03



「は!?何で真田よ?」

風子がそう言われたのは、一年の冬。友人は、幸村なら分かるのにと呆れていた。

風子は、真田との出会いをそれはもう真剣に語りはじめた。

それは、たまたま風子が文芸部で遅くなった日のこと。秋から冬に移り変わり始め、日の入りも早く既に空は濃紫になっていた。

そろそろマフラーだなぁと風子は、立海規定のチェックのマフラーに思いを馳せた。

(家に帰ったら、出そう)

文芸部の活動場所である図書室奥の司書室の戸締まりをしながら、夕御飯は何だろうと考える。

(あ、昨日カレーだ…多分今日もカレーかな)

図書室の確認をしていると、外から規則的な音が聞こえてきた。不思議に思った風子は鍵を締めるついでにと、窓から見下ろした。

図書室からはテニスコートがよく見え、ボールの音もよく聞こえていた。

が、それは風子が部活動時刻が終わる前に帰るので、活動時刻を珍しく過ぎた風子にとっては不思議だったのだ。

「真田くん?」

風子にとって黒い帽子が目印の真田の認識は、風紀委員の方が強かった。

(そういえばテニス部か…
凄いなぁ
こんな時間まで)

それから風子は、文芸部の活動時間いっぱいをテニスコートの音を聞きながら活動するようになった。

「どこに惚れる要素があるの?」

話し終えた風子に、机に伸びた友人はつまらなさそうに聞いた。

「あとは…格好良いと思うの!渋くて!」

とにかく風子にとって、真田の認識が変わったのだ。

「風紀委員からテニス部で…渋いねぇ」

まぁ、頑張んなさいと言うしかない友人に風子は目一杯の笑顔で頷いた。

中学生なんてそんなものだよと風子が言えば、相手がねぇと友人はうなだれる。

こうして風子は、密かに真田を追い掛けることを始めた。


(クラス替え、外した…)(あ、柳と同じじゃん)(柳くん?)(テニス部のデータマン)(?)(ひとまず会いなさい)(ほう、珍しい女子だな)

渋い男子

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