「あなた、おかえりなさい!」
「ああ」

日が沈みきった頃。帰ってきたばかりのカタクリをキスで迎えた。それが妻のつとめ。彼の顔も少し微笑んでいるように見える。ナマエからは。

「夕食は?」
「食べてきた」
「そう、じゃあお風呂の支度するわね」
「ああ」

ナマエは鼻歌を歌いながら浴室に向かった。そんな姿を可愛いと思いながら、カタクリは一度自室に戻り、浴室に向かったわ、洗いたてのタオルとバスローブが用意してある。
そのままシャワーを済ませ、バスローブを羽織った瞬間ナマエが現れた。

「…どうした」
「どうしたって……、そんなのわかってるでしょ?」

そろり、と近づいてくるナマエにカタクリはため息をついた。そして膝を着き、ナマエの高さにできるだけ合わせる。するとナマエは満足げに微笑むとバスローブの合わせに手をかけた。そしてガバッという効果音がつくほどの勢いで左右に合わせを開いた。

「わ〜!今日も最っ高!ナイスバルク!ナイスカット!!」

舐めるように筋肉を眺めると今度はぺたぺたと触り始めた。カタクリは、ナマエのその小さな手で自分の腹筋や胸筋をさわさわぺたぺたと触られるのを眼下に見ていた。この時間だけは為す術もなく立ち尽くすしかない。

「どうしてこんなに質のいい筋肉がつくの??胸鎖乳突筋なんてもう世界一よ……」

そう言いながらカタクリの首筋に手を伸ばす。その表情は筋肉に酔っているという言葉がぴったり当てはまるような様子だ。その恍惚とした表情のまま首筋を撫で、すりすりと頬を寄せた。

「…ナマエ」
「んー?」
「お前はそうやってよく俺を触るが」
「うん」
「俺の体が目当てで結婚したのか」
「え?」

ナマエは首筋から顔を離し、彼を見つめる。表情は変わらないが、少し伏し目がちになったカタクリの瞳は少し落ち込んでいるようだった。ナマエはカタクリの頬を両手で包んだ。

「どうしてそう思ったの?」
「…お前はいつも俺の体を触るだろう」
「うん」
「触るだけ触って終いだろう」
「うん……、えっダメだった?」
「駄目ではない」
「あっ、私のも触る?」
「いや、そういうことでは……触ってもいいのか」
「ふふ」

珍しく拗ねたような表情を見せるカタクリに、ナマエは思わず笑ってしまった。

「誤魔化すな。筋肉“だけ”が目的なのか」

あまりに真剣なカタクリの表情に、ナマエも真剣な顔で口を開いた。

「それは違うわ。私は貴方の筋肉も、その恐竜みたいな可愛いお口も、貴方の全部が欲しいの。貴方を愛してるから」

そう言ってナマエはカタクリの太ももにちゅ、とキスをした。カタクリは太ももに当たる優しすぎる感触を遠くに感じ、ナマエの“貴方を愛してるから”という言葉が脳内にリフレインする。

「ナマエ」
「ん?」
「…俺もお前が欲しい。お前を愛している」
「ふふ、良かった」

ナマエがそう言って、ゆっくりと両手を広げれば、カタクリはナマエを持ち上げ、お互いに顔を近づける。動物のように鼻をすり合わせ、微笑み合う。

「今夜は夜が明けるまでお前に触れていたい」
「私もよ」

ナマエはカタクリの背に手を回した。


なかよし夫婦
「でもやっぱり上腕二頭筋も僧帽筋も最高〜!」
「……ナマエ」


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