悠久の丘で
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41 王子様、どうか私を攫ってください

 そんな歳じゃないことも、相手が王子みたいな性格いい奴でもなかった。
 そんな事、知っていた。

「…おい、クロス」
「何だ、クリス」
 こいつと親友になったのは間違いかもしれない、と、上層部に文句を言われるたびに思う。
「なんでてめェ、服脱がせてんだ」
 そう言ったらクロスは紅い髪の下で意地悪く笑った。
「なんだ、服着たままヤりたいのか?」
 そういう意味じゃない。
 しかも手を止める気配なんかなくて、結局はコートを剥ぎ取ろうとしているこの男の作業を邪魔するしかない。
「クロス!」
「なんだよ、久しぶりだろ」
「てめェの頭沸いてんのか」
「いたって正常だ、安心しろ」
 クロスは器用だ。
 そんなことを、自分のカラダで再確認する事になろうとは。
「お前、女好きだろ!」
「あぁ、好きだが」
「じゃぁ、俺にちょっかい出すのはやめろって」
 ボタンをすべてはずし終わったコートを奪われる前に、前を手繰り寄せる。女みたいで、その動作が嫌だったが仕方あるまい。
 女役させられるよりは幾分かマシのはずだ。
 ため息をついていったら、コートはそのままに、その下のタートルネックの裾を上げられて肌に触られた。
「…ッ、」
 手袋越しだからか、異様に冷たくて眉を寄せる。
「お前は別だ、クリス。肌はきめ細かいし、顔も女顔。声も高くて腰は細くて髪も長い。穴がねぇのとないはずのもんが付いてる位じゃねェか」
「…それが、問題なんだろうがっ!」

 信じてくれ。こんな王子を望んだわけじゃない。

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