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真田のタオルが、風子の家で一緒に風を受けていた翌朝、風子はくよくよしても仕方がないと考え、気持ちを切り替えた。
朝練のない今日、真田は普段より少し遅く登校していた。
(昨日から引っかかるものは何だ)
そして、柳との約束を思い出していた。
中等部の正門に近付けば、普段とは違う登校風景に騒がしいものだ、と呟いた。
「風子、おはよう」
風子とさして変わらない女子が風子に抱き着いた。
真田は数メートル先のやり取りを、ぼんやりと見ていた。
(普段はあぁなのか
俺の前では、おろおろしているが)
と、自分より少し低いくらいの男子が風子の頭に触れた。
「相変わらず、ちっせーの」
「うっさいな!お、は、よ、う!」
くつくつ笑う男子に風子は、舌を出している。
(む…何なのだあ奴は!)
真田はツカツカと二人の元へと向かった。
「良稚…風子、お早う」
風子は、驚いた。昨日の今日で、真田に朝から会うとは思っていなかったうえに、声をかけてくれるなんてと心の中で叫んだ。
「さ、真田くん、おはよっ!」
嬉しそうに自分を見上げる風子に真田は、気分がスッとした。
そして、口を開いた。
「昼、お前のクラスに行こう、柳に用もあるからな」
真田はそう言うと、満足そうに先に昇降口へ向かった。
(お昼、お昼?一緒…!)
「何で、真田?」
「大崎くんよ、私先に行くねっ!」
風子はポカンと呆けている大崎を放って、自分のクラスへと急いだ。
「やーなーぎーくんっ!」
ガランと大きな音をたて開け放った扉をそのままに、風子は既に読書体勢の柳の机に走った。
「弦一郎か?流石に何があったが分からない」
ぱたんと閉じた夏目漱石を仕舞うと、風子は指定席に着いた。
「真田くんがお昼来るの!」
「それは良かった。それならば、二人でか」
「柳くんに用があるってさ」
「そうだったな」
(ほぅ、何があったか分からんが弦一郎が動くとは珍しい)
(風子に興味、好意を示したというところか)
嬉しそうに笑う風子を見ていると、大崎が唸って柳の元に来た。
「何だ?」
「いや、さっきな…真田がよ、風子と昼を一緒にってさ」
繋がりが分かんねぇ、と唸る大崎に柳は様子を把握した。
(風子を知りたい、と思ったのか)
柳は唸る大崎と破顔した風子を見て、昼を楽しむことにした。
彼女を知る
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