悠久の丘で
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一時退却

 ライフストリーム
 それは星を巡る命の流れ
 星と、星に生きる全ての命の源です

 神羅カンパニーは、ライフストリームを資源として使う方法を見つけました

 そのおかげで、私達の生活はとても豊かになりました
 でも、それは、星の命を削ること
 そう考える人も大勢いました

 神羅は、自分達に反対する人を力で抑えようとしました

 神羅には、ソルジャーという、特別な兵士達がいました
 大昔に空から降ってきて、この星を滅ぼそうとした災厄、ジェノバの細胞を埋め込んだ人たちです

 その中にセフィロスという、とても優秀なソルジャーがいました
 でも、自分が恐ろしい実験で生まれたことを知って、神羅を憎むようになりました
 そしていつしか、全てを憎むようになってしまいました

  神羅と神羅に反対する人たち
  憎しみのあまり、星を破壊してしまおうとするセフィロス
  セフィロスを止めようとする人たち
 いくつもの戦いがありました

 戦いの数だけ悲しみがありました
 私が大好きだった人も、ライフストリームになってしまいました


 そしてあの日
 運命の日
 全ての戦いを終わらせたのは、星自身の力でした
 星はライフストリームを武器として使いました
 地上に噴出したライフストリームは、争い、野望、悲しみ、全てを飲み込んでしまいました

 悲しみとひきかえに、全部終わったんだよ。
 そう言われたのは2年前でした




 街がようやく活気を取り戻し、世界が受けた傷がようやく癒え始めた頃。
その頃の、お話です。


  *


『ハローハロー』
 小さな着信音が聞こえてすぐに取った。大好きな奴の為だけの着信音。
「よぉ、お姫サマ。ご機嫌いかがかなっと」
『俺は上々! 約束、守れそうだしね』
「じゃ、奴らのお兄ちゃんは上手く説得できたのかな」
 声のトーンが上がったかもしれない。
 ムッとして、それを隠すために皮肉にも上がってしまった。
 後ろで相棒が笑ってる。サングラスの奥で笑っててもバレバレなんだ、っての。
『うーん…、俺、といいますか彼女といいますか…』
「なんだクリス、珍しく歯切れ悪いな」
『しょうがないじゃーん。大好きなあの子の功績、取れねぇもん!』
「…あ、あのお嬢ちゃんか」
『え、分かるのか、レノ』
「どれだけ一緒にいると思ってるんだ」
 何年前かパッとは思い出せないくらい。
 まだ針ネズミがいたときから。
「それくらいは信じられるくらいだぞ、と」
『…そっか、そうだよなー』
 やけに懐かしむような声で言われた。相手にはわからないって知ってるけど、コクリ、と頷いた。
 後ろでルードが笑ってる。ちょっとうるせぇ、なんて言いたくなったが、その笑みがなんか優しいものだったから許してやった。
『あ、ルーファウス元気でやってると思う?』
「社長?」
 突然出てきた名前に軽く眉を寄せながらもちょっと考えて答えた。
「多分、大丈夫だと思うぞ、と。あいつらの目的は社長じゃねぇし、あの人の悪運ならどうにでも…」
『確かに悪運めいてるけどな?』
 それでもあの子は世界に必要だろう? といわれて、渋々ながらもうなうずく。じゃなきゃ、未だあの人の下についている理由が分からない。
『ルーファウスもさー。ああいうところがなきゃ、本当に素直でいい子だと思うんだけどね』
 ああいうところ、というのはどれだろうか。

 ツォンさん並みには敬愛できていない。
 クリス並みには社長自身を理解できていない。

 ちょっと悩んだが、聞くのが怖かったので無視した。
「それにしても、クリス」
 怖かったから話を当面の問題に移動させた。
「あいつらに会ったのか?」
『…あいつらってカダージュたちのこと?』
 ちょっと間があった。何かあったか、と溜息をついた。
「何言われた?」
『…一緒に行こう、って。母さんに会いたいから星痕の子供を集めてたんだって。あの子達の母親は…』
 次第に声が小さく萎んでいった。何を考えているのか、あの事件を共に越えているから分かる。彼にとってはそれがどれだけキツイのか、とか。
 その母さんのせいで分かれた兄のような存在とか。
「クリス」
 名前を呼んだ。
「クリス、泣いてもいいんだぞ、と。すぐに俺が行ってやるから、泣いてもいい」
 ルードは気を利かせたのか後ろにはいなくなっていた。
 もしくは、今は一人になっているティファを見に行ったのか…。
 どちらにせよ、かなり正直に言って助かった。
『…だめだよ、レノ』
 クリスの言葉は意外だった。
『俺がここで投げちゃったら、カダージュたちはどうなるんだっての。多分俺以外にあの子達をとめる人はいない。…クラウド以外は』
 関係者だと、彼は言った。
『俺が投げちゃ、どうしようもないでしょ? あの子達は俺を呼んでるんだし』
 その口調から、”姉さん”の理由が分かったんだと悟る。
 そうでなくても行く前から殆ど悟った風ではあったけれど。

 彼が背負う気なら、待たなくては。

「クリス、早く帰ってこいよ、と」
『うん、わかった。もう帰れるよ、レノ』
 リーブさんに言っといて、といわれた。
『リーブさんのおかげで、とりあえずマリンちゃんだけはつれて帰れるから。他の子供たちは…明日かな。多分早く来ると思う。カダージュの性格なら、ね』
 クリスの言葉にはやや笑みが込まれていたのではないだろうか。
『レノ、いい加減クラウドがすごい顔してるしマリンちゃんも起きちゃうから切るな?』
「あぁ」
 そういうしかなくて、言った。
 そしたら笑われた。
『大丈夫、もうそろそろ…あと1時間ぐらいで着くからさ。ティファに言っておいてな、マリンちゃん休ませる為にベッドあけておいてくれって』
「わかったぞ、と」
『うん、じゃぁよろしく』
 何で最後まで他人の心配しながら電話してんのか、なんて悩むがそれもクリスらしい。
 やけにあっさり切られた電話を睨みつけつつも、正直怒りなんてものはもうない。
 どうしようもないんだ。最初からそんな風な性格で、そんな性格だから…とか。
「ったく、どうしようもねぇな」
 大きな独り言を半ば近いどこかにいるだろうルードに聞かせるようにして伸びをした。
 ティファを探さねばなるまい。
 面倒くさいなーなんて思いながらも、しかたなしに歩く。今の時間なら余裕でこのまま寝れるのだが、伝言を頼まれればそうもいかない。
「ルードぉー、ルード」
 深夜だってのにわざと大きな声を出して相棒を呼ぶ。どうせならあいつにきっかけをやろうと思った。
 正直な所、言うのが面倒くさかっただけだ。

 早く帰ってこないかな、と思った。
 帰ってくればどんな我侭だって聞いてやるのに。


  *


 電話を切って笑った。
「レノってさぁー」
 前でマリンのために安全運転をするクラウドは眉を寄せて僅かに後ろを見た。
「レノってどうしてあんなに心配性なんだろうな?」
 正直言って、クラウドからすればどうでも良かった。
 恋人同士か、とでも罵倒したくなるような電話じゃなくて良かったと思っている。
 マリンはクリスの腕の中でくーくーと変わらない寝息を立て、静かに寝ている。子供は寝る時間だし、寝る時間にしては遅すぎる。
 クリスはマリンを器用に抱きながら、クラウドと背中あわせでバイクに乗っていた。

 夜風は冷たい。

 マリンにジャケットをかけてやり、その袖が風にはためく。
「星も綺麗だし」
 ケタケタと笑った。
「明日、明日が終われば全部終わっちまうな」
 カダージュも、ヤズーもロッズも。母さんや兄さん、姉さんの事も。
 星痕のことも。
 なんの根拠があるのか知らないが、クリスはやけにはっきりと言った。
「明日は決戦かー」
 あんまり感情がこもっているようには聞こえなかった。
「…カダージュたち、1番良いようになると良いんだけどな」
「やけに、あいつらの事を気にするんだな」
 極力隠そうと思っていた本音が出た。あ、とやや濁った音で口元を隠す。
 クリスは後ろで笑った。
「…そうだねー」
 こつん、と背に頭が当たった。
「俺の、弟たちって感じ、だから」

 見慣れた銀色がどうしても引っかかって、アイツがどうしても心配になった事。

 頼まれれば断る理由なんてないだろう、ましてや彼に良く似た3人。
『星を救ってくれ』
 そう、言われた。
 そして、泣きそうだった彼の頼みを当たり前のように引き受けた。
 だって、あともう一人それを叶えられる奴には言いにくかっただろうから。チョコボになんて、言いにくかっただろう。
 あの事件以来、チョコボは彼を好いてはいなかったから。
「迷ってるだけでいい子なんだと思うし、さ」
 姉さんとしては、手を差し伸べるべきだろう?
 笑い混じりで言ったら、クラウドはますます仏頂面になっていた。


  *


 明日は決戦だろうな。
 彼らを救う手立ては、考えてある。

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