悠久の丘で
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16「強く望む事」

強く望む事。
あぁ、いつだって必死に笑っているあの子の顔が、悲しみで埋まりませんように。
またいつかのように、手もつけられず目も当てられないような状態になんて、戻りませんように。


  *


「…なんか、こうしていると自分の年を痛感しますねー」
漠然と叶わぬ事を求める事をやめ、思考が枯れてくる。
年若く将来に光が満ちた者を、微笑みながら見守るようになってきた。
自分が星を守るものとして、戦いに最終的に参加したのはもう、ずいぶん前のコトになる。

リーブは、部屋で綺麗に並べるようにしておいてあるケット・シーを見て笑った。

それを思い出すと懐かしくて、居た堪れなくて、そして…誇らしい気持ちになる。


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会社を裏切るような形になったものの、それでもこの会社の中で笑いかけてくれた子が、いた。

全部を知っていたんだろう。

彼の上司に情報を流していたのは紛れも無い私自身で。
彼自身、私とも仲が良かったのだから。

きっと、分かっていて。
行かせてくれたんだろう。


『リーブさん、俺はさ』
星との最終段階に入った戦いの前に、彼は笑っていた。
愛用なのだという武器を肩に当て、彼の先輩タークスのように口角を上げて笑って。
数の足りないケット・シーを見ても何も言わず、何かを納得したようにただ小さく楽しそうに「ふぅーん」と言っただけで、私に笑いかけた。


会社にやましい気持ちがある、というのは嘘ではなかった。
だが、潜入捜査としてであった青年たちと星を救いたい、と思ったのは本当だった。
最初はどうしても不思議で仕方なかった。
誰から褒められ感謝されるわけでもない。
給料が出るわけでもない。
しなくていい怪我まで負って、何がそれほどまでに彼らを突き動かすのかと。

それを悟った時、私は会社を捨てる決心がついたように思う。

ただ彼らが。
亡き彼らの仲間と共に。
…最初はどうであれ。


それは憎しみのためではなく
それは悲しみのためでもなく
それは自分が生を受けた恩返しのように
それは仲間の最後の願いのために


ただ、星に生きる事を望んだ。



『クラウドとか、結構好きなんだ』
考え方も、この星を守りたいって言う、気持ちも。
自分がここに居場所を持っていなかったら、参加してたかもな。
…って、ルーファウスには内緒にしておいてくれよな。と彼は人差し指を唇に軽く触れさせてウィンクして見せた。
『だから、俺は俺にできないことをしよとするリーブさんを、応援してるよ。例え…話の流れ上、逆の立場にいたってずっと』


どうしても忘れられなかった。
そう言って、笑う彼の顔が。


  *


「リーブさん、いるか?」
「…あ、クリス。すいませんね、遅くて」
「いや…ぜんぜんそんな事は良いんだけど」
軽いノック音に次いでドアが小さな音を立てて開き、外から銀髪が覗いた。
「それは良いんだけど…って、ケット・シーだぁー!リーブさん、これで全員か?」
何かを言いかけたが、その声は楽しそうな声に飲み込まれた。
思わず笑う。

あぁ、良かった。彼が笑っていられる世界にはなっているようだ。

「いえ、ここにいるのは残っているのだけですよ。もう…ずいぶんと少なくなってしまいましたけどね」
外に出て活動できない私に代わって、その作業をしてくれている、子達。
改良を加えているものの、それでも無残な姿になってしまう事も少なくない。
「皆私のために殺されてしまっているんですよね…」
手近にいたケット・シーを1匹撫でてしみじみという。

「そんな事無いだろ。リーブさんだってケット・シーだって全力を尽くしてるんだからさ」
そんな言い方は違うと…思う。

一瞬面食らった。10も歳の離れた者に、そんな事を言われるなんて。

「…って、言っても偉そうだけどさ。でも、俺がケット・シーでもリーブさんほど手厚く弔ってくれる人なんかいねぇよ」
拗ねるように、ケット・シーの1匹を抱いて言う。
「だって、言ってたじゃないか」

「『ボクの代わりはぎょーさんおるけど、ボクはボクだけなんや。それ、忘れんといてな』」

懐かしくて、でも恥ずかしい過去を見せられたように狼狽した。
「…な、なんでそんな事、クリスが知ってるんですか!?」
「クラウドとかから聞いたー」
ケット・シーの柔らかな毛皮に埋もれる。
「これ、本心だろ?」

笑いかけてくる微笑は、変わらなかった。

ああ。
私の願いは叶ってくれそうですね。良かった。

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