暖かく揺れている君の面影も ザーーと蛇口から大量の水が引っ切りなしに流れ出る。その水は俺の嘔吐物を綺麗にさらい流していく。ゲホゲホと咳込む。胃には何も残っていないのに、それでも嘔吐感が治まらないから俺の身体は無理に透明な液体を外に出そうとする。 少し嘔吐感が治まって口を濯ぐ。喉の奥から酸の味がする。気持ち悪い。 手の甲で口元を拭いながら、顔を上げると自分と目が合った。 「…ひどい顔だな」 思わず自嘲の笑みが零れる。 どうしてこうなったのか。 服の上から小さな石に触れる。もう何度したかも分からない質問だ。どうすれば避けられた?どこで間違えた? 宇宙人と戦わなければ?宇宙人が来なければ?雷門が優勝しなければ?サッカー部に入らなければ? ―円堂に、出逢わなければ? 「解ってるんだ、全部」 解ってるんだ。全部必然だった。間違いなんてない。ただ、 「ただ俺が弱かっただけさ」 力が?心が?そんなの両方だよ。 ぎゅっと目を瞑れば、すぐに浮かんでくる大切な、幼なじみの笑顔。その屈託のない笑顔がますます俺を惨めにしていく。 「お前は眩しすぎるよ…円堂…」 お前の笑顔は確かに俺に力をくれていたはずなのに、今はもう目を開けていられない。 石に触れた指先からひんやりとした感覚が伝わって、少しずつ気分を落ち着かせていく。 エイリア石は俺に負けない強さをくれた。確信もくれた。なんだって欲しがれば与えてくれるだろう。 それでもこれは俺から円堂を消してはくれなかった。染岡から吹雪との記憶を消したように、俺からも円堂を消してくれればずっと楽だったのに。きっとこれは、俺の欲望の源に円堂がある事を解っているんだろう。 それなら、なにが俺をこの惨めさから救ってくれるのか。 「円堂、お前はどうやって救ってくれるんだ?」 今度はお前が俺に惨めな姿をみせてくれるのか?それとも? すうすうと急速に頭が冷えていく。そんなこと考えているのがばからしくなってきた。もっともっと力を手に入れればそんなこと考える必要なんて無くなるのに。 流しっぱなしだった蛇口を閉め、ローブを翻してその場を後にする。 馬鹿馬鹿しいな。もう後戻りはしないと決めていたのに。 目を瞑れば浮かぶ笑顔。頭の奥で円堂の声が聞こえた。 さよならだ、円堂。 呼び戻すベルにならない DE捏造。染岡が吹雪を忘れてた云々は染岡の吹雪とのいい思い出だけ忘れてた所から。 |