02
「弦一郎、どうした」
「そうですよ、変ですよ」
柳に便乗した赤也が尋ねるも反応を示さない真田に、柳生を呼んだ。
「そのうち分かりますよ」
クスリと笑う様に、紳士なんて嘘だと赤也は思った。
「珍しいのぅ」
仁王は、くしゃくしゃに仕舞われた真田のジャージを始めてみた。
(二年目の付き合いじゃが、いつも綺麗に畳んでおるのに)
隣でくしゃくしゃに仕舞う赤也と比べ、普段ならここで真田の制裁が加えられるのだが、当の真田は、ぽかりと呆けている。
そこに慌てた様子のジャッカルが、戻ってきた。
「おい、真田!女子が待ってるぞ!」
真田はビクリと肩を揺らした。
「何だよぃ!女子って?!」
「ジャッカル先輩、冗談はやめて下さいよ」
「冗談ではない、だろうジャッカル」
柳が真田の荷物を手早く仕舞い、真田はありがとうと言いながらも動こうとしない。
「早く行け、待たせるな」
真田は、違うのだと弁解をするが、柳と柳生は聞く耳を持たず。
他の面々は、柳生を取り囲む。
柳によって開かれた扉の向こうには、良稚風子が恥ずかしそうに俯いていた。
「ごめんね、帰れば良かったかな」
固まったまま動かない真田に風子は、俯いたまま謝った。
(そういう問題ではないのだ!
しかし、男が一度口にしたことを破るなど許せぬこと!しかしっ!)
パニック状態の真田に変わり、柳が風子の肩を叩いた。
「気にするな。途中まで送ってもらえ」
柳は真田に分かったなと念押し、逆らえない真田は、是非にと答えるほかなかった。
夕暮れをの中、親子ほどに背丈が違う二人は、人二人分の空間を空けていた。
(どうしたものか)
真田は落ち着かず、やたらと周りが気になり鍛練不足かと悩み始めた。
一方の風子は、真田の歩幅に着いていこうといつもより早足になる。
真田は風子の様子に気付かず、何処まで送れば良いのかと首を捻った。
「済まないのだが、家は何処だ」
風子を見れば、微かに頬が赤く息が切れていた。
「真田くんは?」
尋ね返された真田は、もうすぐぶつかる公園を右に向かうと指差した。
風子は、私は左ですと答えた。
(ならば、公園までで良いのか
しかし、どのように誤解を解くべきか…
蓮二に相談すべきか
もしくは幸村か…)
真田の頭は悲鳴を上げようとしていた。
着いた公園の前で、真田はお役御免とばかりに気をつけろとだけ言い、背を向けた。
後ろで風子が小さく手を振っていることなぞ、気付かずに。
(む、弦一郎たるんどるぞ!!)(御祖父様、申し訳ありません)(弦一郎、蓮二くんから電話よ)(はい)(俺に相談する確率82%、精市に相談する確率71%だな)(む…)
混乱
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