悠久の丘で
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224 それは嘘だと百も承知で君を信じるよ
夜、寝静まった頃に出掛ける彼の横顔は今までに見たことがないくらいに厳しいもので、恐らくは寝ていると安心して行きたかったのだろうけど声をかけた。
「…カク?」
振り返ったときの顔はすでにいつもの顔。
それを作る事になれているような一面に、どうしてもいずれ来る別れに身がすくむ。
「どうした、クリス」
だけれども頭を撫でてくれる手は優しい。
それとも、優しいと勘違いしているだけなのだろうか。
この人には人にはとうてい背負いきれない闇が付きまとっている。
気付いたのはどれくらいの頃だったか。
きっと、パウリーは気付いていない。隣で暖かい体温と共に手を握って寝ている彼に視線を落とす。
「…ううん、なんでもない。カク、外に行くんだったら気をつけてね」
ソレを知っていた所で、俺には彼を止める権利なんてない。
それが悔しくて唇をかんだ。
「…それで、なんでもない、と言えるか? 泣きそうじゃ」
「泣きそうなんかじゃない…」
目尻を拭うカクの手が暖かい。
ずっと、ここにいてくれれば良いのに、と暖かい体温に頼ってしまう。
「ねェ、カク」
「なんじゃ?」
優しい声色が耳を打つ。
「ずっと…、一緒にいてくれるよね」
「…あァ、勿論じゃ」
どれだけ返ってきた声がぎこちなくても、どれだけ返ってきた声が嘘の臭いを発していても、俺は信じた。
それを嘘だと知りながら、だけれどもその言葉にすがるように、その言葉を信じた。
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