暇を持て余した麗しの先輩方の遊び


「うーん、やっぱり緑の髪には白じゃないかなぁ」
「いやっ黒もなかなかだと思うけど?」
張本人は置き去りに楽しそうに会話を弾ませているのは、我がチームのFW兼俺の先輩方。
あのう、俺おいてけぼりなんすけど……


それはきっとたまたまだったんだ。たまたまヒロトの部屋の前を通ったら、たまたまそこからヒロトと吹雪が覗いてて、たまたま目が合って、笑顔で半ば引きずられるように部屋に押し込まれれば、そこにはたまたまマネージャーから借りてきたであろう髪飾りやらが置いてあって…………たまたまに決まってる。
「結構硬いんだねー緑川くんの髪ー」
「あんまり気をつかってなさすぎだよ、お前は」
リンスしろリンス。
なんで男の俺がリンスなんか!!と先輩方とこの異常な状況に恐縮しながら心中で叫んでいるとと、吹雪が風丸くんはしてるよねー、とまるで心を読んでいたかのように呟いた。
さっきから下ろされた髪の毛をぺたぺた触られて、むずむずして居心地悪い。
この合宿中に仲良くなったであろうこの二人はそれはもう楽しそうだ。
――絶対からかってる!!
さっきから髪の毛を持ち上げて、ツインテール〜だとか、素早くみつあみをして、おさげ〜だとか言って俺の髪で遊んでいる。
堪えろ、堪えるんだ俺。仮にも先輩(元上司)だ。しかもなんだか後が怖い気がする。てかなんであんたら髪が短いのにそんな早くみつあみとか出来るんだ!
さっきからなんとかして抜け出そうとするが、全く許してくれる雰囲気じゃない。

こうなったら誰か…!!

そんな懇願を込めて入口を見遣れば、ちらりと半分ほど開い扉の向こうに人影が見えた。あっあれは!
「あっ、風丸くん!!」
俺が呼びかけるよりも早く吹雪が風丸を呼ぶ。てかあんた扉に背中向けてなかったか…?
こちらに気づいた風丸は、一息ついた後、部屋に近づいてきて半開きだった扉を全開にして入口に立った。
「なぁにやってるんだ、お前ら」
きたっ救世主!!雷門の、いや、日本代表の良心!!
最早俺は半泣きになる勢いで風丸さんを見上げる。ああやっと解放される…
「緑川くんで遊んでるんだよっ」
やっぱり遊んでたのかよ。
がくりと肩を落とす俺を尻目に、二人はきゃいきゃいと状況説明をする。
どの髪飾りがいいかな?またぐるぐるにしちゃう??おだんごは?あれは難しいよ。なかなか上手くあげられないよな。
もうそんなことどうだっていいから!と風丸にすがるような視線を送る。あんただけが頼りなんだ!ほら早く、なにやってるんだ、放してやれよって困った顔して注意してやってくれよ!!この人達もあんたの言うことなら素直に聞くだろうからさ!!
「……俺なら上手くあげられると思うぞ」
俺は一瞬耳を疑った。へ、今なんて?
呆気に取られる俺の一方で、諸悪の根源の二人の顔はどんどん輝いていく。
「じゃあおだんごしよっ風丸くん!!」
「ゴムはどれがいいかな!」
高まる声に反比例して俺のテンションは急降下する。それに風丸さんは追い撃ちをかける。
「俺、やられる側ばっかだったからさ」
あっ、この人楽しんでやがる。
さっきまで輝いてた姿も、今では黒いオーラすら見える。
…こうなったら…開き直ったが勝ちだ!
「だぁぁあもう!好きにすればいいだろ!!」
そう叫べば、先輩方のそれはそれは麗しい笑みが返ってきた。



暇を持て余した麗しの先輩方の遊び





その日の夕食は頭をごてごてに飾られたまま出席させられた。
(だっはーーー!なんだそれ緑川!!)
(ちょっ綱海さん!)
(うっしっしっ、すっげー頭っ)
(まぁ、その、あれだ、お疲れ…)
(じゃあ止めてくださいよ!)




麗しの先輩方と憐れな弟分。
3人は乙女趣味な訳ではない。
FW二人は嫌がらせ、風丸は気まぐれ。













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