「……暑すぎるよ!!」
「わ、ビックリした」

キッチンで何かを作っているサンジくんをカウンター越しに眺めていたけれど、この気候には耐えられない。思わずこの暑さに叫んでしまった。カウンターにだらんと身を預ける私にサンジくんは苦笑している。

「ねえサンジくん、この暑さ何とかならない?」
「夏島が近いからね。…はい、暑い日にピッタリのフルーツドリンクだよ」

ビタミンカラーに輝くそれは、サンジくんの髪の色みたいで自然に笑みがこぼれた。下のブルーのゼリーも夏らしくて目で涼しめる。

「これ上に乗ってるのは?」
「オレンジのジェラートだよ。ナミさんのオレンジから作ってるから味は保証する」

そう言って微笑むサンジくんはこの暑さでも爽やかだ。

「サンジくんが作るなら普通のオレンジでもほっぺた落ちるくらい美味しいのに、そこにナミのオレンジなんて使ったら私幸せ過ぎちゃう」
「そんな風に言ってもらえて嬉しいよ」

ストローで底のゼリーと上のドリンクを口に運ぶ。柑橘系の程よい甘さと少し強めの酸味が夏にピッタリだ。

「美味しい〜…けど暑い!」

普段、私はナミやロビンのように露出過多な格好はしない。お腹を出すことも胸元を出すこともない。まあ出すとしたら太ももから下くらい。でも今日はTシャツにホットパンツでも何も涼しくならないしTシャツは汗を吸ってべっとりと肌にくっついているのが気持ち悪い。もう恥ずかしいとか言ってられないレベルの暑さだ。私は立ち上がってTシャツの裾に手をかけた。

「……っえ」

サンジくんが何か言いかけたが、構わずグイッとたくし上げてTシャツを脱いだ。

「ちょ、ま、待っ」
「ん?」

Tシャツの下はこの間の島で買った水着だ。白地に大きな向日葵の柄。ナミとロビンに勧められてこれにした。

「水着だ……」
「うん、暑いしもう肌見せたくないとか構ってられないなーって」
「水着……」
「うん?水着だけど…」

この船に乗って初めて水着を着たかもしれないけれど、どこか変だっただろうか。と目線を下げて自分の胸元を見る。そこには白地に大きく咲いた向日葵の絵柄。やっぱりこれにして良かった。可愛いし。と思っていると、ブシュッという音とともにキッチンが赤く染まった。

「サンジくん!?ちょっと、どうしたの?大丈夫!?」
「ここは…天国だ……」
「サンジくん!?ダメだよ!川が見えても渡っちゃダメ!」

倒れてうわ言を言い出したサンジくんに驚いた。この暑さで幻覚でも見えているのだろうか。

「チョッパー!すぐに来てー!!」

大きな声でチョッパーを呼ぶと近くにいたのかすぐに来てくれた。

「どうかしたか?」
「サンジくんが…!」
「何!?サンジがどうかしたのか!」

私の慌てようにチョッパーが急いで厨房に来た。私の大きな声に気づいたのかナミも部屋に飛び込んできた。

「何?どうしたの?」
「さっき急に鼻血を出してね、サンジくん倒れちゃったの。うわ言言ってるしどうしよう。死なないよね!?」
「……」
「ナミ?」

サンジくんが危険な状態かもしれないというのに、私の体を下から上に舐めるように見てきたナミに声をかけた。

「…アンタ水着なのね」
「へっ?え、うん。あまりにも暑いからさっき脱いじゃった」
「…ここで?」
「うん、サンジくんが冷たいドリンク入れてくれたんだけどそれでも暑くて」
「それだわ」
「へっ?」
「チョッパー大丈夫よ、寝かせておきなさい」
「そうだな、問題なさそうだ」

厨房を出ていこうとするナミとチョッパーと、倒れている血塗れのサンジくんを交互に見る。

「…えっと、サンジくん?大丈夫?」

とりあえず血塗れのサンジくんに声をかけると、とても幸せそうな顔をして私の胸元を見ていた。あっなるほど。そういうことね。

「あのー、私着替えてくるね」
「ダメだ!!!!」
「ひっ」

私の手首をガシッと掴み、少しギラつくような目でとてもかっこいい表情をしているが、その顔は鼻血まみれだ。

夏と向日葵と
暑さと水着と

fin.


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