悠久の丘で
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返して貰いに来たよ
ライフストリーム
それは星を巡る命の流れ
星と、星に生きる全ての命の源です
神羅カンパニーは、ライフストリームを資源として使う方法を見つけました
そのおかげで、私達の生活はとても豊かになりました
でも、それは、星の命を削ること
そう考える人も大勢いました
神羅は、自分達に反対する人を力で抑えようとしました
神羅には、ソルジャーという、特別な兵士達がいました
大昔に空から降ってきて、この星を滅ぼそうとした災厄、ジェノバの細胞を埋め込んだ人たちです
その中にセフィロスという、とても優秀なソルジャーがいました
でも、自分が恐ろしい実験で生まれたことを知って、神羅を憎むようになりました
そしていつしか、全てを憎むようになってしまいました
神羅と神羅に反対する人たち
憎しみのあまり、星を破壊してしまおうとするセフィロス
セフィロスを止めようとする人たち
いくつもの戦いがありました
戦いの数だけ悲しみがありました
私が大好きだった人も、ライフストリームになってしまいました
そしてあの日
運命の日
全ての戦いを終わらせたのは、星自身の力でした
星はライフストリームを武器として使いました
地上に噴出したライフストリームは、争い、野望、悲しみ、全てを飲み込んでしまいました
悲しみとひきかえに、全部終わったんだよ。
そう言われたのは2年前でした
街がようやく活気を取り戻し、世界が受けた傷がようやく癒え始めた頃。
その頃の、お話です。
*
「なぁ、クラウド」
黙りこんでいたクリスに急に話しかけられて、ちょっと驚いた。
「…なんだ?」
「連れてかれた子供とさ、一緒に」
ちょっといやな予感がする…。前を見据えたまま眉を寄せた。
「その銀髪の3人、一緒に帰ってこれると良いな」
どうしてこんなに嫌な予感が当たるんだろうか。唐突に、レノが、…いやルードが可哀想になってきた。あと、ツォン。
「何でだ?」
だいたい子供を攫ったじゃないか。クリスが何を言いたいのか、良く分からなかった。
「…ん、だって、心当たりっつーか本人つーか」
珍しく歯切れが悪かった。声に悩むような色が混じって、合わさっていた背中が離れた。
「…彼女に言われたっていうか、おバカちゃんにも言われたっつーか」
クリスが懐かしむように笑った。
「俺も納得させたいし、きっと関係者だし、迷ってるだけって気もするし、あまりにも出来すぎたシナリオだし、兄さんも姉さんも、ねー」
何が言いたいのか良く分からなかった。
出来すぎたシナリオ? 書いたのは誰だ、殴りたい。
「だからさ、せめて形見感覚に引き取りたいとか思ったりもするんだけど、嫌われてるかなー」
いや、多分大丈夫だろう。
思ってていても言えなかった。言うのはなんだかムカついたし、言ってルーファウスに怒られても嫌だった。第一、気軽に会えなくなるような気もするし。
白く発光する木が多くなった。何かいる。
「…クラウド、なんか」
「安心しろ、わかってる」
小さく頷いて、無造作に飛んできた弾を剣を引き抜いて切った。
遠くに、いた。
「…あれか。銀髪の、3人」
「あーぁ、本当に会った子たちだねー」
頭に多少体温を感じて、少し立った前髪及び後ろ髪が寝て、クリスが俺の頭の上で腕を組んで前を見ているようだった。ちょっと前髪が引っ張られる感じ。
3人は目の前だった。
…いや、多少表現は間違っている。
真っ直ぐ前、白の木の腕の下。後ろにはマリンがいて、彼らの前にはデンゼルや、おそらくは他の攫われた子供たち。
「…っく!」
「…クラウドちゃん、運転っていう表現じゃないね。つか、危ないから」
ぐいっと後ろの襟の部分を強く引っ張られた。
何故か、体が浮く。
何故かなんて考える余裕も無くて、浮いた体の下で、その直前に無茶にハンドルを切ったからバイクが傾いた。
「ねぇ、子供たち、返してもらいに来たよ」
クリスが言った。
細いはずの腕に襟を引っ張られ、宙に浮いて地面に降りた事を理解するより早く、一番小さい銀髪が近寄ってきて、止まった。
「やっぱり来てくれたんだ、姉さん」
「…子供を返してもらいに来た」
ちょっとタイミングを逃した気がしたが言わなくてはならないような気がして、言った。
何処かで見たような色の瞳がまっすぐに此方を向く。浮かんでいるのは笑みだ。そして、俺の言葉には答えず周りに話す様にくるくると俺とクリスの周りを回った。
「この人たちはね、僕らの兄さんと姉さんだ」
楽しそうに、言う。それがあまりにも不釣合いで、なんだか怖かった。
「でもね」
足がぴたりと止まる。
クリスに今だ襟首をもたれたままの俺に、人のことは言えないが、不思議な形をした剣…ウータイの方にある刀に形状が近いのかもしれない…が、突きつけられた。
それは、俺にのみ殺意のこもった視線を投げた。
「残念だけど、兄さんは裏切り者なんだよ。ねぇ兄さん」
兄さん、なんて。言われている意味が分からない。
「僕らの大事な姉さん、返してよ。姉さん、一緒に行こう?」
クリスは首をかしげた。長くて、後ろで1つに結ばれた髪が、引っぱられて落ちた。
目の前の3人組と、良く似た銀の色。
そして、かつてのあの人と似た、あの銀。
「ねぇ、誰? 俺はさ、クリスって名前があるんだけど」
今ココで聞くには何かおかしいようにも聞こえた。
でも、クリスは真面目に聞いているらしかった。
「姉さんって言われても俺は男だし、だいたいどこからそれが来てるのか分からないし」
羅列するように指を折っていく姿を、銀髪は面白そうに見て、俺は呆れてみていた。
その性格は誰に似たのだろうか。
「僕はね、カダージュって言うんだ。後ろの髪が長い方はヤズーで、短い方がロッズ」
「ふぅん。じゃぁ、カダージュ」
頷いてクリスが名前を呼んだとき、カダージュと名乗った銀髪の少年は本当に嬉しそうな顔をした。
「何、姉さんっ」
少し、少しだけ、かつての屈託のない笑みを浮かべる人を思い浮かべた。
邪気のない笑顔だったから。
「出来れば、…ううん。絶対だった。子供たち、返してくれないかな? そんなに星痕の子ばっかり集めてどうするつもり?」
クリスの声は非常に静かだった。こんなに静かでいいのか、と思ってしまうくらいに。
「母さんに会いに。母さんに会うために、兄弟で力をあわせるんだ」
そうしないと、母さんに会えないから…。
続けられた言葉は弱弱しく、そして、悲しみを帯びていた。
「兄弟…ね」
クリスがつぶやくのと、カダージュに隙が出来るのは同時だった。少し反れた刀をにらんだまま転がり、剣を握って立ち上がる。
「クラウド!」
マリンの声がした。考え込むような表情をしていたクリスが、一瞬遅れて俺を見る。
「クリスはマリンを!」
「でも、それで大丈夫なのか、クラウド」
聞き返された言葉に頷いて、カダージュにタックルをかますが、そのときすでにクリスはマリンの許にいた。
「…さすがはタークス、って事か」
ある意味ルーファウスはこれをも見越していたのかもしれない。
襲われる側と、切望される側。
周囲は混乱したように騒然となったが、その中で、やけに銀色の髪だけが目立った。これだけ狭い範囲の中に4人もいれば仕方がない事なのかもしれないが、だからこそ。
だからこそ、混乱の中で、真っ直ぐに向かってくるヤズーとロッズの姿がよく分かった。
頬が切れた。
きっと薄い紅い色が頬に1本の線となって付いているはず。
頬を拭った。グローブが少し紅で濡れたが気にしなかった。
繰り出される銃撃をかわし、懐へ入ろうとした時、躊躇した。
「…デンゼル!?」
目に光がない。操られているのか、正気じゃないのか。
ともかく、躊躇したからだった。
「クラウドっ!」
クリスの声のほうが僅かに早かった。カダージュの笑みが見えて、強い力で吹き飛ばされる。
「…っ」
ちょっと軽くなった気がした。
それから先は、早すぎてよく分からなかった。
近付くカダージュと、紅い色。
そして一拍遅れて、カダージュの悲鳴に似た声を聞いただけだった。
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