の研究員ではなくて、男が現われた。

頭に角を生やして。

「待たせた。一応イレギュラーだから此処の副のオレが見張り」

噂の阿近さんだ
久し振りに見た

見かけたことがある程度の阿近に、金柑は頭を下げた。

「無理を言ってすみません。七番隊のウミノ金柑です。涅隊長の許可は良いんでしょうか?」

尻すぼみになりながら、金柑は尋ねた。

「あぁ、オレは阿近だ、隊長は奥に詰めてるからちょっかいは出したくねぇ」

「あ、はい」

「時間なくなるな。あぁ昨日の虚退治一つしかなかったな、そういや」

阿近は、カタカタと指を走らせた。

タンッタンッピッ

「これだな ほらよ?」

たくさんあるモニターの一つを金柑に、指した。

まるで自分じゃないみたい
凄いのか悪いのかすら分からないや

金柑は、は思い付きで隊舎を飛び出した自分を後悔した。

「ほぅ…まぁまぁじゃねェの?」

えっ

「かと言って、理屈ばっかり気にする訳にはいかんがな」

腕を組みながら、いつの間にやら椅子にふん反り返っている阿近が言った。

そうですねとだけ答えた。

「良い体格してるんだからよ」

口元に笑みを浮かべた阿近に納得したようなしてないような、金柑は穴があくほど見つめていた。

「おい、俺を見ても仕方ねぇぞ、時間はいいのか?あと10分だぜ」

「はいっ、阿近さんありがとうございます。無理を言ってすみませんでした」

頭を下げ金柑は言った。

「ウミノ?だったか?ま、頑張れ」

「ありがとうございましたっ」

度も頭を下げる金柑に、はいはいと手をヒラヒラと振った。


技局を後にした金柑は、ギリギリで着き、阿近に感謝した。が、一息ついてからふと我にかえる。

体格が良い?
どういう意味?

脳内で丑三つ参りをしようか、模索をしていると三席に呼ばれた。



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