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テスト上位者の貼りだしは総合が五十名、五教科が各二十名というもの。

中間考査は五教科のみなので、貼り出されるのも早い。張り出される時間は、テスト後四日目の昼休みだ。

風子はその日、気が気ではなく乃里子にも心配された。

乃里子は風子の気の良さを知っているだけに、心配で仕方がないのだ。

(それに、最近何か隠してる?)

明るいとは言え、勝ち気ではない風子。乃里子は、大崎や柳にでも聞いてみようかと考えた。

「風子、昼を食べたら見に行こうか」

柳が、ノートを手に風子に提案した。

「そうだね」

落ち着かない様子の風子に何があったか気になったが、理由が見当たらない柳もまた若竹にでも聞くかと考えていた。

貼り出された順位表の前は、黒山の人だかり。風子は、げんなりした。柳も然別。

「あ、あそこに幸村くんがいるじゃん。行くよ!」

乃里子は風子の背中を押し、人だかりに潜り込んだ。

「や、柳くんは?」

「大丈夫よ。ほら、こっち」

うぷっと奇声をあげる風子を引っ張り出した乃里子に感謝し、風子は表を見た。

総合1位、柳生比呂士(A)
総合2位、吹田エリカ(A)
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総合7位、柳蓮二(F)
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総合13位、真下栄太(C)
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総合21位、佐倉嘉乃(D)
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総合27位、真田弦一郎(A)
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総合31位、幸村精市(C)
総合31位、海老河悠矢(D)

「うわ、やるわね」

乃里子がばしばしと叩く背中以上に、吹田に見せられた現実に体の奥底がキリキリと痛んだ。

「他は見た?」

乃里子を挟んだ隣の幸村が各教科の順位表貼り出しを指さした。

「基本的に変わらないんだけどさ、見てみなよ」

クスリと笑った幸村は楽しそうだ。

国語では、やはり柳生がトップで生徒会メンバーも入っていた。

「ちぇ、今回は駄目かよぅ」

ぱんと軽い破裂音に二人が振り返ると、丸井が膨れていた。

「しかし、柳も凄いな」

ジャッカルが腕組みをして唸る。

「仁王くんは相変わらず、数学だけ突出してますね」

いつの間に背後にいたのか、柳生がスと眼鏡を押し上げた。

(テニス部も生徒会も
凄いな、良いのかな)

乃里子が丸井と話している隙に、風子は人込みから抜け出した。

真っ白な床に窓から入る陽射しが反射し、単なる昇降口だというのに、神聖さを醸し出していた。

「あら、良稚風子さん。結果が示す通りよ。貴女には、相応しくないわ」

言い捨てると吹田は、髪をいつかのように翻してキュッと上靴を鳴らして去った、不敵な笑みを浮かべて。

ぽつんと立ち尽くす風子を見つけたのは、真田だった。

最近になって見慣れた小さな背中が心なしか丸く、何かあったのかと思った。

「風子、どうかしたか?」

その小さな背中の主は、普段と違う表情で何にもだよと笑った。

(む、引き攣っておるではないか)

「真田くん、凄いね!」

うふふと笑う風子に真田は感じた違和感を隠した。

何かあったのか
聞きたいが聞けないというジレンマ故に。

「柳生には敵わんがな」

「十分だよ」

真田は隠しきれていない違和感を、また感じた。

(言ってはくれないのだろうか)

「さ、早く戻ろ!乃里ちゃんたちが待ってるよ」

ぽんぽんと背中を押され、真田は教室に向かった。

風子は、どうしようと、呟いた。


不敵な笑み
吹田エリカ再来



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