悠久の丘で
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64 泣きながら耳を塞いだ。叫びながら目を伏せた。

丘の上だ。風が通り過ぎていく、丘。
高いところにあるそこには風当たりが強すぎるのか花なんか咲いちゃいなかった。
ただ、真っ赤な液体が花の代わりに色気のない土気色広がる風景に彩を添える。
声なんかとうに嗄れた。
後ろで、紅い髪の同僚が見たくないものから視線を引き剥がすように、そばに倒れている金色の男の下に跪いた。
息を確かめるように頚動脈に手を添える。
そんな光景が、地面に跪き、硬い地面に爪をたて、はがれかけた爪の間から同じような液体が滲み出てくるのを見たときに、視界の端のほうに映った。
右手はもう痛みなんて感じない。
ちょっと前までは綺麗だな、と言ってくれた整えてあった爪が、爪の間に土がこびりつき、血で固められ、それでも足りないのか血が流れる。
地面に膝をつき、その腿の上に冷たくなった体を抱いて。
左手はその、血色の悪い顔へと添えられる。
「…嘘だろ?なぁ何かの性質の悪い冗談なんだよな…?そうだろ、ザックス」
ガラガラの声が、不器用に、それでも丁寧に顔に影を落とす髪をどけてやる。
腕を通して分かる。
もう、この体は冷たい。
もう動いて、話して、笑いかけてくれることなんてない。
「やだ…」
レノの瞳が辛そうに揺れて、下を向き、唇をかみ締めて握りこぶしを、手から血が滴るまで固く結んだ。
「クリス…、そいつはもう」
「嫌だ!!」
頭は分かっているのに。
それを心が拒否する。
「だっ…て、戻ってくるって言ったじゃないか。嘘なんて、ついた事ないだろってっ、笑ってく、れたじゃんか…。大丈夫だって!」
声を叩きつけるようにして、もう動かない有機物にすがる。
「言ったじゃないか…」
直視できない、直視したくない状況に、レノが立ち上がりクリスをザックスから引き剥がす。
「お前だって分かってるだろうが!もうコイツは死んだんだぞ!!」
「分かるか!!」
振り向いた顔は酷いものだった。
綺麗な銀の髪は涙で顔に張り付き、目は、蒼い青空のような目は真っ赤で目元がはれている。
「笑ってよ…、だめだなって怒ってくれよ…!
ザックス、嫌だ―――――っ!!!!!置いてかないでよっ!俺1人なんてやだ!俺も一緒に連れてって…!!」
腿から崩れるように落ちたザックスに、レノの手を振り払って縋り付き抱きしめる。
手がちゃんと動かない。
震えて、ちゃんと抱きしめられない。

レノの目から初めて1筋の涙が伝った。
泣きながら耳を塞いだ。叫びながら目を伏せた。
泣いているクリスなんて見たくなくて。
壊れてしまったクリスなんて見ているのも辛くて。
こんな惨状から目を引き剥がしたくて。
すべての責任から逃れるように、目を伏せた。

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