悠久の丘で
 top about main link  index

Menu>>>name / トリコ /APH /other /stale /Odai:L/Odai:S /project /
  MainTop

30 結末がハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、そこだけでも知りたい

「臆病者なんだな」
 開口一番にいってやれば、黒髪の、背がそれなりに高い男は閉口した。
 そして、手に持っていた本の現在のページを目で確認し閉じて、ため息をついた。
「…なんですか、貴方らしくもない。盗み見、とは悲しい限りですね」
「そんなものではないさ。ただの純粋で、愛しい好奇心だ」
 相手の言葉を絡めとるように、そう返したら、今度は苦い顔になった。
「貴方のその好奇心が、いつか身を破滅に追い込みます」
「何だ、呪いでもかけてみるか? 誓って言おう。
 私は、好奇心で身を危険な目にあわせたことは今の今まで、一度もない」
 はっきりと相手に言い聞かせるような響きを含んで言えば、相手は付き合ってられない、とでも言いたげに目を伏せた。
「その本は、いったいどうしたんだ? 私の知っている限りお前はそんな本に手を伸ばすほど、一人身を嘆いているわけじゃなかっただろうに」
 そのタイトルには見覚えがあった。
 確か、今をときめく若手の作家が書いたという、その本。
 内容は確か…
「裏切りと血と愛にまみれた悲劇、だったか」
「…どうして貴方がそんなものを知っているんです」
「私だって、この世界の時事に耳を傾けることくらいあるさ。もっともそのほとんどが我社の事ばかり伝えているため面白くもなんともないと思うが」
 肩をすくめて、だが本には興味を示して言うと、あきれたようにこちらを見てきた。黒の双眸にさらされる。
「意外、か」
「…いえ、そんなことは」
「言葉より表情のほうが素直だな、お前は。目を見開いてまで、そんな嘘を口に出すほど馬鹿ではあるまい?」
「…馬鹿かもしれませんが」
「なら、私の見る目がなかったということだな。過大評価のしすぎか」
 なんでもない風に言ってやると、ツォンは肩をすくめた。

「ルーファウス様」

「なんだ?」
「私は貴方の敵にだけはなりたくありません」
「なら、ならなければ良い。
 それとも何か? 一番後ろの解説のところから読んでいるお前のことだ。確かなものがほしいと?」
 今度の答えは遅かった。
「確かなものなど、胡散臭いと言ったのはお前だろう」
「そんなこと、言いましたか?」
「言ったさ。ハッピーエンドかバッドエンドか、先に知っておいたほうがそれからの立場も変わるというものだ、と。そうとも言っただろう。
 この、臆病者め。言ってる事がちぐはぐすぎるぞ」
「私は小心者ですので」
「…ふん、顔色も変えずに船を沈められる奴が何を言う」
「あれは、驚きすぎて眉も動かせなかっただけですよ」
 ツォンが苦し紛れに顔を背けた。時計を見て、小さく舌打ちをして立ち上がる。
 それにつられたように立って、ツォンは聞いた。
「…ルーファウス様? どこへ行かれるのですか?」
「会食だ。…面倒くさいが出ないわけにはいかない」
「あぁ…、あれは今日でしたか」
「ココのところ仕事が忙しすぎて頭がおかしくなったか? レノとルードを連れて行く」
「承知いたしました」

「それと」
「…?」

 立ち上がって白いジャケットを上に羽織り、鏡で確認していたところで一言、言ってやった。

「その本は悪趣味だ。何より解説に書いてある内容と結末が逆転しているところが意地が悪い」
 にやりと笑った。
「イリーナに言っておけ、もう少し趣味のいいものを貸せ、と」
「…承知いたしました」

<<< 






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -