悠久の丘で
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01「ここに居るよ」

肉を裂き血が溢れ骨が拉げる音がする。
火を用いれば肉の焼ける匂い、髪の焦げる嫌な臭気。

手にした愛器から直で伝わる命を奪う感触が、どうしようにも一人で任務に出ると気になってしょうがない。
軽口を叩きあいながらお互いの背を守り任務をこなすというのなら、わざわざ嫌な方に思考が行くことも無い。
…だが、一人だと目に入ってくる情報に精神が揺るがされる。

一人というのは考え事をするのには向いているが、それでも大抵頭を占めるのは、今しがた奪った命のことだ。


それが大事にしていたもの。
それの帰る場所。
それを待つ人。


神羅に仇なすものとはいえ、それにも命があって動いていて、自分が来るその一瞬前まで考え思い、行動していたモノ。
会社の命令だとはいえ、それを奪い殺し、なくす自分。

そんな自分が…


誰かの傍に居たい等と。
誰かの傍で支えになりたい等と。
誰かを愛し、救われたいのだと。


思うこと自体が罪のようで、嫌になる。
鼻に付くむせ返るような命の匂いの中で、大声をあげて泣けたなら許されるのか。
何をすれば、この魂に付いた死の匂いは消える?



どうすれば、大事なあのヒトの隣で笑っていても許されるんだ?




「…っち、だから独りは嫌なんだぞ、と」
ロッドにこびり付いた肉と血を一振りして払い落とし、脂を布で丁寧にふき取る。
ガシガシッと乱暴に頭を掻き、頭に広がる嫌な思考を振り払うように頭を振った。
「どうしようもない小さなことが…どうしても大きくなる」
嫌でも頭から離れなくなって、不愉快になる。

すでに何年もこうして自分は生きてきたというのに。
いまさらその生き方に悩むなど…、意味が無い。

意味が無いというのに…それでも考えてしまうというのは。


「あいつのせいかな、と」


守りたいヒトが出来た。
この腕で抱きしめたいヒトが。
どうしようもなく愛しい、ヒトが。

ずっと闇しかなかった俺の心に、光が入り込んできた。
いくら汚そうとも汚せない、生まれ付いての強い、光。


それが、俺を…

「あ、レノ!」
通路を右に折れたら、見知った顔に出くわした。
見知っていて、大事で、いくら抱きしめても、足りない。
「もう、そっちは終わったのか?」
「あたりまえだぞ、と。そっちは?」
「もっちろん、終わったぜ」
あたりをキョロキョロと見渡して、聞く。
それに口角を上げて、内心安堵して、返した。
相手の服に飛んだ返り血のほかには、特に出血したところも見れずその頭を少し乱暴に撫でた。

「…なんだよ、どうかしたのか?」
「どうもしないぞ、と。…ぁ、いや」

最初は否定した。そのまま否定したままでいようと思った。
それでも…、口をついで言葉が出てきてしまったのは…

どれだけ強がって見せても、不安だったからかもしれない。

「どうした、言ってみ?」
「……………………………俺は、今ココにいるか?」

今ココに。
お前の隣りに俺はちゃんと居るのか?
先ほどの不安が胸をよぎってどうしようもなくなって。

「はぁ?何言ってるんだよ、レノ。
俺の隣りに今こうして立ってて意地悪そうな微笑が似合うのはあんたくらいだって」
やっぱ、どこか具合でも悪いのか?

首を振った。
「顔、緩んでるのは知ってる?」
あぁ、知ってるぞ、と。
「…早く帰るぞ。そしたらレノのおごりで飯食いに行こう!」
「…なんで俺の奢りなんだよ」
先に進む後輩の背を表面だけ不機嫌そうに見せて問う。

「何でって…」

先を行く後輩の足が止まった。くるり、と振り返って笑われる。

「何でか良くわかんねぇけど、レノが元気になったっぽいから、かな」
さっきまで、こーんな捨てられかけた犬の目、してたぞ。
両方の目端に指を当て、垂れさせて笑う。

「俺の居場所はレノの隣り、だろ?だったら、お前だってここに居るだろうが」
ココ、と自分の居るその位置を指差して。


ほっとした。
安心した。
思わず目頭が熱くなった。

「…っち、今日だけだぞ、と」

後輩を追って足早に進み、隣りに並ぶ。
いつだって、ここが居て良い場所なんだと覚えさせるように、ゆっくりと後輩の隣りを歩いた。

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