悠久の丘で
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38 少し狡猾な手段を使ってでも手に入れたいと想った人

「ははは、狡猾だって? やり方が汚い?」
 いつだったか、そうやって笑ったことがあった。
 おそらくは、アバランチの。かつての、最初の、星を愛しすぎた青年の前だったか。
『私はそう言ったと思いますが』
 何処か怒気をはらんだ声色だったと思う。
「ふざけるなよ、と」
『貴方にそっくりその言葉をお返しします』
「ずっと、ずっと、欲しかった」
『私だって』
 自分と似ていたのかもしれない。根本的なところは少し。
「お前にゃもったいなさ過ぎるほどあいつは良い男だぞ、と」
『承知の上ですが。それに、私には貴方にだってもったいないように見える』
「そりゃそうだ」

 あいつの手は斑な赤で。
 俺の手は真っ赤で。

「あんたに言われなくたって分かってるぞ、と」
 唇をギリ、と音がして血が滴るくらいまで噛み締めた。

 あいつは真っ白で。
 俺は汚れて。

『私にあの子をください』
「…あんたがそんな執着見せるなんて珍しいな」
『私にはあの子が必要です。いや…、あの子のために』
 メガネの奥に強い光が瞬く。本気だと、すぐに分かった。
 それでも正直に拒絶できなかったのは、怖かったからだ。
「残念だな、と。コイツを縛る奴は俺じゃない」


 4年も前から気になっていて。
 女遊びが絶えなかった俺に、真っ直ぐに家へと帰ることを教えた。
 任務に赴いて生存が確認できない、と。不明だと、上司に聞いたときに、俺は不謹慎ながら喜んだ。
 そばで笑ってられる奴を羨ましく思い。
 そして同時に恨めしく思った。


 今はあの時とは違う。
 彼は俺のものになったし、青年は死んで、青年は星に還った。
 彼の心の傷に付け入って手に入れたのが、血にまみれた今の位置だ。
  彼を守った男の血と。
  彼を切望した男の血と。
  彼を騙してでも手に入れたかった俺の血。

「少しなんてもんじゃねぇよ、と」
 この位置は真っ赤になって、どす黒くなって。
 それで、もう二度と洗い落とせないくらいに汚れにまみれた男が手にした位置だ。

 それが、綺麗で真っ白な場所の、汚れた特等席。

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