悠久の丘で
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Rejection

 実は、世界最凶のように思われるクリスにも苦手なものがございまして。
 それは、神田ユウの苦手なものと合致しておりました…。


  *


「…コムイ!!」
 バンッ、と荒々しくドアが開けられた。僕はドアが壊れるんじゃないかと思った。
「…これはこれは…」
 徹夜明けで眠い目を擦りつつ、リーバー君に入れてもらったコーヒーをすする。
「どうしたのかな? クリスも…神田君も」
「どうしたもこうしたも、ないッ!」
 いつも、割と、温厚なクリスまで額に青筋浮いてる。神田君は割りといつもの事だけど、抜刀なんかしちゃってる。

 うわァ、危ないなぁ。

「はいはい、2人とも。リーバー君が怯えちゃってるでしょう。どうしたのか言ってみなさいな」
 コーヒーのカフェインが胃を破壊してそうだ。
 チラリと2人に視線を移すが、神田君は唇を噛み、クリスは泣きそうに目元に涙を浮かばせる。
 神田君に至ってはクリスの涙を見てから益々機嫌が悪い。
 溜息をついた。
「…アイツが来た」
「アイツ?」
 名前は教えてくれない。ただそれだけ言うとクリスは涙をこぼした。
 その背をそっと神田君が抱く。

 あの小さかった仔猫もいい具合に育ったものだ。こればっかりは、クロス元帥に礼を言うしかあるまい。
 たった1人、教団からリナリーを護ってくれた”幼獣”を、僕は未だに尊敬している。

「ほら、言わなくちゃわからないよ? 僕にどうして欲しいんだい?」
 もう長くなった彼の銀の髪に指を入れる。さらさらして、手触りが良くて、癖がないからすぐに手は抜けてしまう。
 近くにいたリーバー君が咳き込んだ。
「…ッ、ごほっ…、室長あんたなに言ってるんですか…」
「え? 変な事いったかなぁ? 僕」
「…あー、もう良いですよ。クリス、喰われないようにな」
「…喰われる?」
「そう。男なんて所詮紳士の皮を被ったオオカミなんだから、クリスは気をつけるんだぞー?」
 リーバー君までクリスの頭をなでて、はたから見ればクリスは間違いなく襲われていた。
「んー…、まぁ、イノセンス保持者な俺だって知ってながら手ェ出そうとする奴も珍しいけどな」

「珍しい?」

 珍しい事に神田君が反応した。
「あれか、モヤシか? それともクソ兎か?」
「…いやァー、なんでその2人しか出てこないのかなァ、ユウ」
「1番疑わしいからだ」
「…その通り、アレンとかラビだけなら何とかなるんだけどなー…?」
 決して否定はしないクリス。その事実がなんとなく、怖い。
「じゃ、なくて! 今はそんなことより当面の問題だ!」
 神妙な顔、というよりは哀れみを含んだ顔で見ていたら、急に本題を思い出したらしい。

 まァ、エクソシストとは言え、まだ10代の青年たちだからねェ、なんて考える。
 きっと、禁欲的なこの教団じゃぁ、すごしにくいだろう。
 何せ、男どうしてイタシてしまうくらいだ。

 確かにクリスは大抵任務にいっていないときには薄着だ。
 体のラインは綺麗に出ているし、何より、幼少時代から開発されたカラダで、嫌でも目を引く。
 細くしなやかな指も、薄く紅色の唇も、澄んだルビーも。
 無意識のうちに抱き寄せて上を向かせて唇を奪ってやりたくなる。

「俺、アイツが苦手なんだ! …つか、苦手って言うより嫌いな部類だし…」
「アイツ、アイツって誰の事だい? さっきから」
 そわそわしているクリスを此処で犯したらどうだろう。
 睡眠不足のせいか、頭に浮かぶのは何故かそんなことばかりだ。
「…ティエドール元帥」
 神田君がようやく口を開いた。やましい事を考えていたのがばれたのか、僕の手だけ叩かれた。

「…っ、あぁ、なるほど」

 ようやく納得して、ポン、と手を打った。


  *


 なんでもそれは、まだクロス元帥がクリスと一緒にいた頃の話であったそうな。

「あっれー? 久しぶりーん☆」
 最初から変な人ではあったらしい。
「…おいクリス、行くぞ」
「…え? 良いのか、クロスのこと、知ってるみたいだけど」
「俺はあいつなど知らん」
 クロス元帥がいやそうな顔をして即答する程度には。
「もう、クロスってば酷いね」
 そして、クロス元帥は手首をガシッと捕まれたそうだ。
「…ティエドール」
「見て見て、僕の弟子の神田クン。可愛いでしょー」
 そして相手の話なんざ、全く聞いていなかったらしい。
「あれ、そっちの子も可愛い。クロス、君、お稚児趣味でもあったの?」
 その言葉を聞いて、びしっと固まったクロス元帥の返事を、ニコニコして待っていたのだというからすごい。
 そして、いきなり人に向かってそんな事いえたこともすごい。
「なァ、クロス」
 そして、ある意味では『言霊』の使い手であるクリスが聞かないわけもなかった。

「お稚児って、なんだ?」


  稚児
   男色の相手となる少年。


 人でなしと噂高いクロス元帥でも、この時ばかりは答えられなかったそうだ。
 何せ当時クリスは10歳程度。
 十分『稚児』の素質もあるというか、開発途中だったわけで、クロス元帥にはいえるわけがなかったのである。

 ようやく体力がついてきて、1日に2発ほどは出来るようになって来た頃。
 ようやく、前に触れないで後ろだけでイけるようになったくらい。

 そしてようやく。

 クリスが自ら動いてイくことを覚えたくらい。


「…ティエドール、クリスに変な事を吹き込まないで貰おうか」
「わっ…、クロス!?」
 急に両の耳をふさがれて、クリスはクロスを見上げる。


 誘い方だって、無意識だけど上手くなってきたんだ。


「…ふぅーん」
「分かったな」
「まぁ、いいや。ねぇその子」
 クロス元帥も大変だった事だろう。
「僕の絵のモデルに貸して?」
 全然話を聞くような人じゃ、ない。


  *

「奴が来る――っ!」
 あぁ、そりゃぁ確かにお気の毒に。
「と、言うわけで即刻俺とユウを奴から隠して!」
「うわぁ、無茶言ったねェ」
「いや、無理ならユウだけでも良いんだ」
 クリスの瞳が真剣だ。冷や汗が出てくるくらい真っ直ぐで、はねつけられない。
「隠して、つか隠せ」
「命令形だねェ」
「おうよ、命令形。『言霊』使ってないだけマシじゃね?」
 うわァ、本当に卑怯だよねェ、クリスは。
「…ったく、本当にクリスは昔から…」
「昔から?」
 リーバー君と視線を合わせた。あちらはやけに優しい目つきで見ている。
 そして、肩をすくめた。

 全く、そんな風に笑われたら、言う事聞いてあげたくなっちゃうでしょ。

「OK、クリスも神田君も匿ってあげましょ」
「あーあ、室長、ちゃんと仕事してくださいよ?」
「あっ、後で俺、科学班のお手伝いしてあげる! どうせ溜まってる化学式とかあるんだろ?」
「マジか、クリス」
 リーバー君の顔がほころんだ。きっと徹夜がたたってるんだろう。
「クリスは計算速いからな…」
「全部クロスが教えてくれたんだー」
 そう言って、エヘヘ、と笑った。

 あぁ、可愛い。
 よく、クロス元帥と一緒にいたのに、こんなに真っ直ぐ育ったって思うよ。

「うん、やっぱ化学式直していってくれ。どうしても詰まる所があるんだ」
「リョウカイ」
 ひょい、とリーバー君が差し出した紙の中を覗き込んで少し字を目で追っていたクリスだったが、あ、と声を洩らした。
「リーバー、ここ違う。ここはこっち」
 手を差し出されたから、その上にペンを乗せる。クリスはそれを確認すると紙の上を滑らせていった。
「ここが…、こうなるからって言えば分かる?」
「…あぁ、なるほど。サンキュー、クリス」
「いえいえ、俺で分かる事ならいくらでも、ね」

 クリスが微笑んだとき。
  ドアが開いた。


「やっほー、久しぶり☆ じゃぁ、僕はこの2人借りていくからねー」
 伸びた腕が、ガシッと2人の襟首を掴んだ。
 そして引きずっていく。
「ぎゃぁ―――!!! 離せッ!」
「災厄招来 界…」
「もう、いけない子だねェ」
 引きずられて、もう姿は見えない。なのに、悲鳴だけが聞こえる。


 その声を聞きながら、真剣に呟いてしまった。

「…元帥って、まともな人はなれないのかなァ?」

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