私は故郷を捨てた。

その理由は本当によくある話で。パパと折り合いがつかなかった。それだけ。新世界の万国(この国)しか知らなかった私は、“楽園”と称される前半の海に出た。そこで私は、命を預けられる船長や仲間たちと出会い、今は楽しく生きている。でもやっぱり、時々パパのことを思い出していた。




「私何度もお願いしてるじゃん!パパには絶対迷惑かけたりしないし、もっと自由にさせてよ!」
「自由にさせているだろう」
「この島の中だけでしょ!」
「問題ない」
「大アリだよ!私も海に出たい!」
「…まだ早いと言っている」
「ずっとそれじゃん!私もう結婚もできる年齢だよ!」
「それは関係ない」
「……どうせパパもおばあちゃんと同じなんでしょ」
「…何?」
「自分の子供のこと、“駒”としか思ってない」
「……ナマエ」
「どうせ私も叔母さん達みたいに好きでもない人と結婚させられるんだ」
「そんなことは…」
「絶対嘘!私は自分の意思で決めたい。もうそう決めたの」
「ナマエ」
「うるさい!自分の部屋に戻る!」

私はそうパパに言い捨てた。きっかけは些細なことだったと思う。パーティーに参加しろとか、外出は控えろ、とか。でもあの時の私には限界だった。
その夜、家を、この国を出た。誰にも言わずに、一人で。
私はおばあちゃんの孫だということを最大限に活かして旅をした。私は世間知らずだって自分でわかってる。生活に困ったこともないし、なんでも好きなだけ学ぶ機会を与えられた。でも、“普通の女の子”の生活は、どんなに雑誌や恋愛小説を読んでもしっくりこなかった。あまりにも自分とかけ離れていたから。
でも、飛び出してしまえば私はやっぱり普通の女の子だった。可愛いと思うものは可愛いし、今は女友達もいる。
危ないこともまああったけど、意外と生きていけた。ルフィたちと会うまで大きな怪我もなく旅をしてきた。やっぱり四皇って凄い。でもだからってあそこに戻ろうとは思わなかった。あの国にいたら、いつまでも経験出来なかったことを私はたくさん経験した。私は、何も後悔なんてしてない。久しぶりにパパを見ても、思いは変わらなかった。

「…久しいな、ナマエ」

鏡世界に入ったルフィと一緒に飛び込んできた私に、パパが声をかけた。ルフィが目を真ん丸くしてこちらを見ている。この国に着いた時から身を隠していた私が急に現れ驚いたのだろう。私はそんなルフィを横目に返事をした。

「……そうね」
「ナマエお前どこにいたんだ!?探してたんだぞ!」
「ごめんね、ルフィ。一緒に来ちゃった」
「無事ならいいんだけどよー。なんだァ?お前ら知り合いなのか?」
「ルフィ、黙っててごめんね。シャーロット・カタクリは、私の父親なの」
「なにィーー!!!?」

驚くルフィに微笑みかける。それはそうだろう。私はパパに似てないから。私はお母さんの生き写しだってよく言われてきた。私の“ママ”は私を産んですぐに亡くなったと聞いている。

「やっと戻ってくる気になったか。ママが…」
「パパ」

パパの言葉を遮った。

「…なんだ」
「私はパパが変わらない限り、変わらないから」

私をまっすぐ見つめてパパは次の言葉を待っているようだった。

「私はパパやおばあちゃんの言いなりにはならない。育ててくれたことは、本当に感謝してる。」
「ナマエ」
「私、パパの娘で良かったって思ってるよ。そのおかげでこんな素敵な仲間に出会えた。そのままの私を受け入れてくれる人にたくさん出会えた」

私は“あの”カタクリの娘なのに至極普通だった。全てが平均的。そのせいで肩身が狭かった。そんな私をパパはたくさん愛してくれたと思う。でも、それは全ておばあちゃんの、万国(この国)のため。

「だから、…もう大丈夫」

パパの表情は特に変わらない。ただ、パパが口を開こうとした瞬間、ルフィが私を呼んだ。

「ナマエ!」
「なあに?船長」
「お前の父ちゃん、ぶっ飛ばしてもいいか」

私はそのルフィの真剣な顔に思わず笑ってしまった。

「ふふっ、ルフィ。私のパパ、すっごく強いよ」
「わかってる!」
「そっか、じゃあ頑張ってね」
「おう!」
「パパ」

私はパパの方に振り返った。

「…なんだ」
「うちの船長、すごく強いから」
「そうか」
「うん、…だから……」
「………」
「だから、…気をつけてね」
「……、ああ」

パパの目も見ずにそう告げて、私はその場を去った。ブリュレおばさんを探さないと。


離れていても
大丈夫、私はパパの娘だから


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