悠久の丘で
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共に育ったあの人

 もし食べたい食材があったら、強く願う。
 それから行動。

 それが彼の特殊能力。


  *


「ちょっとココさん」
 ふてくされた子どもの様な声色。
 白いシーツに投げ出された脚。
 薄い桜色の、形の良い爪の揃う足がシーツに波を作る様を目を細めて見る。シーツに負けないくらい白く透き通るような肌を縁取る銀糸が、日の光を受けてキラキラ反射するのが目に眩しい。
 ふてくされた子どもみたいにぷくりと膨らんだ頬を隠そうともせず真っ直ぐに見やる青を受け止めてやれば、寝返りを打って身体ごと此方を向いた。
「なんだい、クリス」
 声色の割にもぞもぞとリラックスしたような様子で目を擦る彼を見て、つい口角が上がった口元を隠す。
 昨夜の運動のせいだろうか、心なしか掠れて聞こえるクリスの声に近寄りベッドの端に腰掛け、手触りの良い髪を梳く。手の中からさらさら零れてしまう髪を強く握り締めたい衝動に駆られながらそれに唇を寄せると笑われた。
「身体が重い。ココ、サイテー」
「クリスが久しぶりに来るから」
 零れてしまう銀糸に唇を寄せるのはひとまず諦めて、次は澄んだ青色の瞳に唇を寄せる。
「毎日此処に居てくれたらまだ楽になると思うよ」
 にこっと笑うと軽くチョップされた。
「……酷いな、本当の事なのに」
 痛みなどさして感じる訳ではないけれどチョップされた辺りを撫でさする。
 クリスに触りたいのは最早本能で、触れられる範囲に居たら触って舐めて身体の隅々まで確認してしまいたくなる。そうせずには居られなくなるくらい、言わば飢えを感じる。
「俺を喰うなっつの。お前らみんなしてでっかくなりやがって…、俺の負担をちったぁ考えろってんだ」
 そう言いながらもボクが撫でる額に手を伸ばし一緒に撫でてくれるクリス。

 箱庭時代1番年長だったクリスは、我ら四天王の誰よりも小さく細く、そして強く成長した。
 ―――あの、ゼブラよりも。

 薄い毛布から真っ白なすらりとした腕を伸ばす。
 薄手の毛布だけを掛けごろごろするクリスを見るのは楽しい。時折、動くせいで均等の取れた細く美しい脚が根元付近までちらりと見えて、笑顔の裏でテンションが急激に上がる。
「…ココ、やーらしい顔になってるぞ?」
 半ば呆れ顔でそれを指摘されても表情は愚か視線もずらせない。
「クリスのせいかな」
 にこりと笑って。
「お前が見てるからだろうが」
 額にデコピンされた。

「触ってもいい?」
 今度は無言で脚が出る。

 その脚を捕獲し、怒られない位置(クリスの許容範囲は膝までだ)からきゅっと締まった足首までを繰り返し撫でる。
 生物学上、同じ男である筈なのに、ボクとクリスでは造りが違う。
 ボクの脚はこんなに細くないし、クリスみたいにつるつるしてない。
「……だぁ! 撫でんの止めろよ、楽しくないだろー」
 気持ちいいし、昨日沢山付けたボクのって徴が綺麗だ、なんて。反応が分かりきっているから何も言わない。正確には言えない、だけど。
 名残惜しかったけど脚を離したら、クリスにいいこいいこと撫でて貰えた。


「ココ、風呂貸して」
 一頻りクリスがごろごろし終わって。漸くボクの腕の中にすっぽり入った体勢でまたごろごろし終わった頃、クリスはがしがしと頭を掻いてうんと伸びをしながら言った。
 被っていた毛布が落ちてクリスの肌が露わになる。
 触らずともわかる、白くすべすべな肌。
 そこに点々と色付く紅に目が行って、その1つに吸い寄せられるように口付ける。
「…ココ、風呂」
 首筋に咲いた華を再度鮮やかにするボクの頭をわしゃわしゃ撫でるクリスの手が気持ちいい。
 もう少し味わいたかったけれど、髪を引っ張る強さが段々強まってきて顔を上げた。
「良いよ。歩けるかい?」
「おかげさまで」
 皮肉に唇を歪ませるクリスも可愛らしい。実際にベッドから立ち上がれてしまう所はちっとも可愛くないが。
 僕だって好きな子くらい、横抱きに(所謂姫抱っこと言う奴だ)してあげたいと思うのに、恐るべきグルメ細胞のせいか、今まで1度だって出来たことはない。
「あ、クリス」
 綺麗な背中へ向けて声を掛けると、ん?と振り返られる。
「あの、クリスがお風呂に入ってる間の事なんだけど」
 ちらりと時計を見て、少し言い訳がましくなってしまう口調を自覚。
「少し街に出て来ても良いかな? そんなに長くはならないし、その、占いの…」
 クリスはそんな僕を見てくすくす笑った。
「仕事じゃないんだろ? 良いぜ、ゆーっくり入ってるから、ココが帰ってきたら飯にしようぜ」
 艶っぽく笑む、その表情を深く記憶。ぷらぷら振られる手がきちんとシャワールームへ消えた事を確認してから、ボクは一息吐いた。

 本当は嫌だった。
 アイツはクリスの事が大好きだったし、十中八九この街に来るのはボクに用事があるから。
 折角クリスを独り占め出来ていたのに、と溜息を吐いてからボクも支度を始めた。


  *


「フルコースは完成したかい、ココ? 四天王一の優男よ…!」
「お前は? トリコ。四天王一の食いしん坊ちゃん」


  *


 ドアを開けたら懐かしくも愛おしい匂いがした。少しココの匂いが混ざって、でもアイツ特有の少し甘い匂い。
 でもそんな偶然って、なんて沸き立つ自分の心を必死に押し殺す。期待して、裏切られるのは辛い。何度もアイツの匂いだけなら嗅いだ。
 ココからも、サニーからも。
 だから今回もそう言うのだろう、と。
「……あー? あ、食いしん坊ちゃんがいる。何、用事ってこれか、ココ。迎えに行くならそう言ってくれりゃ良かったのに」
 ココからも微かにする石鹸の匂い。
 濡れた銀糸は重力に逆らわずほかほかと湯気を立たせながら、白い肌に水玉を作る。
「…………クリス、お客さんだ。服を着なさい」
 タオルに隠されてはいるものの、今まさに風呂から上がった、と言うような格好で。ちらりと俺の後ろに居た小松を見つけると青の目が丸くなった。
「―――…ん? あ、やべ。服着てくる」
 へらりと笑って、部屋を移動した後ろ姿。
 ココに向き直る。
「―――クリスだ」
「あぁ、クリスだ。先日来た」
「俺だぜ? 久しぶりだな、トリコ」
 早々と取り敢えず下だけ穿いて戻ってきたクリスがにっと笑う。そして腕を広げた。
「よ、食いしん坊ちゃん」
 広げられた腕を、身体を、抱き上げて抱き締める。肌が触れ意識せずともクリスの甘い匂いがした。
「あの……、トリコさん?」
「ん?」
 小松の、おずおずと下から聞こえた困惑したような声で正気に返る。そして、抱き上げたまま小松に見せた。

「コイツはクリス。俺やココ…現在美食四天王と言われる奴らと一緒に育った、美食屋だ」

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