悠久の丘で
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168 「あなたなんか大嫌い」「無理をしなくてもいいんだよ」

 彼だけはおそらく来てくれるだろう、なんて淡い思いを抱いて。
 そして本当に来たら彼を失うのが怖くて傷つける。

「クリス、お前なんか嫌いじゃ」

 本当に彼だけはきっとこの間の5年間の平穏を知っていて、その前の、その後の喧騒すらも知っていて。
 それでも泣きそうな顔で逢いにきてくれるこいつが、愛おしい。
「何で来た、見逃してやろうと思ったのに」
「…カク、嘘なんか」
「嘘ではないわい」
 本当に、この5年間、この水の都に来てすぐに拾ったクリスを愛していた。

 でも、もう終わりだ―――…

 彼の好きなアイスバーグを殺そうとして、彼の大好きなパウリーをあそこまで痛めつけて。
 それでこの子に何を言えようか。
「大嫌いじゃ」
「カク」
 名前を呼ばれて頬に触れられた。
 何かを拭うようにクリスの手が触れて、背伸びをしないと届かない身長を少し笑う。

 もう、終わりなのだから。

「泣いてるのに、そんなこと言わないで良いんだよ」


 だから、彼の言葉に声を失った。
「カクがあいつらと何か裏であったのはなんとなく知ってるよ、そのせいでパウリーやアイスバーグを傷つけなきゃいけなかったんだったら、許す」
 真っ直ぐな彼が好きだ。

「だから、無理してそんな事いわないで良い」


 ―――――…もう、逢えなくなるというのに、まだこんなにも愛おしい。

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