いろいろ | ナノ




足立誕

!コンビニ店員足立と高校生番長。足主…?



世の中くそだなー、とお決まりに呟いてみたところで事態が変わる由もない。そんなの僕だってわかってるよ、伊達に20年生きてないっつーの。
ただ、それなりに優等生やってきて親からの期待にも周囲からの羨望にも応えて来た訳で、そんな僕が世間一般的に大事な節目とされている二十歳の誕生日にコンビニの深夜バイトをやってるってのが気に入らない、ただそれだけの話。いやいや、暇だった訳じゃないんだよ!決して!断じて!

「らっしゃーせー」

立地に恵まれているでもなく、だからと言って周りに競合店が皆無という訳でもなく、郊外にあるこのコンビニは日付が変わる頃には客足も引いてしまう。そんな通例にのっとって、今日も今日とてのんびりと時間が過ぎてゆく。客が来ないから接客もしなくて良いし、商品が売れないから補給も必要ない。掃除も適当に済ませて、もう何もすることがない。
僕いる意味ないんじゃないの、とは思っても、この時間帯は最低人員でやってるから帰れない。ちょっとした生き地獄。はい、世の中クソダナー。
自動ドアが開いて、イライラしている時に聞くと癪にさわる電子音が鳴った。隙間から冷たい空気が入ってきて頬を擽る。
興味があったのではない。暇だったし、入ってきた客をなんとはなしに観察した。不躾にならない程度にそいつの動きを視界の端で追う。
高校生くらいだろうか、脱色してるんだかやけに薄い色の髪色は他ではあまり見ない灰色だった。目元ぎりぎりで揃えた前髪は昨今の流行りとはそぐわない気がするが、おしゃれ系と言えばそれで納得できる様な気もする。モッズ系?って言うの?流行りとかわかんねーしヨノナカクソダナ!厚い前髪で強調されたつり目が、近寄りがたい空気を醸し出しているが、鼻筋通ってるし、それが逆にかっこいいといか言われちゃってるんじゃなかろうか。あ、なんか腹立ってきた。大体こんな時間に制服でコンビニ着てるあたり、遊び歩いてろくでもない男に違いない。ばかな女はこういうのに騙されるんだ。着てる制服がここらで一番の進学校のものなのもむかつく。こいつ、爆発しないかな。僕に被害が出ない様に、店出て3分後に爆発すれば良いのに。

「もしもし」

無機質な電子音が鳴り、冷蔵庫のドアを開けてリボンシトロンを取り出しながらそいつが電話に応じる。親しい友人からの電話か、はたまた騙しまくってる数多くの女の一人からかはわからないが、奴は「ああ」と言うと柔らかい表情で笑った。その笑顔が妙に優しくて、これがギャップ萌えって奴か、などとまたしても余計なモテポイントを発見してしまい激しく後悔する。

「うん、今から帰るところ。え、違うよ、一人」

あ、女からだな、こりゃ。
確定してしまうと、一気に興が冷める。まぁ僕には関係ないし。僕の人生に関係ないし。せいぜい体たらくでふしだらな生活送って女に刺されろ、と思いながらおでんのスープを足す。腹減ったな。

「はんぺんと大根一つずつ下さい」

いつの間に通話を終えたのか、ペットボトルと菓子パンを携えて奴が僕の前、もとい、レジの前にいた。不覚にも少々びっくりしてしまい、びくりと肩が揺れてしまう。くっそ、いきなりあらわれんなよ……心中で客に対して理不尽な言いがかりをつけながら、愛想笑いを浮かべれば、奴はまたうっすらと笑った。
なんっか、むかつく。

「からしと味噌はつけますか」
「からしだけ下さい」

おでんと他の商品を別々に袋に入れて、代金をもらい奴に商品を手渡す。少しだけ触れてしまった奴の手は死人かってくらいに冷たかった。

「ありがとうございましたー」

そうして来た時と同じ様に自動ドアが開いて冷たい空気を店内に少しだけ招き入れて、奴は帰って行った。
腕時計を見ればもう日付が変わっていて、僕は記念すべき二十歳の誕生日になった瞬間をあのいけすかない男子校生と迎えてしまったと言う事実に気付いて茫然とするのであった。
あーぁ、ほんっと世の中クソだな!



110201

[ 1/2 ]

[*prev] [next#]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -