悠久の丘で
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懐かしい人との会話

ライフストリーム
それは星を巡る命の流れ
星と、星に生きる全ての命の源です

神羅カンパニーは、ライフストリームを資源として使う方法を見つけました

そのおかげで、私達の生活はとても豊かになりました
でも、それは、星の命を削ること
そう考える人も大勢いました

神羅は、自分達に反対する人を力で抑えようとしました

神羅には、ソルジャーという、特別な兵士達がいました
大昔に空から降ってきて、この星を滅ぼそうとした災厄、ジェノバの細胞を埋め込んだ人たちです

その中にセフィロスという、とても優秀なソルジャーがいました
でも、自分が恐ろしい実験で生まれたことを知って、神羅を憎むようになりました
そしていつしか、全てを憎むようになってしまいました

神羅と神羅に反対する人たち
憎しみのあまり、星を破壊してしまおうとするセフィロス
セフィロスを止めようとする人たち
いくつもの戦いがありました

戦いの数だけ悲しみがありました
私が大好きだった人も、ライフストリームになってしまいました


そしてあの日
運命の日
全ての戦いを終わらせたのは、星自身の力でした
星はライフストリームを武器として使いました
地上に噴出したライフストリームは、争い、野望、悲しみ、全てを飲み込んでしまいました

悲しみとひきかえに、全部終わったんだよ。
そう言われたのは2年前でした




街がようやく活気を取り戻し、世界が受けた傷がようやく癒え始めた頃。
その頃の、お話です。


  *


あぁ、もう夕焼けが見える時間か。
目を開けたとき、何よりも先にそう、愕然と思った。
そして首を横にすればティファの姿。
それを確認してから自分の体を起こす。

何があったのか。
どうして自分がここに居るんだ?

あまり記憶が正常に戻らない。
必死に思い出していたら、後ろのほうで動いた気配があって振り向いた。
「調子はどう?」
「…重かったぞ、と」
気配は3つ。
そのうち1つはさっきまで一緒に居たから、何故ココにいるのかが分かった。
でも、残りの2つは…
「どうしてあんたがここに居るんだ?」
「うっわぁー、いくらなんでも傷つくんだぞ、と」
「…どうして」
「…何にも覚えてないのかな、クラウド君は。倒れたお前をここまで運んでやったんだぞ、と」
感謝しろよな、と言外に匂わせ紅い髪がはねた。
「倒れた…?そうだ、確か教会で…」
「そ、俺が目ぇ離してる隙に倒れて、しょうがないからレノとルードに電話して運んでもらったんだ。ここにいる理由はそれでOK?」
レノとルードが1歩前へと出た。
しかしクリスは動かない。そのまま壁に凭れ掛かったままで腕を組んで笑っている。
何故か、それが少し、引っかかった。

「……あんた、子供たちと一緒に住んでたよな」

何を言われたのか、一瞬分からなかった。
そしてそれがデンゼルとマリンを示している事にようやく気付き、頷く。
それを確認してから、レノが肩をすくめた。
「空っぽだ」
「いいのか?」

それは…、何のための確認なんだろう。
急な話の展開に頭が着いていかず、舌がもつれる。

「俺は…」
「クラウドは、どうしたいんだ?」
言葉が出てこない俺に、クリスが近寄ってベッドの上に腰を下ろし聞く。
それを見て、レノが文句を言いたそうに唇を尖らせたのが見えたが、隣にいたルードに口を押さえられた。
制服である、クリスのスーツの袖口から白いものがチラリと覗いた。
くるくると丁寧に巻かれている。
「…クリス、それ、どうした?」
「ん、どれ?」
「その…、包帯」
確かに俺が気を失って倒れる前までにはしていなかったはずなのだけど。
そう言われるとクリスは照れ隠しのようにはにかんで、その袖口を隠すように腕をずらした。
「ううん、何でもねぇよ。ただちょこーっと怪我しただけ。この包帯はレノが巻いてくれたから大袈裟なだけなんだ」
またしても後ろで文句を言いたそうな顔をして暴れかけているレノを、ルードが必死に止めた。
その音を聞いて、クリスが呆れたようにレノと視線を合わせる。
「レノ…、ルードが可愛そうだろう?大人しくしてなさい」
「…だって、納得いかないぞ、っと!」
「俺は納得いくから」
「だって…!」
「だっても何もないでしょう?ルードが可愛そうだし、仮にも先輩が後輩を困らせるのか?」
仮にも、の所がやけに声が強かった。
その会話を聞いて思い出す。

この目の前に居る人は、確かに自分と入社した歳が一緒なのだ。
…という事はすでに8年越しの同僚になるわけだ、3人とも。
なるほど。どおりで、クリスはレノの扱いが上手いわけだ。それだけ一緒なら嫌でも実体験で覚えていくだろう。

「…うぐっ」
ビクッと、何かに怯えるようにルードにしがみついて、レノが大人しくなった。
何かに耐えるように、手の握りこぶしがフルフルと震えている。

「よし、さぁこれで大人しくなったから話してよ、クラウド。クラウドが、本当にどうしたいのか」
後ろで恨めしそうにこちらを見ているレノのことをすっかり無視するように、クリスがいっそ爽やかに笑って言った。
その笑顔に促されて、やや重く口を開く。

「俺は…、自分でどうしたいのかわからないんだ。あ、いや…」

どうしたいのか分からないわけではない。
どうしたいのかは痛いくらいに分かっている。
だけど。
どうしても…

「どうすれば良いのか分からないんだ」
「どうすれば…って事は、やりたい事はわかってるんだ?」

クリスの言葉に頷く。
だって、十中八九マリンとデンゼルが攫われたのには、襲い掛かってきた男たちが絡んでいるはず。

俺を兄さんと呼び…、クリスを姉さんと呼んだ。

実際に教会に来て、ティファを攻撃し、マリンとマテリアの箱を持って行った様だし、狙いは俺と見て良いだろう。
…あの2人の、クリスを見る瞳は子供が親に向けるそれと似通ったものがあった。
無条件に注がれる、愛のような感情。
だからこそ、弾が顔にかすってあんなに驚いた、あわてた表情を浮かべたんだ。

人を傷つけたからではない。

それなら銃を撃ってこないだろうし、何より、武器を持たなければいい。
クリスには分からない、何かの情が、あの男たちの中にはあるというわけだ。

「…そっか、じゃぁ簡単じゃんか。レノ、ルード、行こう?」
クリスは柔らかく微笑んで、ベッドから立ち上がり後ろにいた2人を振り返りざまに呼んだ。
「え…!?もう良いのか?」
「うん、だって、クラウドは何をしたいのか分かってるからさ?後はするだけ。
クラウド、俺らは攫われた子供…マリンちゃんって言ったっけ?の方を探すから」
ドアまで歩いていきいぶかしむ2人の背を押して先にドアから出し、振り返って器用にウィンクをした。
「クラウドが納得いくまで考えてろよ?どうせそれもティファが起きるまでだ。留守番よろしく頼む」
「あ…、ちょ…っ」
ちょっと、と伸ばされた手の前でクリスが軽く手を振って見せた。それを最後にドアが小さな音を立ててしまる。

考える時間が、強引に与えられた。


  *


「ちょっとクリス!いくらなんでも強引だぞ、っと!」
レノが憤慨したように声を荒げて、ドアが閉まってから急に振り向いて肩をつかまれた。
「はいはい、ゴメンな、レノ」
目の保養になる綺麗な顔と、見た目以上にサラサラな紅い髪が目の前にある。
決して子ども扱いをしているわけじゃないのだがそうなってしまうのは、レノの精神年齢が低いからなのか、俺の精神年齢が想像以上に枯れているのか。
ふと考えて、どっちも嫌だな、と1人で呟いた。
「だいたいその包帯はちっとも大袈裟なんかじゃないんだぞ!」
「あーもう、レノは声が大きいって。クラウドに聞こえちゃうだろ?」
腕を出せ、といわれて袖口をまくった。
心配してくれているのだろうが、あまりの剣幕に怒られているような気にしかならない。
丁寧に巻かれた包帯を端から解いていき、レノの方へと腕を差し出す。

腕には、細かい裂傷がいくつも現れて、色の白い肌を埋め尽くしていた。

「だってさー?レノもルードもすぐ来てくれるじゃんか。
だから、ちょっとくらい無理しても大丈夫かなー、なんて思ったわけ。
確かにあれより来るのが少しでも遅かったらやばかったかも知れないけどさ」
もう過ぎちまった事だし、良いじゃん。
ケアルの、柔らかく暖かい緑の光があたりに満ちて、怪我がだんだん…少しずつではあるが…裂けた肌が塞がっていく。
「まさかここまで自分を大事にしないなんて思わなかったぞ、と!
俺たちが来なかったらどっちが瀕死か分からなかったんだ、分かってるのか?」
レノの声が僅かにではあったが、震えていた。
「だって…」
「……今回ばかりはクリスが悪いな」
口を尖らせ反論しようとしたら後ろからクシャリと髪を撫でられた。
腕を動かさず見上げるようにしてみれば、ルードの目がサングラス越しに見えた。
「ルードまで。…分かったよ、心配かけてごめんなさい」
ちぇーと、諦めたように言う。
が、本当は分かっていた。


自分の体から、力が抜けていくのを。
マテリアに力を注ぎすぎたせいで、自分の体が悲鳴を上げていた事も。


それでも、クラウドとティファがせめて普通の状態になるまで、力を注ぎ続けた。
そうでもしなければ、もう目を開けてくれないのではないかと、不安だったのだ。
そして、ようやく頬に赤みがさし呼吸も普通になったところで、マテリアを使うのを止めた。
その時はすでに景色が景色としてちゃんと見れなくなっていた。
視界がぼんやりとして狭く、何色なのかも分からない。

そして倒れる間際に…、レノの腕に抱きとめられたのだ。



「でもほら、もう絶対にやらないって誓うよ」
自分が生死の境を彷徨ったのは…、モンスターに襲われた12の時だろうか。
冗談ではなく、生と死の間にいきなり立たされた。
鋭い犬歯に身を引き裂かれる想像をして、あの時は一瞬それを黙認したのだ。

この世に1人で残されるなら、一緒にこの地で眠りたいと思った。
冷たくなって、誰も知らないうちに骨になってもいいと思った。

それなのに、生きたいと思わせてくれた人が現れた。
その人が今目の前に居る同僚に逢わせてくれた。
だから、今こうして生きている。

「当たり前だぞ、と」
添えられていた手が離れ、気がついたら包帯が綺麗に巻かれていた。
「あれ、包帯まだ必要か?」
「クラウドに知られたくないんだろ?まだ少し残ってるぞ、と」
「…なるほど、それはいけないな」
クリスは大人しく袖口を下ろし、スーツを軽く整えた。

「よーし、じゃぁマリンちゃんを探しに行こうか」


  *


「え…?」
探しに行こうと言ってはみたものの、どこから探せばいいのか分からなかったため、電話した。
『だから…、星痕の子供たちがだんだん居なくなっているらしい。ウータイでは子供の失踪が問題になっている。
ウータイに…ほら2年前に忍者娘が居ただろう』
「…クラウドと一緒に居た?ユフィのことか?」
『あぁ、そんな名前だったか?その娘もクラウドのところに情報提供を求めたようだ』
「ふぅーん…」
電話はルーファウスに直接つながっている。
表立って動けない割りに、ずいぶん最新の情報を持ってるな、と思ったら、後ろから聞き覚えのある声がした。
『…で、近日ではエッジで子供が居なくなっています』
「あれ…?」
『…だ、そうだ。聞こえたな?』
「聞こえたけど、…それ、リーブさんか?」
『昼頃エッジでも子供を沢山連れて行った若い男がみられています…が、社長?聞いていますか?』
『ああ聞こえている。分かったな、クリス』
「分かったな…って、それリーブさんだろ!?リーブさんに代わって…!」
「クリス、そんなことしてる場合じゃないんだぞ、と」
「あぁ…!ちょっとレノ!」
ひょいっと、手に握り締めていた携帯を奪われた。
そして、ルーファウスに何言か言った後、そのまま電源ボタンを押された。
「…レノぉ!どうして切っちゃうんだよー!」
せっかくのリーブさんの電話…!とレノのほうを向いて講義すれば、頬を膨らませて答えられる。
「久しぶりだろうがなんだろうが今は関係ないじゃんか。子供を捜すほうが先なんだろ?、と。クラウドにそう、言ったじゃないか」
「だって…、リーブさん…」
「……で、分かったのか?」
ずっとそんなやり取りをみて、黙っていたルードが口を開いた。
すっかり父親のような位置に定着しつつある。
あぁ!と手を打つ。
「何か最近はエッジで子供が居なくなってるらしい。エッジ行った方が早いと思うんだけど…」
「なら、行くぞ」
「うん、わかった…っと、はい、クリスです」
返事をしたときに携帯が鳴った。ルードに軽く手を上げて出る。
『クリスですか?リーブですが』
「リーブさん!?わぁー、リーブさんだぁ!」
『お久しぶりです』
「うん、本当に久しぶり!」
『…で、社長から聞いたんですが、今クラウドさんと一緒に居るんですか?』
「あぁ…、今はクラウドはお留守番してる。ティファが誰かにやられたみたいで寝てるからさ」
『ティファさんが…、そうですか。クリス、本日エッジで星痕の子供だけ連れて行った腰ほどまである銀髪の男が目撃されています。
…その中に、デンゼル君もいたようなんですよ』
「デンゼル…て、マリンちゃんと一緒に居た星痕の子だっけか?」
『ええ』
「それに、腰ぐらいまでの銀髪の男…?俺、知ってるかもしれない」
『それで続報です』
リーブさんが言葉を切った。
『その男と子供たちはある場所に行ったようです』
「ある場所…?」
『はい、彼らのアジトだと思われる、という意見で一致しました』
「…ありがとうな、リーブさん」
『いえ、それで場所というのが…』
電話の向こうで息を落ち着かせるように、1度大きく息をついたのはわかった。覚悟を決めたように、息が止まる。
『忘らるる都、だそうです』

忘らるる都…。

出来すぎたシナリオに吐き気がしかけた。
そう言えば、あの銀髪の男たちはどことなく彼に似ていたじゃないか。

母さん、と。
呼んでいた理由が分かったような気がした。


  *


「…ズルズルズルズル」
「…?」
外はもうすっかり日が落ちて暗い。
高い、女の人の声が聞こえて、起きたんだ、と思った。
「ズルズルズルズル!」
「いつまで引きずってるんだ、と」
レノが静かにドアを開けてティファの言葉に続けた。
クラウドとティファの驚いたような視線がこちらを向く。
「見つからないの?」
反応が早かったのはティファだった。
クラウドは視線が僅かに泳ぐ。
「いや…」
「クラウド、聞いて後悔しないか?」
レノの躊躇いがちな言葉の後をクリスが続けた。

それを聞くということは。
つまり、後悔するのなら聞くな、ということか。

「…後悔などない」
「じゃぁ考えは纏まったってことか。じゃぁレノ、よろしく」
クリスが一歩下がった。
逆にレノが一歩進む。
「奴らが連れて行った。目撃者がいたぞ、と」
「行先は?」
ルードが大きく息を吸って、止めた。



「忘らるる都。奴らのアジトだ」



後悔しないといったが。
聞いて少し、後悔した。

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