確信犯 ※裏、大学生設定 少しばかりの不快感。頭痛だった。ずんずん、と奥が響く。これは恐らく正真正銘の二日酔いだ。そういえば昨日はサークルの飲み会だった。喉が渇く。頭が痛すぎて目を開こうという気にもならない。右腕で目を覆う。少しひやりとして二日酔いがマシになる気がした。ただいつまでもこうして居られない。確か今日は1限があったはずだ。欠伸をしつつ勢いをつけて右腕を大きく広げた。何かに当たる。 「いた」 声に驚いて右を向くと人が居た。そいつは艶めいた吐息を吐きながら未だ寝ようとしている。寝ぼけているんだろう。嫌な予感しかしない。そういえば、と当たりを見渡せば自分の部屋では明らかにない空間だった。ついでに自分の身体を見れば案の定、上裸だった。下は辛うじて下着だけ身につけている。 「嘘やろ……」 酒は強い方だと自負していた。今までの人生酔い潰れた記憶もない。例え二日酔いになろうとも、前日の記憶だけはしっかり残っている性だった。起き上がり取り敢えずズボンを履く。さっきまで寝転んでいたベッドに腰をかけて酷く痛む頭を抱え込みながら昨日を振り返る。ちっとも思い出せやしなかった。 「あかん、1限や」 自分のスマホが見当たらなかった為、壁にかけられた時計を見ると1限まで後45分しかなかった。ここが何処だか分からない以上、早めに出るに越したことはない。流石にこの状況のまま、相手を放置するのは気が引ける。取り敢えず彼女の肩を揺らした。 「起きてくれへんか」 「んー……」 んー、ちゃうねん。時間も多くある訳じゃない。少し強めに肩を揺らした。名前も分からないから呼びようもない。取り敢えず数回呼び掛けた。すると彼女はくるり寝返りを打ち、うつ伏せになってから猫のように丸まって伸びをした。 「おはようさん」 開き直ることしか出来ない。なるべく平静を装って取り敢えず声を掛けた。彼女はこっちを見て睨む。俺が上裸だったのと同様、彼女も上裸だった。ずっと見ているのも悪い。しれっと顔を背けた。無言で俺の前を跨いで机の上にある眼鏡をとった。掛けると見たことある奴だった。サークルに居る、地味な女の子だった。話したことも無いはずだった。名前は確か苗字と言ったか。眼鏡を普段から掛けているから、裸眼の顔を見ても分からなかった。 「あ、ごめん睨んでないよ。見えなかっただけ」 「そうか……」 彼女はベッドから起き上がると下に落ちていたキャミソールを着ると、近くの鞄をゴソゴソと探りスマホを取り出して俺にメールの画面を見せる。大学からのメールだった。 「1限休講だよ」 「そうか、おおきに」 そのまま彼女は、何が可笑しいのか、少し笑ってタンスからTシャツを出した。それを俺に差し出す。着ろということなのか。取り敢えず受け取って顔を見ると、また少し笑った。 「ゲロったから乾燥回してる。取り敢えず着てなよ」 「まさか俺か?」 「私だよ」 自分が嘔吐して他人の服を汚したのに悪びれもなく言う奴だった。ずっと上裸で居るのも憚られる。大人しく着た。何故男物のTシャツがあるのかは謎だけれどサイズは丁度良かった。彼女は多少困惑してる俺を見向きもせず冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぎ飲みだした。飲み差しを俺に差し出す。首を横に振る。彼女は諦めて残りを自分で飲んで、シンクにコップを置いた音が響いた。 少し気まずい。流石に何も言わずに居るのは悪いか。謝ろうと口を開く。最初の1音が出る少し前に彼女からも声が発された。 「いや、ごめんね。誰でも良かったんだけどさ。たまたま忍足君に吐いちゃったから持って帰っちゃった」 あっけらかんと話しながら髪の毛をかき上げる。その仕草で思い出した。彼女が俺の上で艶めかしく腰を揺らしたり。ご丁寧に首や耳にキスしたり、頼んでもないのに俺のを不敵な笑みで口に含んだり。思わず溜め息が出る。 「今思い出したわ。印象違っとったし全然分からんかった。結構酔っとったな、堪忍」 「正直なんだね、別に責任取ってとか言わないからいいよ。ちゃんと外で出したし」 ホンマにこの女は情緒ないんか。そんな俺を他所に、彼女は何処かへ行く。暫くして帰ってきたと思ったら俺のシャツを持っていた。乾いてたよ、と手渡す。着替えようとTシャツを脱いだ。自分のシャツと交換で渡すと彼女は笑いながらまた口を開いた。 「でも、意外にぎこちなかったね。もしかしてそんなに経験ない?」 動揺で自分のシャツを落とした。顔をあげて苗字を見ると随分と可笑しそうに笑顔を浮かべていた。鼻で笑った。 「記憶ないから何ともやな、試してみたらええんちゃう?」 腕を引いてベッドに沈める。覆いかぶさってキャミソールに左手を滑らせて膨らみを優しく揉む。指先で突起を撫でると吐息を漏らした。膝を脚の間に入れて、ツンと奥に押し当てるとピクリと腰を動かした。口程にも無いな。キャミソールをたくし上げて突起を飴玉のように緩く舌で遊ぶ。さっきより激しく吐息を漏らした。右手で下着の中に手を入れる。奥へ進めれば厭らしい水音が鳴った。 「どないしたん?」 鼻で笑いながら言葉を吐けば、彼女は俺の首元に両手を回して耳元で艶っぽく囁いた。 「またしたかったから嘘ついちゃった。忍足くんって負けず嫌いなんだね、意外に単純で可愛い」 女は男より1枚上手なようやった。これは2限は自主休講やな。 [BACK] ×
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