悠久の丘で
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198 だって、白ヤギさんへのラブレターは届かないでしょう?

「なぁ」
「なんだ?」
 ちょっと暇だった。
 任務がないわけじゃない。もうちょっとしたらコイツと出発だ。
 その前に煙草の1本でも吹かして、空を見上げた。
 神羅ビルの上からでは、恐ろしいくらいに広い青空がプレートの下と違って広がる。
 ふぅ、と息を吐き出せば、白い有害物質の混ざった煙が一緒に吐き出される。
 青灰色の髪の後輩はそれにも嫌な顔1つしないで振り返った。

「お前ー、告白とか、しないのか」

 見てれば分かる。
 見ないだって分かる。

「…誰に?」
 息を短く吸った。


「小さな小さなお姫様にだぞ、っと」


 見ないだって分かる。
 その理由は好敵手だからだ。
 なんとも陳腐で、なんとも薄っぺたくて、でも見てると暖かくなる。

「あそこで細々走り回ってるお姫サマ」

 視力はいい。決して悪くない。
 見覚えのある、背の中辺りまでの光に反射する銀の髪と、その隣には赤いスカーフ。
 後輩もつられる様にしてそちらを見た。
 のどの奥で笑みが込み上げてきた。

「俺は」
 後輩の目が細まって、不器用に口許を歪めて笑った。
「届かないものをわざわざ出す勇気なんてないんだ」
 
 首をかしげた。その先で、今度は綺麗に口の端を吊り上げた。

「だって、運ばれた手紙は喰われちまうんだろう?」

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