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「また明日ね」

真田と風子は皆と別れ、公園を左に曲がる。秋に入り、木枯らしが吹くようになった。風子のポニーテールが、ぶわっと顔にかかる。

「結んでもこれなんだよね」

髪を後ろに払い、ゴムをきゅっと上げた。

「風子は伸ばしているのか?」

「そういうつもりじゃないんだけど、何となく?」

慣れたもので二人の距離は近い。真田も、風子に合わせて歩けるようになった。

「切った方がいい?」

「俺は風子の好きにすると良いと思うぞ」

(気の利いたことも言えんのか)

真田は己の口下手さを呪った。

「良かった。ほら、好きな人に合わせたい子っているじゃん」

風子は、真田を見上げた。風で乱れた後れ毛がちらちらと舞う。

そうなのかと真田が首を捻ると、風子は続けた。

「気持ちは分かるんだー。けど、そのまんまが良いじゃん」

ニィッと笑った風子の唇が髪を食んだ。

「風子、動くなよ」
急に手を伸ばしてきた真田に風子は、思わず体が固まった。

真田の手は風子の頬にかすかに触れ、髪を払った。

「あ、ありがとっ」

真田はエントランスに入った風子を見送ると、自分の帰路に着いた。

風子に、触れた。少し冷たい白い頬が、赤く染まった。丸みを帯びた双眸が、見開かれた。

(もう一度、あの表情を見たい)

真田は、どうかしていると首を振り、門に手をかけた。

風子に触れた感触は消えなかった。


彼の帰り道


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