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「真田くん、少しだけ良いかな?」

真田が掛けられた声に振り向くと、そこには記憶に無い女子がいた。クラスメートがそれぞれ部活に向かう姿に真田も早くと思った。

「真田くん、先に行っていましょう」

テニスバッグを背負った柳生にすぐに行くと伝え、真田は女子と向かいあった。

「私、F組の良稚風子です。いきなりだけど、付き合って下さい」

「構わんが」

真田は何処に付き合えば良いのか尋ねようとしたが、風子は顔を真っ赤にし微笑んでいた。

「本当に!」

「む、男に二言は無い。だから…」

「じゃあ、テニスコートで終わるのを待ってるね!」

真田は風子の勢いに押され、尋ねるべきと思っていたことを尋ねられず、果ては風子が手を振り廊下に出るまでを見送っていた。

「一体、何処に付き合えというのだ?」

真田は首を傾げ、テニスバッグを背負った。

「柳生、いたのか」

「えぇ、まぁ」

柳生は挙動不審に視線をさ迷わせ、行きましょうと真田を促した。

「さっきの方は?」

「F組の良稚風子と言っていたな」

向かいの校舎から聞こえる合唱部のピアノの音が断続的に流れている。

「何を話されていたのですか」

真田が付き合えと言われたが、用件が分からず参っていると答えると、柳生の足が止まった。

「どうしたのだ?早く行かねば、赤也がここぞとばかりに煩いぞ」

顔を上げた柳生の目は、相変わらず推し量れない。

(目は口ほどに物を言うというが…)

だから仁王と組めるのだなと真田は、妙に納得していた。

「それは、お付き合いをするという意味ではないですか」

(お付き合い…?)

固まった真田に柳生は、やはりと確信した。

(勘違いされていますね)

男女のお付き合いですよと駄目押しに、付け加えた。

(俺とあの女子が付き合うだと!)

「たるんどるっ!!」

ぐわりと掴まれた肩が痛い柳生は、慌てふためく真田をテニスコートへと引っ張った。

(これは面白い)


(真田副部長、様子がおかしいですね)(ふむ、良稚風子が関係している確率100%)(聞きにいくってよぃ、ジャッカルが!)(俺かよっ!)


誤解


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