06



「何で、真田なんだろうね」

幸村はクスクス笑い、丸井からお菓子をぶん取った。

三年生は一足先に帰宅、一年生はコート整備で今は二年生のみが着替えている。

丸井が幸村くんと嘆くのをジャッカルが、飴で慰めようとしていた。飴は許してあげるよと微笑む幸村、遠巻きに見ていた柳生はそれでと先を促した。

柳生が一番聞きたいんじゃろかと仁王は、クスリと笑った。

「友達とは言わなかった確率、21%だな」

(参謀それはないじゃろに、真田じゃき)

仁王が突っ込もうとした時、真田が大きな音を立てた。

それは、ロッカーに頭をぶつけた音で小さく凹んでいた。

「何だ、真田も男の子なんだね」

「でなければ、あんなに動揺しませんよ」

「真田に彼女がいるってことか」

「不愉快だが、楽しみの方が上回るな」

真田はジャッカルの彼女という発言に、更に固まった。

「これからが楽しみだね」

終始嬉しそうな幸村に、やはり勝てないと真田は思った。

黒い帽子を目印に、風子は窓から見下ろした。

(真田くんが言った通りだけど、私もあんまり知らないんだ…
知ってるのは、テニス部の真田くんと風紀委員の真田くんか)

(メールしてみようかな)

風子は意気込んだが、真田のアドレスを知らないことに気付いた。

前途多難だと思っても顔は、にやける。

頭の中は真田弦一郎で溢れ、手中の夏目漱石は入ってこない。

夏目さん、今日は許してねと謝罪し貸出カードに記入し、文芸部専用箱に入れた。

カタンとカードが箱に当たる。

(吾輩は良稚風子である
名前はまだない、なんてね)

真田が苗字すら呼ばないのではと思ったが自分を知ってもらうのだから、ともう一度意気込むことにした。

(一年生、ありがとうね)(そういやぁ真田先輩、どうしたんですか)(赤也、春が来たんだよぃ)(へぇー…え!)(たるんでるのは真田だよね、冗談だよ)

ハル、春、はる



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