悠久の丘で
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06.続・堂々とした不届き者
アイツは何時も問題の真ん中にいる。少しはバレー部に所属してる自覚を持て! と叱った事があるが、アイツは何も直らなかったし、アイツを追いかける教師は段々減っていった。
今では、あぁ、またか、と生暖かい目で見られる。
でも、今日はおかしかった。
あの十七夜月が、大人しく、しかもやや恥じらい気味に歩いている。
*
「…えっと、十七夜月?」
止めろ、止めろと追い掛け回しても一向に止めさせられなかった女装。3年になってまだ1週間も経っていないのに、既に今年も諦めた。
昨日部室で、ぎゃあぎゃあ騒ぎながら旭にセクハラされていやらしいとしか言えない事(本人は、女装の為に真面目にすね毛を剃っているだけだと言い切った)をしていた時点で諦めた。
俺には今年も止められない。
「あ…、大、地」
隣に居るのは旭と西谷。
この辺りは何時もと変わらないが、だからこそ理由がわからない。
「……どうした、お前今日おかしくないか」
今朝の朝練で見た時はこうじゃなかった。上から羽織ったクリーム色のカーディガンも珍しい。
普段から透けようが何しようがあまり上を羽織らないカーディガンを、本人の意志で着ている時点でおかしい。
「はは…、旭が」
「旭?」
きっと視線を向けたら慌てて降参するように手を胸の上まで上げた旭が、十七夜月に何か出来るとは思わない。いつも何かされているのが旭だ。
「ちょっと、十七夜月!」
「お前のせいだろうが、バカ!」
非難するような声とそれを叱る声。
心なしか十七夜月の頬は赤い。
「…それで、何をしたんだ、十七夜月」
「決定か」
「何もしてない訳ないだろうが、お前が」
これで、てへ、と言う十七夜月に胃がきりきりし始める。
えー、じゃぁ誰にも言うなよ、と言う良く分からない前置きをして、やや背をかがめ俺の耳元で吐息混じりにこしょこしょ話す十七夜月の前に、あの西谷が静かで、妙に腰に張り付いている事を考慮すれば良かった。と、思った。
「今俺、ノーパンなの」
今ほど耳が壊れてれば良いと思った事はあまりない。
「―――は?」
「旭が俺のぱんつ取るから下穿いてなくてさ、ンでこの短さだろ?」
もう興奮して勃っちゃいそう。
にこやかに、やや恥じらいを持ちつつ嬉しそうにそんな事を告げられ、即刻旭を殴った俺はみんなから感謝されるべきだと、俺は、思う。
「でな、興奮して勃てたらノヤに淫乱って詰って貰えるご褒美付き! いやー、潔から買い取っといて良かったな、制服」
ノヤにそんな事言われたらイっちゃう、と嬉しそうに頬を染めて宣う。
「もう、チンコすーすーするし、スカート越しにノヤの体温感じるし、早くノヤを食べたい」
呑気に語尾にハートマークを付けて言い切ったコイツも殴りたい。
「十七夜月さん!」
「んー、ノヤ可愛い! 俺の天使!」
そう言って鼻先にキスを落とす。それですら自重している、と分かってしまうコレはなんなのだろう。あくまで此処は学校だし、そんな事はあるまじき行為な訳だが。
「……旭」
「えっ」
必死に十七夜月の裾の短いスカートが捲れるのを阻止する西谷を責めるのは酷と言うもの。そもそも穿いていたぱんつを取られて? お前らは何をしてるんだ。
「俺の言いたい事はわかるな?」
「大…」
「分かるな?」
念を押したらデカい身体を縮ませ旭がこくこく頷く。
「……西谷、そこの猥褻物を離すなよ」
「はいっス!」
「十七夜月」
目をじっと見ようとすればついっと揺らされる。
「…何だよ、大地」
もう1度呼んで、揺らぐ視線を真っ直ぐに見れば少し頬を膨らませた。
「お前はその脚をさっさとしまえ」
「えー」
「文句を言うな」
「でも俺、脚綺麗…!」
訳の分からない主張に、思わず低い声が出てしまう。
「―――…だからだよ」
「わーお、大地熱あるか?」
一瞬きょとんとした後、途端心配するように額に触れてくる十七夜月にイライラする。どうしてお前の貞操なんかを心配してやらなきゃいけないんだ。大体、そんなやらしい恰好して、短いスカート穿くお前が悪い。
「十七夜月」
「おう」
ふざけきった恰好をしているくせに、目だけはこんな時でも俺はお前等のマネージャー様だ、と言い切った真面目なそれ。
憎めない所がまた悔しい。
「それ以上そのやらしい恰好してるなら、監禁して泣くまで犯す」
一際低い声で脅してもコイツには効かない。そんな事知ってる。
なんたってコイツはマネージャー様。
「泣くまで? 鳴くまで、じゃなくて?」
「泣くまで」
十七夜月が泣かないと知っている。
「うわぁ、俺、すげー愛されてんな。大地が一緒にずっと居てくれんだ?」
何せ、素でこの反応。嬉しそうに花でも綻ぶように笑うから、そうなっても良いとすら考えさせられる。
───本当に俺のものになんてならないのに。
「…ま、大地に免じてちゃんとぱんつ穿いてやるよ」
にんまり笑ったしたり顔に、また負けたと思う。
「俺は本気だからな」
少し悔しくてそう、もう1度言っても、慌てる旭と西谷の間で嬉しそうに笑う。
「大地に愛され監禁ルートも美味しい」
だから、待ってる、と。
「……西谷、部活までその変態、離すなよ」
「はいっス!」
「旭は覚えてろ」
「え…!? あ、はい…」
「さっさとそれを着替えさせろ」
「ちぇ。はーい」
*
どうにか去った台地の後姿を見つめる。
久しぶりに冷や汗掻いたのに、十七夜月は涼しい顔。
「…ほーんと、ツメが甘いよなぁ」
だから俺に遊ばれるんだよ、とくすくす笑う十七夜月を呆れた目で見上げる西谷。
「十七夜月さん」
「だーからぁ、俺の事は十七夜月って呼べって」
「十七夜月さん、楽しかったスか?」
「おう、大分」
「……十七夜月、これ、俺にだけ死亡フラグじゃ…」
「何を今更ー」
ぱたぱたとスカートの端を持って仰ぐ。
「ま、その内気付くんじゃね? スガ辺りに指摘されて」
大体なぁ。
ここで豪く楽しそうに笑う十七夜月を可愛いと思うなんて。
ドMだとか、正気の沙汰とは思えないとか。自分が相手でも色々と言ってやりたい。
「いくらなんでも学校だぜ? ノーパンで歩いてる奴が居たら正気じゃねーわ」
「敢えてその設定にしたお前が言う事か」
「俺だから言ってんだろ?」
へらりと笑う十七夜月が恐ろしい。
「まー、大地も俺大好きって事で」
あー、楽しかった。
そう言って西谷の額にキスをする十七夜月を改めて恐ろしいと思った。
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